第17話 第二プログラム 王様探し

藤堂のおかげ?で騒ぎは収まりつつあった。


相変わらず峰松は笑い続けているし、荒木田は気分を悪くしたのか舌打ちをすると、チーム8の輪の中に帰っていった。


それを見て、この場で忘れられた存在になりつつあった守田が大きな咳払いをして注目を集める。


「第二プログラムの説明を行う。第一プログラムは全生徒で行われたが、今回のプログラムは学年別で行うものとなっている。今回のプログラムの名称は『王様探し』だ。各チームで王様と呼ばれる役職を1人決めて、それを当て合う内容だ。他の情報などは端末で確認しておくように。なお、開始は役職決めを考慮し、5日後の午後1時とする。場所は教室。そして、この後選ぶであろう代表者だけはここ第二試験場に集まるように」


そう言うと守田たちは引き上げて行った。それを聞くとすぐにチーム8は全員が帰った。俺はなんだか不気味に感じた。


残ったチーム5から7は俺含め、ほぼ全員が端末に集中する。


『第二プログラム 王様探し

ルール

・事前に役職を決め、Projectアプリに登録すること。

・登録した役職は変更不可。

・ターン制で行い、各ターンに一度、各チーム質問か回答を行える。

・質問の内容は「はい」か「いいえ」で答えられるものとすること。

・質問の内容は『ターン終了後』に全チーム共有する。

・回答で指名された生徒は教室から退出する。

・王様を当てられたチームはそこで今回のプログラムは終了。(同時の場合は残り人数の多い方を順位に優先する)

・全チームの王様が当てられたターンで今回のプログラムは終了する。

役職

・王様(当てられたらチームが敗北)

・代表者(質問を行うことができる)

・回答者(回答を行うことができる)

※代表者は回答の対象外

※役職の重複は不可。各役職は各チーム1人。

得点

・一位 個人得点+50

・二位 個人得点+30

・三位 個人得点変動なし

・四位 個人得点−10

・回答で王様当てたチームは全員に個人得点+10点

・他チームに回答され退出した生徒は個人得点−10点

場所

・教室。代表者のみ試験場

脱落条件

・ゲーム終了時の個人得点0点以下の者もしくはチーム得点が500点以下の場合』




俺がこのプログラム内容を見て1番にヤバいと感じたことは得点の変動だ。

俺たちのチームは第一プログラム終了時点で10点が8人いる。脱落しないためには絶対に最下位になってはいけない。

そして、回答で退出する生徒も点数を引かれることから、20点の15人も油断できない内容だ。俺たちチーム5は青ざめていた。

正真正銘負けられない、負けたら終わりのプログラムだ。


意気消沈している俺たちに峰松が話しかけてきた。


「大丈夫ですよ、私たちは協力関係ですから」


先ほど荒木田から俺を庇った時もそうだが、ここぞとばかりに協力関係をアピールしてきた。すかさず言い返す。


「待てよ、協力するのは今回だけと言ったはずだぞ」


「そんなこと言ってましたっけ?もし、そうだとしたら今回の協力はなしということで、、、」


すると、そこで俺たちのチームの内川 豪(うちかわ ごう)が話に割り込んできた。


「ちょっと待ってくれ、大黒と峰松がさっきから言ってる協力関係って何だ?」


「あら、まだ聞いてませんでした?チーム5とチーム7は今後協力して、プログラムを生き残ろうと約束したんです」


学年1位の頭脳を持つ峰松有するチーム7との共闘。チーム5の面々は希望が見えてきたかもしれないと、安堵の声を挙げていた。

しかし、内川だけは奇妙に思った様子で俺に聞いてくる。


「おい、大黒。俺たち聞いてないぞ。その協力関係はお前の独断したのか?もし、峰松が違うことを言ってるならお前の口から言ってくれ」


「あらあら、内川さん。私嘘なんてついてませんよ」


「俺は大黒の口から聞きたいと言ってるんだ。峰松、お前に聞いてるんじゃない」


その瞬間、峰松の表情が暗く変わった。微々たる変化で内川含め他の生徒は分からなかっただろう。チーム7の人間も気づいていない様子だった。一度峰松と面と向かって駆け引きをしている俺だからこそ分かった変化かもしれない。そして、その峰松の凍るような視線は俺に注がれていた。


「そう、、だ。悪いと思ってる。だけど、生き残るために必要だと思ったんだ」


俺は峰松の圧に負けた。絞り出すような情けない声で言った。

庄林も早瀬川も何も言えない様子だった。今回のプログラム、俺たちは生きるか死ぬか文字通りの瀬戸際だ。チーム7の協力は今回だけだと言えば峰松にチーム5潰されることは明らかだった。

俺が結んだ『試しの協力関係』の話はこの瞬間なくなったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る