ティカちゃんとジャンプ!

まずは洞窟までの移動手段を確保する。

ここクチャクティムイから洞窟があるであろうところまではかなり遠いらしい。

それに洞窟が特定されている、というわけでもないようだ。いくつかそういう噂になっている洞窟があるらしいけどその周辺一帯が忌み嫌われている土地だから近くにいる人たちも知らないようだ。そもそもその村も襲われて無くなっているのだけれど。


そして今残っている集落で洞窟に一番近い村はティカちゃんがいた村だ。

岩の悪魔は不定期で村や田畑を襲うらしい。ティカちゃんの村がいつ襲われるかわからない。

事態がどこまで悪化しているのかもわからない。


そこでまずは私、キエリスとティカちゃん3人でティカちゃんの村まで行き、転移のマークをする。ティカちゃんの村を拠点にして岩の悪魔がいる洞窟を探すことになったからだ。


アプさんも連れて行きたかったけど、転移の魔法で飛ぶ人数は少ない方が消費する魔力を抑えられるので三人で向かうことにした。


「また会ったね!ティカちゃん!」

「あ!副団長さん」

「元気だった?」

「はい!元気いっぱいです!」

キエリスとティカちゃん久々の再会。

ガルニエまでアプさんとティカちゃんを連れてきたとき以来だ。

「ふたりとも感動の再会ってわけでもないと思うけど、もう仲良いね。」

「ティカちゃんは妹みたいでかわいいな〜って思ってたんですよ〜」

確かに愛らしくて明るいティカちゃんはキエリスに少し似ているかもしれない。

人種や生まれた境遇が違えど相性の良い人とは接する時間など関係なく仲良くなるものだ。ふたりとも人懐っこい方というのはあると思うけど。

「ふたりとも。今日はティカちゃんの村まで行くよ。かなり遠いんだってね」

「大体1000kmぐらいですかね?」

「めっちゃ遠!!」

「あと高低差も結構あります。ルートにもよりますけどちょっとした山脈があるので。一番高くて3000mぐらい?」

「高!!!」

ナイスリアクションキエリスちゃん。

山脈に住む人あるある。距離感バグ。

「3000mって高山病になるレベルだね。」

「そうですね。でも今回は転移でばばっと飛んじゃうんですよね!?かなり楽だなぁ」

「飛ぶ距離は私も全面的に手伝ってかなり稼ごうとは思うけどそもそもキエリスの飛べる回数に限界があるんだ」

「そうでしたか。でも!それでも!馬とか使ってだと2ヶ月かかりましたから。整備されてない道や崖ばかりなので」


キエリスがいなかったらさすがにこの話は乗っていなかったかもしれないほど遠い。なんでそんな遠くまで来てるんだと一瞬よぎったけど、腕の立つ人が多いのはやっぱり人が多い首都だから調査隊はここで人探しをしていたんだろう。


「キエリス。今回は私が最大限力を貸すよ。あまり時間もないからね。目一杯まで遠くに飛ぼう。そこで質問だけど、可能な限り遠くに飛んで、かつマークを作る余裕があるほどの魔力をキープすると何回飛べる?」

血の魔法でも術者本人に触れていれば私はその血の魔法を使える。だけど転移の魔法はキエリスの手伝いしかできない。しかも手伝える魔力量は全部庇えるって訳ではない。飛ぶ場所が遠ければ遠いほど集中力がいるらしいから無限に転移できるわけじゃない。あと有視界の問題だ。


「えー!そんなのわかんないよ!」

うん。そう言うと思った。

「普段長い距離を移動するときはどうしてるんですか?」

「キエリスの特訓も込みだから私はそこまで力を貸さないで飛んでいるんだ。基本は飛ぶ先の地面が見えるギリギリを目指して飛ぶから大体5kmを何度も。遠すぎるときはキエリスの勘に任せてある程度の高さを保って飛ぶよ。」

「雲の中とか見えない場所までは飛ばないようにしてるんだ。んー。長くてどのくらい飛ぶかねー。その日の疲労度と調子の良さに依るね!」

「副団長さん今日はどうなんですか?」

「かなりそこそこまあまあだね!」

「どっちだよ」


実際はちょっとした丘ぐらいまでは高く上がってからある程度の目標目指して飛んでいる。

キエリスの調子の良さといってるのはどれだけ高めに飛ぶかだ。空気が澄んでいたりと条件が揃っていれば一回40kmは飛べるんじゃないかな。100mは上空にあがって飛んでるからそのぐらいはいっているはずだ。それにキエリスちゃんはまだまだ成長期だからね。


「リマクは東に向かうにつれてどんどん標高が高くなるんだよね。」

「はい。クチャクティムイは乾燥して標高も低いですけど、村に向かうとどんどん標高も高く、緑も生い茂っていきます。ジャングルですよ。」

「虫きらーい」

口を窄ませながらそんなことをいうキエリス。

「また子供みたいなことを言って」

「それでどうしますか?」

「今日は天気もいいからガンガン飛んでおきたい。もし今日辿り着かなかったら行った時点まででマークを作ってまたガルニエに戻る。そしてまた明日マークした場所に飛んでそこからまた飛ぶって感じかな。雨とかなら天気の回復を待ってもいいかもしれないな。山はきっと天気の移り変わりも早いだろうからね。」

「なるほど。野宿の必要はなさそうですね。」

「そういう荷物も転移するから疲れちゃうから必要な分だけお願いねティカちゃん。でもおやつはいっぱいね!」

「はい!実はいっぱい持ってきてます!」

「うん。それじゃいこっか。」


キエリスを真ん中にして手を繋いだ。

転移の魔法は空間を交換する魔法。それなら手を繋がなくてもいいのではと思うのだろう。実際、空間転移するなら手を繋ぐ必要はない。キエリスはキエリス自身の転移が一番簡単にできるようで、キエリスに触れているものを一緒に転移するのならかなり省エネで移動できるのだ。空間ごと交換なのは変わらないけど人間だけの空間分なら無駄な転移スペースがないでしょ?


「せーの!」

キエリスの掛け声と同時に3人で小さくジャンプした。

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