無法地帯の脳力戦
シマナカ
第一章
第1話 大規模誘拐事件発生
それは突然起こった。気づいたら知らない場所にいた。
俺は、俺たちは必ず「生きて帰る」
たとえそれが望まれないことだとしても
国立選央高等学校。それは国内随一の名門校だ。幅広い分野での国内一位を謳っている。そのため、そこに所属する生徒の中には将来有望な才能を持つ者や有名芸能人、一流企業の御曹司も多数在籍している。そんな生徒がいる一方、至って平凡な生徒も在籍している。それが俺、大黒 賢弥だ。さっき平凡と言ったが、一応は国内最難関高校であるここ選央高校を必死に努力して合格している。
この高校は1クラス40人の1学年4クラス制で3学年総勢480人いる。俺はその中の2年1組に在籍している。
今日もいつもと変わらず登校し、教室に入る。どうやら俺が最後だったようだ。あと少しで朝礼のチャイムが鳴るからなのか他のクラスメイト達は席について談笑や勉強をしている。俺も席に着き、隣の席の庄林 進(しょうばやし すすむ)に話しかける。
「おはよう庄林、今日も朝から勉強か?」
「なんだ大黒か、お前は今日も寝癖が冴えてるな」
「マジかよ⁉︎」
俺は必死に手で髪を直す。この高校では席替えも無ければ、クラス変えも無い。要するに俺にとってこの真面目そうな眼鏡をかけた、堅物の化身である庄林は見飽きた、いや違う違う、見慣れた顔だ。
チャイムが鳴る。
先生を待つ。
来ない。クラスメイト達は談笑を続ける。
5分待つ。来ない。クラスメイト達は不思議そうな顔をするが、談笑を続ける。
10分待つ。来ない。クラスメイトの一人が先生を職員室に呼びに行った方がいいのではと発言するが、周りが反対する。その後も呼びに行く行かないで話し合いになった。俺も庄林に話しかける。
「おい庄林、この状況どう考える?」
「普通の高校なら10分遅れることはザラにある。しかし、この学校で教師が授業に遅れたことは見たことがない。不自然だ。大黒はどう考えているんだ?」
「俺も同意見だ。この学校では異例かもな、、、」
15分が経った。朝礼の終了を知らせるチャイムが鳴る。担任教師は現われなかった。
ついに担任教師は現われなかった。
朝礼と授業の1時間目との間の休憩時間では様々な憶測が飛び交った。あるクラスメイトは熱でも出したのではないか、またあるクラスメイトは事故にでも巻き込まれたのではないかと根拠もないことを言っている。それほど、国内最高峰を謳うこの学校においては生徒はもちろん先生においても遅刻は珍しいのだ。
そんなクラスメイトの話を聞いていると珍しく額に汗を浮かべた庄林が話しかけてきた。
「おい大黒、落ち着いて聞け、他のクラスも同じ状況みたいだ」
「、、は? いや、ちょっと待てよ。それはさすがにおかしいだろ」
俺は慌てて廊下に出る。そこは先生を探す生徒で溢れかえっていた。そこで俺と庄林は分かれて情報を集めることにした。
俺はちょっと歩いたところにいた生徒を1人捕まえて話を聞いた。
「おいあんた、この状況どうなってんだよ」
「なんだ?お前も面白半分で飛び出してきたのか?なんかよー、職員室に先生1人もいないんだってよw」
その生徒は可笑しそうに衝撃の事実を告げた。
「う、、、そだろ」
教室に戻った。意気消沈と言う他なかった。教室には誰もいない。ボソリと呟いた。
「まだ誰も帰ってきてないのか」
「残念ですが私がいますよー」
気力のない声が誰もいない教室に響く。右下を見ると女の子がいた。
「南浜がいたのか、悪かった」
南浜 成(みなみはま なる)クラスメイトの1人だが、今まであまり接点はない。
水色のショートカットの髪が特徴的だ。
「南浜は何をしているんだ?」
「誰もいなくなったので寝ようかと、そこにあなたが来たので台無しです」
ムッと怒ったような表情をする。前から薄々感じていたが掴みどころがない印象だ。
「こんな時に寝るっていう発想が恐ろしいな」
「いえいえ、それほどでも〜」
「褒めてないからな」
今、コイツと喋るのは得策じゃないな。
南浜と話し終わり自分の席に着くと、どっと疲れが湧いてくるのを感じた。その時だった。
ピンポーンパーンポーン
『えー、みなさん教室に戻ってください。教師不在の件について説明をします。』
良かった。説明があるなら早く聞きたい。その放送の後、クラスメイトが続々と教室に帰ってきた。全員が席に着きしばらくすると放送がまた始まった。
クラスから安堵の声が漏れる中、俺は不審に思った。
ーーー誰が放送してるんだ?ーーー
『えー、選央高校の生徒の皆さんおめでとうございます。あなた達は私たちのプログラ厶に参加する権利を得ました』
「えっ?」
その瞬間教室を覆うように鉄の壁が降りてきた。不審者対策用に作られている壁だ。そして、白い気体が天井から吹き出てくる。教室内は大混乱。みんなが教室から出ようとするがもう遅い。クラスメイトの中には泣いてる者もいた。鉄の壁を破壊しようと机や椅子を投げる者もいた。しかし、鉄の壁は壊れず、白い気体は教室に充満していく。しばらくすると、一人また一人と気絶していく。
「くそっ」
朦朧とする意識の中で発した最後の言葉だった。
どれぐらい時間が経っただろう?ん?誰だ?誰か目の前にいる。
「おーぐろ、生きてる?」
「ゔぅ」
「あー、良かった。生きてた。おーぐろけんやくーん、元気なら返事してくださーい」
そう言うとペチンペチンと俺の頬を叩く。痛い、イタイ、、、
「痛いって!誰だよ!」
「あ、起きた」
そう言って俺を起こした犯人は南浜だった。
「お前かよ」
「何ですかー?お礼ですかー?」
「違う、もうちょっと起こし方があるだろ」
「うるさいなー、あーあー聞こえなーい」
そう言って耳を閉じるポーズをした南浜は他の獲物でも見つけたのかどこかへ行ってしまった。
「ちっ、アイツ次やったら絶対許さねぇ」
周りを見渡してみる。クラスメイトを数えてみるとしっかり40人いた。クラスメイトの他にも同学年の生徒がいるようだ。庄林を探しつつ、歩いてみたが、どうやらこの空間には2年生が集められているらしい。それにしてもここはどこだ?俺のいた教室ではない。木目の床にコンクリートでできた壁に覆われた広い空間だ。広さで例えるなら窓のない体育館のような印象を受けた。
つまり、俺らは知らない場所に突然連れて来られたことになる。
「マジかよ、、」
どうやら俺達は誘拐されたみたいだ、、
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