【完結】死にたくない吸血鬼令嬢は、幸せな結末をあきらめない
夏灯みかん
【1】吸血鬼令嬢に転生しました。
第1話 目覚めたら、吸血鬼令嬢でした。
夏の暑い日に私は死んだ。死因は、たぶん熱中症。クーラーの壊れた部屋で、水も飲めずに倒れて、床を這って、そのまま意識が遠のいて――私は、死んだ、はずだったけれど。
灼けつくようなひどい喉の渇きに目を覚まし、反射的に暗闇に手を伸ばす。
……変だ。妙にベッドが大きい。ふかふかと弾む感触。一人暮らしの硬いマットレスでは、絶対にありえない。上に伸ばした自分の腕を見る。暗闇にくっきりと浮かぶ、白くて華奢な腕。染み一つない、陶器のような肌。
私は勢いよく起き上がって周りを見渡す。暗いはずなのに、周囲のものがはっきり認識できる。立派な飾りの
……夢? 私は―――誰?
私、私の名前は――カミラ=ルゼット。ここ「霧の王国」アラスティシアを陰から支配する、吸血鬼一族ルゼット家の娘。そこまで思い出しして、私ははっとした。
記憶が、ふたつ。現代日本で会社員として生きていた“私”と、ここで生きる“カミラ”が、頭の中でせめぎ合っていた。
これは、私が、さっきまで見ていた夢の中で、現代の日本というところで、20代の普通の人間の会社員だった私が、死ぬ前にプレイしていたゲームの世界だ。
ゲームのタイトルは――『
吸血鬼の支配する国の辺境貴族の娘ルシアが、王都で吸血鬼を含む様々な男性キャラクターと恋に落ちる乙女ゲーム。乙女ゲームだというのに、人が死んだり、結構ストーリーがドロドロしているのよね。
そして、私カミラは、その吸血鬼一族の令嬢で、ヒロイン・ルシアの命を狙う、悪役令嬢にして、ゲームのラスボス的存在。ルシアが吸血鬼の一員となるエンド――バッドエンド以外は、胸に杭を打たれて死ぬキャラクター。
……死ぬのなんて、絶対に嫌!
喉の渇きがひどくなった。何か飲みたいわ。血が―――飲みたい。
その本能の囁きに、私は自分が本当に吸血鬼になってしまったことを理解した。
「お嬢様!? お目覚めですか」
扉を開けて、銀髪に青い瞳、スラっとした細身の、優し気な印象の男性が部屋に入ってきた。彼はアーノルド、この屋敷——ルゼット家の、名目上は執事。かつて、私、カミラが助け、忠誠を誓った吸血鬼。
「喉が渇いたわ、アーノルド」
私が言うと、彼はベッドの脇に後ろ向きに
「お嬢様、どうぞ」
そう言って、サラリとした銀の長髪を分けて、女性のようにきれいな首筋を私に向けた。
その瞬間、私は意識より早く、本能でその首に牙を立てていた。赤く、生温かい血が口内に満ちる。喉の奥を満たす血の味に、私の身体が満足している。
アーノルドが小さく呻いた。痛みではない。快感の混ざった、甘い吐息。
アーノルドの白い首筋に2つ、小さな穴があいていて、そこから二筋の血が垂れている。けれど、すぐに傷跡が閉じて、再生した。彼も吸血鬼だから、再生が早い。その白い首筋が紅潮しているのが暗闇でも分かった。吸血行為をされた相手は身体が痺れるような快感を覚えるのだ。
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