どうやら記憶を失う前の私は最強魔導師だったそうです。
華金
第1話 この世は勉学<魔法
「ルナ嬢、こちらを見てくれないか?」
1本の指が、私の輪郭を焦らすようになぞる。
「あ、あの、殿下っ、、、」
焦って顔を覗き込むと、殿下は愛おしそうに目を細める。その藍色の瞳は、恍惚としていて、怪しげな雰囲気を纏っている。
「昔のルナ嬢の様に、真っ直ぐな表情も好きだけれど、今の小動物のように潤んだ瞳の君も可愛らしい。」
殿下が指をするりと私の髪に絡ませる。
鼓膜を揺らすように甘い吐息を含んだ声と仕草に、つい顔が赤くなる。
何を赤くなっているんだ私。
「あの、、、」
私の言葉に、殿下はニコリと微笑む。
「、、、みッ」
「み?」
「身に覚えがありません!!!!!!!」
______________________
---遡ること2日前
私は、456/500と大きく書かれた紙を睨みつける。
「ねえシャルナ、定期試験の結果、どうだった?」
クラスメイトのニカがニコニコとしつこい程に何度も尋ねてくる。
後ろから数えた方が圧倒的に早い順位を堂々と見せるほどの余裕を、私は兼ね備えていない。
「うーんと、可もなく不可もなく?どちらかといえば圧倒的に不可より…。」
渋々わざと曖昧な言い方をして、質問しても無駄だという雰囲気をそれとなく出してみる。
「ふーん、、、あ、見てみてこれ!」
私の結果を聞く気が失せたのか、12/500と書かれた紙をニカは自慢げに掲げる。
「すごい!普通科生で12位なんて、、、さすがニカだね!」
「うん、特待科のお貴族様ばかりに上位独占されるなんて癪だからね。」
そう言ってニカはフフんと鼻を鳴らす。
***
この「ポースネオラント魔法学院」には、「普通科」、「特待科」、「音楽科」、「魔法科」の4つの科が存在している。
中高大一貫校で、1学年の人数は比較的多く、ポースネオラント王国民以外にも、隣国から通ってくる生徒も数多くいる。
学年は、「普通科」は3クラス、「特待科」は3クラス、「音楽科」は2クラス、「魔法科」は1クラスで構成されている。
主に「普通科」には、魔法や勉学に秀でた平民が入ることが可能で、比較的優秀な生徒の多い学科。
「特待科」には、ポースネオラント王国や隣国の貴族の家柄の生徒が集まる学科で、「特待科」という大層な名前を付けられているが、家柄が良く、金さえ積めれば入ることのできる学科。
「音楽科」には、音楽が突発的に優れている生徒が集まる。先祖代々音楽家の生徒が基本的に入っている。
「魔法科」には、誰しも生まれ持っている魔法の中でも、魔法の波動が特に強い生徒が集まる。魔法科を卒業すると、その流れで王宮お抱え魔導師になることも可能故、人気の高い学科。
***
「--えーっとじゃあ今回も結局魔力は全然検出されなかった訳ね、、、。」
ニカは私から無理やり奪った定期魔法試験の結果表をペラペラと揺らす。
「うん、全然ダメ。この学院に入学できたのも奇跡みたいなものだよ。」
私には魔力がほとんど備わっていない。全く無いわけではないけれど、極小の火の粉を散らすぐらいにしか魔力がない。そんなのは、平民の子供でも出来るレベルだ。ポースネオラント「魔法」学院なのに、私は筆記試験満点、魔法試験ほぼ0点で入学した。
「試しにその眼帯を取って測らせてもらったら?」
ニカの言葉で、無意識に右目の眼帯に手を添える。
「あー、前取って測ってみたんだけど、変化なし。」
「じゃあ普通に目が悪いだけなんだ。今右目の視力はどれぐらい悪いの?」
「ほとんど何も見えないんだよねー、それが。」
「なーんだ。実は隠された右目には何かとんでもなく強力な魔力が宿っていて、、、なんていう展開、期待してたのにな。片目だけ視力が不自然な程に悪い、なんておかしいじゃない?」
「もう、、、勝手に期待しないでよ?」
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「あ!やば!ベル鳴ってるじゃん!私倶楽部あるからもう行くね!じゃあ!」
ニカは教科書が詰め込まれた指定カバンを持って、慌ただしく教室を出ていく。
「うん、じゃあまた。」
*
バタバタと走り去るニカの背中を横目に、私は右目につけた眼帯をゆっくりと外してみる。
試しに窓に目を向けて見るけれど、ぼんやりとしていて輪郭を留めない窓から見えるのは、真紅に染まった夕暮れだけだった。
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