第28話 第三プログラム 指令かくれんぼ
守田と話した次の日、Projectアプリからの通知で第三プログラムの説明が行われることとなった。今までと同じように第二試験場に集められた俺たち二年生は守田から第三プログラムの説明を受けることとなった。
昨日の話は誰にもしていない。守田は各学年1人ずつ話すと言っていた。噂になっていない様子を見るとおそらく違う学年のあの話を聞いた者も誰にも言っていないのだろう。まぁ普通言わないよな。
庄林が俺に話しかけてくる。
「荒木田の姿が見えないな」
俺は周りを見渡してみる。どうやら本当のようだ。
すると、庄林は勘づいたように続けて言った。
「荒木田のやつ、まさかまた誰かを」
どうやら庄林は矢沢のような被害者がまた出たのではないかと危惧しているようだ。
「それはない」
俺は無意識に答えていた。はっと我に帰る。
すると、庄林がすかさず聞き返してくる。
「何でそう思うんだ?」
「あいつは目的のためなら手段は問わないけど、理由なく悪い事するやつじゃないと思うんだ」
矢沢を狙ったことだって、おそらく一年との協力を匂わせた上で峰松を倒すことで気づけたはずだったのにという峰松の悔しさを増幅させたかっただけだろうからな。まぁ結果的には峰松は気づいた上で俺に任せたみたいだったけどな。
定時となり守田が話を始めた。
「第三プログラムの説明を始める。今回の内容だが一言で言ってしまえば『かくれんぼ』だ」
守田がそう言うと、吹き出したように笑い出した生徒がいた。
「かくれんぼって何だよ。ガキじゃねぇんだし、ぶっはははは」
チーム8の生徒だった。みんなの視線が一気に集まる。
あいつは確か、、最初のプログラム説明の時に守田に殴りかかったやつだ。
あの時は守田に軽くいなされて、地面に叩きつけられていたような。
荒木田よりは体は小さいが、それでも筋肉質であり、坊主頭の生徒だった。
そして、そいつにつられてチーム8の連中が次々に笑い出した。
「うるさい!若林!」
次の瞬間、笑っている生徒を一人の女子生徒が拳で殴りつけた。しかもかなりの力で、、、痛そうだ。若林と呼ばれた生徒は地面に突っ伏していた。
「いてぇーよ!橋森!」
若林が威勢よく起き上がると、殴った女子生徒の方を見た。橋森と呼ばれた生徒は金髪ロングの髪で見た目は美人系だが、目つきが悪く、気が強そうな女子生徒だった。
「あ?やんのか?ゴラ」
橋森がまた拳を見せて、その拳にハァーと息を吹きかける。どうやら喧嘩の準備は満タンらしい。
それを見て若林は黙り込んだ。
そして、黙り込んだ若林を見て、他のチーム8のメンバーはさらに笑う。
若林を煽り散らかしていた。
しかし、橋森が先ほど息を吹きかけた強靭な拳をチーム8のメンバーに向けると、全員が黙り込んだ。
どうやら橋森という生徒のチーム8での権力は相当大きいらしい。
はぁーと橋森がため息をつく。
「荒木田がいないとすぐこうなる。すまなかった。説明を続けてくれ」
橋森が守田に謝ると、守田は「次から気をつけろ」と言って説明を続ける。
プログラムの説明になると、チーム8はいちいち騒ぎ立てるよな。
お約束なのか?
「先攻と後攻に分かれ、敵を見つけるタイムを競う。隠れる者は10人、見つける者はチーム全員だ。姿を写真に収め、アプリの専用欄に送ることで発見とする。範囲は施設1階から5階とし、他のチームは6階の教室で待機だ。」
施設5階分相当広いな。かなり時間がかかりそうだ。
「このプログラムは範囲の広さもあるため、2つチームで協力して共同チームとなり他の共同チーム戦うものとなっている。組み合わせはチーム5と6」
なるほど、共同チームか。
施設の広さを考えると妥当だな。
そう言われ、チーム6を見る。宮東と目が合うとニコッと笑顔を見せてきた。
「そして、チーム7と8」
峰松と荒木田か。何というか、そうだな、、とても相性が悪そうだ。
「試験開始は5日後で、今回のプログラムでも代表者を決めてもらう。詳しくはアプリで確認しておけ。そして、今回の対戦相手は他学年だ。準備を怠らないようにすることだな」
守田がそう言った瞬間、一瞬だが俺と目があったような気がした。
準備を怠らないように、か。おそらく俺に向けられたメッセージだよな。
例の如く、守田が退出すると通知が来た。
『第三プログラム 指令かくれんぼ
ルール
・各チーム5人ずつ隠れる者を選択する。(共同チームなので合計10人)
・見つける者は共同チーム全員
・時間は最大90分
・隠れる者の移動は自由
・どちらも全員見つけられなかった場合、時間内で見つけた人数の多い方が勝者となる
役職
・代表者
隠れる者達に敵の配置を見ながら指令を出すことができる
探している最中の指定の場所からの移動不可
得点
勝ちチーム 個人得点+30
負けチーム 個人得点−30
隠れ切った者 個人得点+10
脱落条件
個人得点が0点以下の場合もしくはチーム得点が500点以下の場合。』
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