第11話 終焉戦線 ― 黒き軍勢と、兄弟の決断

■ 黒き空の下で


《忘れられた塔》の上空を、禍々しい魔力の奔流が覆っていた。

魔王軍の大規模転移――それは、まさに“侵略”ではなく“処刑”の陣形だった。


「……包囲されたか」


塔の外には、黒き鎧に身を包んだ魔族の兵士たち。

総数、およそ三千。さらに空には、飛竜部隊が旋回している。


ディーンが苦い声で言う。


「完全にこちらの位置を読まれていたな。さすが断罪者……」


尚人は弓を握りしめた。


「来るぞ――!」


そして、前方の地面が音もなく割れた。


現れたのは、あの黒装束の男――

“第一断罪者” 神崎 敬(けい)。


その背後には、魔王軍四将のひとり、《氷獄将バルゼム》の姿もあった。



■ 兄弟の対話


敬は無表情に言う。


「塔の力を起動したな、尚人。ならばもう、“観察”の必要はない」


尚人は一歩前に出る。


「兄さん……あのとき、王国に裏切られたのは、確かに不条理だった。でも、だからってこの世界を壊していい理由にはならない!」


「壊すためじゃない。作り直すためだ。人の欲望に染まった王国を、根っこから“断罪”する。それが俺の答えだ」


二人の間に、誰も入ることができなかった。


そして――敬が右手を掲げた瞬間、空が鳴った。


「開門。“審判の庭”を展開する」



■ 最終戦線 ― “審判の庭”


空間が一変した。大地が闇に飲まれ、虚空に浮かぶ巨大な円形戦場が出現する。


これは断罪者だけが発動できる結界魔法――

敵味方を強制的に分断し、“裁きの空間”を作る神級魔法。


尚人と敬、そしてソレイユ、ミリア、ディーンは中に引き込まれた。


「……閉じ込められた!」


「この空間では、物理法則も魔法理論も“断罪者”が書き換えられる。普通なら、勝ち目はないが……」


尚人の目が光る。


「“天の回路”がある限り、こっちも書き換えられる」


彼は掌に魔導術式を展開した。


再構成式コード・リブート、発動!」


空間が再び震え、尚人の足元に“白き理論陣”が浮かぶ。


それは“知識による再創造”――世界のOSに干渉する、チートを超えたチート。



■ 兄弟決戦、始まる


尚人 vs 敬。


矢が空間を裂き、剣が法則を壊す。


ミリアとソレイユも加勢し、断罪者と魔王軍の幹部たちとの激突が始まった。


敬の剣が放つ“空間断裂斬”は、接触するだけで命を奪う。

尚人はそれを“無軌道転移式盾”で弾きながら、理論上存在しない魔導弾を次々と構築して撃ち出す。


「兄さん……っ!」


「尚人、今ここで俺を超えてみろ!」


二人の力が、世界の“理”を巻き込んでぶつかり合う。



■ 決着の時


数十分に及ぶ死闘の末――

敬の剣が折れ、尚人の矢が彼の胸に突き刺さる。


だが、致命傷ではなかった。尚人が手加減したのだ。


「なぜ、止めなかった」


敬が血を吐きながら問いかける。


「兄さんを“救いたい”と思ったからだよ。あのとき、兄さんは俺の命を守ってくれた。その恩を、今返す」


敬は小さく笑った。


「……甘いな、お前は」


「そうだよ。でも、それが俺の“選択”だ」


敬の身体が崩れ始める。断罪者の力が彼を蝕み、命を削っていた。


だがそのとき――魔王軍の空が割れた。


「――魔王レリクス、降臨!」


魔王が、自ら前線に現れた。



次章予告:


最終章『選ばれし世界 ― 転生者たちの未来』


尚人と魔王、直接対決へ。

すべての始まりにして終わり、神と転生者の選択の果てにあるのは――“世界の再起動”か、“破壊”か。

そして敬が最後に遺した“鍵”とは……。

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