第4話 「笑顔の中で芽生える、守るという気持ち」

ナナ――スライムの仲間(なかま)を救(すく)ってから数日(すうじつ)。

ユキはますます村(むら)の子(こ)どもたちの輪(わ)に溶(と)け込(こ)んでいた。


朝(あさ)はパンを焼(や)く手伝(てつだ)いをして、昼(ひる)は薪(まき)拾(ひろ)いや畑(はたけ)仕事(しごと)。

夜(よる)は焚(た)き火(び)を囲(かこ)んでお話(はなし)を聞(き)かせる。


(なんだか……懐(なつ)かしいな)


この温(ぬく)もりは、かつて忙殺(ぼうさつ)されていた日々(ひび)の中(なか)で、とうに忘(わす)れていたものだった。


そんなある日(ひ)、村(むら)に“お客(きゃく)”がやってきた。


「魔物(まもの)が家畜(かちく)を襲(おそ)った?!」


村長(そんちょう)の報告(ほうこく)に、大人(おとな)たちは騒(さわ)がしくなった。


「北(きた)の山(やま)に棲(す)む“赤(あか)い目(め)”の獣(けもの)だという話(はなし)だ」


村(むら)の守(まも)りは、基本(きほん)的(てき)には冒険者(ぼうけんしゃ)に任(まか)されている。

しかし今回(こんかい)は急(きゅう)だったため、村人(むらびと)たちで応急(おうきゅう)対応(たいおう)することになった。


「ユキ、おまえは来(こ)なくていい」


そう言(い)われても、ユキは村(むら)の一員(いちいん)として何(なに)かしたかった。


(そうだ……)


夜(よる)、誰(だれ)にも言(い)わずに村(むら)の外(そと)へ出(で)た。

ナナを連(つ)れて、北(きた)の山(やま)へ向(む)かう。


「ナナ、何(なに)か感(かん)じる?」


「……こっち。生(い)き物(もの)の気配(けはい)がするよ」


獣道(けものみち)を進(すす)んだ先(さき)、洞窟(どうくつ)の入口(いりぐち)で赤(あか)く光(ひか)る目(め)を見(み)つけた。


(これか……)


しかし、ただの獣(けもの)ではなかった。

その体(からだ)は影(かげ)のように黒(くろ)く、常(つね)に霧(きり)を纏(まと)っている。


(普通(ふつう)の動物(どうぶつ)じゃない……魔獣(まじゅう)!?)


ユキは咄嗟(とっさ)に手(て)を掲(かか)げた。


「この村(むら)には手(て)を出(だ)さないで!」


だが魔獣(まじゅう)は牙(きば)をむき、襲(おそ)いかかってきた。


その瞬間(しゅんかん)、ユキの周囲(しゅうい)に青白(あおじろ)い結界(けっかい)が張(は)り巡(めぐ)らされた。


(なにこれ……!?)


魔獣(まじゅう)は結界(けっかい)に跳(は)ね返(かえ)され、咆哮(ほうこう)を上(あ)げて退(しりぞ)いた。


「……ユキ、それ……守護(しゅご)の魔法(まほう)だよ」


「ぼく……使(つか)ったの?」


「うん。またチート、ひとつ発現(はつげん)したね」


本人(ほんにん)は驚(おどろ)くばかりだが、これが“善意(ぜんい)”の力(ちから)だということを、ナナだけが知(し)っていた。

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