第24話 一騎討ち

「すいません、被ってしまいました」


宮東が謝る。チーム6と7の質問内容が被ったのだ。まぁこういうこともあるだろう。しかし、宮東が俺たちの勝利のためにチーム8を攻めようとしてくれたことは嬉しかった。


「あら、被ってしまったではなくて、被らせたの間違えではないですか?」

峰松が宮東を悪い顔で睨む。


「おい、そんなわけないだろ」

俺は峰松を注意した。


そして、第三ターン


『チーム5 回答→チーム6 田所 宗喜

チーム6 チーム8の王様は五十音順で10番以内か→いいえ

チーム7 回答→チーム6 田所 宗喜

チーム8 回答→チーム7塩見 蒼子』


「今回は荒木田さんが一枚上手だったようですね」


は?峰松何を言って、、、

すると、通知が来た。

『チーム6、チーム7同時に敗北。残り人数を考慮するルールに則り四位チーム7、三位チーム6。この2チームに脱落者なし』


「どういうことだよ、、」


俺は理解できなかった。チーム6が負けるのは分かる。どうして、チーム7が負けたんだ⁉︎


「数打ってみれば当たるもんなんだな、滑稽だな峰松」


口を開いたのは今までこの場で一言も発していなかった荒木田だった。


「数打ったなんて嘘つかなくていいですよ荒木田さん、実に見事です」


「素直に参ったって言えよ。悔しいんだろ?」


「うふふ、嫌です。では大黒さん頑張ってください」


「ちょっと待てよ。何が起こったんだよ!」


俺は峰松に向けて叫んだ。


「あなたなら気づけますよ」


そう言って峰松は試験場を後にした。それに続くように宮東も俺に頑張れと言って出ていった。


「大黒って言ったか?お前いちいちうるせぇんだよ、黙ってろ」


峰松どういうことだよ⁉︎

俺なら気づける?

マジでどういうことだ?俺は頭をフル回転させる。

絶対勝ちたい。絶対勝ちたい。絶対勝ちたい。

俺は第二プログラムまでにあったことを思い出す。


俺なら気づける、、、あぁそういうことか。


「あぁ、悪い荒木田。続きをしようか」


「あ?」(なんだこいつ、急に雰囲気変わりやがった)


第四ターン


俺は質問を入力しながら荒木田に話しかける。


「荒木田、お前は今回チーム7を狙った理由は峰松が第二プログラムの説明で俺を庇ったからだよな?その証拠に藤堂も退出させてる」


「それがどうした?」


「俺は分からなかったんだ」


「何がだよ」


「峰松が俺を庇って、協力関係を急いだ理由が」


「は⁉︎お前さっきから何の話してんだ?」


「最初は俺に恩を着せて、協力関係を確実にしようとしたんだと思ってた。でも、違ったんだ。あれは俺に、、荒木田、お前を倒せっていうメッセージだったんだよ」


『チーム5 チーム8の王様は五十音順で15番以内か→はい

チーム8 チーム5の王様は五十音順で10番以内か→はい』


このターンで俺はチーム8の王様候補を5人に絞り込んだ。しかし、荒木田もチーム5の王様候補を10人絞り込んでくる。


「さぁ荒木田一騎討ちだ」


第五ターン


「俺を倒せってメッセージ?お前頭おかしいのか?」


「それが分からないからお前は負ける。まぁ教える気はねぇから安心しろ」


「俺はそのメッセージってやつのことなんてどうでもいいんだよ!お前だって俺の戦術分からないんだろ?そう言ってたよな?おい」


「もう分かったんだよ、、荒木田、お前の作戦は」


「は?」


「お前が使ったのは、、、他学年だ。このプログラムは学年別で行われている。例えば俺がチーム1についての質問をここでしても、その答えは返ってくるはずだ。それに気づいたお前は他学年、おそらく一年を使ってチーム7の王様の情報を掴んだんだよな。確かに一年の四チーム全てを脅せば2ターンで情報を得ることは可能だ。そして端末から連絡を受け、結果を知ったお前はチーム7の王様を脱落させたんだ」


その通りだった。荒木田は一年を使って最初の1ターンでチーム7の王様を10人に絞り込み、第二ターンでその10人に含まれていた藤堂をチーム8が回答し、一年は10人中4人を各チーム1人ずつ質問で聞いた。そこに王様がいなければ、もう1ターンかかっただろうが、一年の質問の4人の中に王様がいたようであったため、荒木田は第三ターンでチーム7の王様を当てることに成功したのだった。



俺の説明がお気に召したのか荒木田は上機嫌だ。


「当たってるぜ、おい、大黒!俺をもっと楽しませてくれよ!」


「残念だが、終わりだ」


『チーム5 チーム8の王様は五十音順で14番目の生徒か→はい

チーム8 チーム5の王様は五十音順で5番以内か→はい』


「え?」


声を出したのは荒木田。普通に考えれば5分の1を当ててきたということになるが、このときの大黒は違った。5択となった時の極限の集中力。相手の言動一挙手一投足に目を見張り、そして、見抜いた。

そして、勝利を確信して言った。


「俺の勝ちだ」


「まだだ!俺は一年を従えてるんだぞ!第五ターンでチーム5の王様は5人に絞った。俺と一年合わせて5チームで回答すれば、同着だ!」


そう言って、荒木田は見せびらかすように端末を取り出した。

しかし、みるみる荒木田の顔は青ざめていった。


(石黒)『荒木田先輩、俺たちの手助けはチーム7を落とすまでと聞きました。チーム5の情報までとなると、契約違反です』


「石黒!裏切るのか!ふざけやがって!」


その後第六ターンの回答でチーム5はチーム8の王様を当て、ゲームは終了した。

うなだれる荒木田を横目に俺は試験場を出た。


俺は上がる口角を抑えることができなかった、、、


『第二プログラム終了

一位チーム5 全員に+50点 回答得点全員に+20点 チーム得点3660点

二位チーム8 全員に+30点 回答得点全員に+10点 退出生徒1名に−10点 

チーム得点3990点

三位チーム6 点数変動なし 退出生徒1名に−10点 チーム得点2790点

四位チーム7 全員に−10点 回答得点全員に+10点 退出生徒2名に−10点 

チーム得点2380点』

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