第3話 初任務、森の牙獣を討て!

ギルドから最初に紹介された依頼は、街の外れに広がる【ガルダの森】での魔物討伐だった。


討伐対象は【牙獣(がじゅう)】。

見た目は大きなイノシシのような魔物で、牙が鋼鉄のように硬く、突進力が非常に高い。最近、この牙獣が複数目撃され、街道の安全が脅かされているらしい。


「牙獣か……よし、ちょうどいい試運転だな」


依頼内容を確認し、軽装備を整えた俺は、朝早くにギルドを出発した。



ガルダの森――緑深き静寂


街から小一時間歩いた先に広がるのが、【ガルダの森】だった。

木々が生い茂り、昼間でも光が届きにくいほどに鬱蒼としている。


(モンスターが出るって聞いてたけど……静かだな)


しかし、俺の”全スキル習得”による感覚は、すでに周囲の気配を捉えていた。


――右後方、低い足音。地面をかすかに蹴る振動。

――牙獣、一体。こちらを警戒して距離を詰めている。


(……よし、演技するか)


俺はわざと周囲をキョロキョロと見渡しながら、木陰へと足を運んだ。


すると次の瞬間――


「ブオオオオォォッ!!」


獣の咆哮とともに、木々をなぎ倒しながら突進してくる影があった。


(さあ、牙獣。お前が俺の初仕事だ)



実力を“隠して”戦う――予定だった


牙獣は体長2メートルほど。灰色の毛並みに、鋭い牙。突進速度は時速50キロを超えるという。


普通のCランク冒険者なら、回避に専念して隙を狙う必要がある。


だが俺は、違う。


(スキル起動:身体強化・初級+中級/魔力流動制御)


軽く地面を蹴ると、体がふわりと浮くように跳んだ。


「はっ!」


牙獣の突進を軽々と避け、真横から肘を一閃。


「……えい」


ドゴッ!!


まるで巨大な鐘を叩くような衝撃音とともに、牙獣が横へ吹き飛び、木をなぎ倒して転がる。

しばらくバタついていたが、数秒後にはピクリとも動かなくなった。


「……あ。ちょっと手加減しすぎたか?」


牙獣は、気絶していた。完全に戦闘不能だ。


(倒してないけど……まあいいか。依頼には“排除”としか書いてないし)



初任務の帰還、そして噂


その後も森を巡り、牙獣を三体撃破。すべて気絶または軽症で無力化した。


魔物の痕跡を示す素材を集めて、夕方にはギルドへ帰還。


「……すごいです! 本当にお一人で!? それも一日で三体も……!」


受付のリーナさんが目を見開いた。


「うん、まあ。けっこう運が良かった」


「運だけで討伐できるような相手じゃないですよ!? まったく……とにかく、お疲れ様でした。報酬はこちらです。あと、噂が……広まり始めてます」


「噂?」


「“一人で牙獣を三体仕留めた新人”って。明日あたり、パーティーへの勧誘が殺到するかもしれませんね」


「……めんどくさいなあ」


異世界生活、第一歩にして、すでに静かにしているのが難しくなり始めていた。

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