第11話──記憶の織り手、灰色の約束
火曜会の秘密の部屋で、静かに時が流れる中、タカシはノートの中に潜む真実と向き合っていた。
文字の隙間からこぼれる言葉のかけらが、彼の心を揺さぶる。
「嘘と真実は紙一重…でも、僕には何が本当なのかわからない。」
彼のつぶやきは、暗闇に溶けて消えていった。
そこへ、もう一人の参加者、若い女性ユリが静かに部屋に入ってきた。
彼女の瞳には、悲しみと覚悟が混じっていた。
「タカシ…あなたはまだ知らないけど、ここに来た人はみんな、過去の罪を抱えている。
私もそのひとり。」
ユリは震える声で過去の出来事を語り始めた。
彼女の語る、家族を裏切った日々。
嘘が重なり合い、誰かの命を奪った過ち。
その話に、タカシは自分の内にある罪悪感を重ねた。
「僕たちは、どうしてこんなにも傷つきながら、嘘をつき続けるんだろう。」
イサクラは二人の会話を聞きながら、自分の中に再び痛みがよみがえるのを感じた。
息子のこと、そして自分が犯した罪。
だが、同時に彼は確信していた。
この場所で見つけるべきは、赦しと再生の光だと。
ミドリが部屋に戻り、深い息をついた。
「これが火曜会の真実。
それはただの暗号以上のもの。
それぞれが抱える痛みの象徴であり、私たちが未来へ繋げる約束。」
その言葉に、部屋の空気が少しだけ温かくなった。
窓の外で、曇天の下、廃墟の街が静かに息づいている。
だがその静寂を切り裂くように、遠くから再びあの不気味な笑い声が響いた。
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