第3話 叱責と決意
「みっちゃむおはよ!」
「おはよ」
「あれ、ここなは?」
月影美知と大和彩月が挨拶を交わすが、一人足りない。
普段であれば美知とここなは一緒に登校するのだ。
「喧嘩ではないけど……ちょっとね」
美知は言葉を濁した。
「それは聞かない方がいいやつ?」
「うーん、かもしれない」
「そか、分かった」
彩月もそれを汲み取り、この件には深入りしないことにした。
彩月は二人の関係性を信頼しているからこそ放置できた。ただ、表情には出さないが疎外感も少なからず感じている。
朝のホームルームが始まる。
「今日は黒木は遅れてくるそうだ」
その中でここなにも触れられた。
それを聞き美知と彩月は安堵する。
ここながやってきたのは昼休みが終わった頃で、美知と彩月を避けるようだった。
美知も掛ける言葉を見つけられず、彩月はその様子を見守るのみ。
結局、ここなは二人と話すことなく部活へ行ってしまった。
「どうする?」
「あたし、川口に話を聞いてみる」
「川口くん? なぜに?」
美知は彩月にここなの恋について打ち明けることにした。それを驚くようにして聞く彩月。
「まじで内密なやつね」
「うん。さすがに口外しないよ。みっちゃむに託した」
「ありがとう」
彩月は二人を応援することしかできない。
美知は急いで晃のクラスへと向かう。
「川口くん! ちょっと今いい?」
晃は丁度部活へ向かおうとしているところだった。
「えっと……いいけど」
クラスの者たちが何事だという風に視線を集めるが、彼女は意に介さない。
美知と晃は面識がある。仲が良いというほどではないが、ここなを挟んで一緒に遊んだ経験はある。
「ここじゃあれだから場所移したいんだけど」
「え、部活が……」
「遅れるって誰かに伝えて」
「わ、分かった」
美知の圧力に負け、晃は水泳部のクラスメイトに遅れる旨を伝える。
そして、二人は空き教室へと移動した。
「それで話って?」
晃はこれを告白だなどとは期待していない。
「昨日の放課後、白山先輩と一緒に帰ったらしいじゃん。あれどういうこと?」
「え、あれ? 黒木には言わないで欲しいんだけど……実は白山先輩に黒木への誕生日プレゼント選びに付き合ってもらってさ」
「は?」
川口が恥ずかしながらにそう言うのを聞き、美知は耳を疑った。
「なんでよりによって白山先輩なの? あたしでいいじゃん! 言ってよ!」
美知は込み上げる怒りをぐっと堪えたが、言葉の端々に苛立ちが透けて見える。
「え、ごめん。白山先輩って黒木と仲良いから」
「いやいや、あたしの方が仲良いじゃん」
「えっと……」
晃は答えに窮する。ここまで責められることに理解が追いついていなかった。
「単刀直入に聞くけど、それってつまり、川口は白山先輩のことは好きじゃないってことよね? ここなが好きなのよね?」
「え……それは……」
晃がさすがの照れ恥ずかしさに口ごもる。
「答えて!」
「はい! 好きです!」
しかし、またもや美知の圧力で反射的に回答する。
「あなたのせいでここなが苦しんでるんだけど、どうしてくれるの?」
「ごめん。なんでそうなるの?」
晃は心底申し訳なさそうにおっかなびっくり尋ねる。
「はぁ。あのね、昨日川口くんが白山先輩と楽しそうに帰るのを見て、ここなは辛い思いをしてるの。二人が付き合ってるって勘違いしたの」
「ええ!? 誤解だよ!」
「もー頼むよ、ほんとに」
美知はあまりの晃の間抜けさに肩を落とす。
「ごめん。俺としては白山先輩なら俺と付き合うなんてありえないから安全かなって思ったんだけど……」
「あー、そう。まあ、言いたいことは分かるけどさ、女の子はね、好きな男子が笑顔を向ける先に美人がいたら絶望するの。覚えてね」
「はい」
晃が反省の色を見せたことで彼女も少し落ち着きを取り戻していた。
「じゃあ、もしかして今告白したらまずい感じ?」
「そうね。何? 誕生日プレゼント渡す時に告白するつもり?」
「うん。ちょうど一週間後」
「じゃあ、それまでに何とか誤解を解かないとね。あたしが言ってもいいけど?」
「いや、俺が頑張るよ」
晃は決意のこもった表情を見せる。
「分かった。応援してる」
「ありがとう、月影さん」
「でもあたしも今ここな怒らせてるとこなんだよね」
「それ、俺のせいだよね。まじでごめん」
晃は誠意を見せるために両の手を擦り付けて謝意を表す。
「あーいいよ、もう。こうなったらしょうがない。結ばれてくれたら許してあげるから。こっちのことはこっちで何とかするし」
そうして美知と晃はそれぞれここなと向き合うべく歩み出した。
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