せつない告白
[高野]
「んなもん他人なんやから与えたかもわからんみたいに思うてくるやん。だんだん俺ら悪いんやないかとな。そんなときに相手がピアス開けたろうかと言うてきてん」
「左だけに?」
未来は相手に告白されているのではないかと思い、どうして高野も応じたのか尋ねた。彼は意味を理解していないのかいたのか。もし相手がわざと知られないようにしたのなら何ともか細い告白ではないか。
涙が溢れてきた。
「滅茶苦茶痛いやん。あの音と。そやから右はやめてくれ言うたんや。男のくせに根性なしや言われたけどな。一つで許してもろたんや」
「気づいてないの?
どうなの?
気づいていて……」
未来は心で尋ねた。
えぐられるようでつらい。
高野は冷やすとか消毒とかしなければいけないということを後で聞いたらしく、穴の位置決めも知らずに勢いで任せたらしい。それでも穴がふさがらないようにしている。
どういう気持ちで?
「金髪の派手な奴でな。朝からフードコートでたこ焼き焼いて、夕方から学校や。ハンバーガーショップの隣でたこ焼きなんて売れるんか聞いたら意外に売れるらしい。黙々とひっくり返してると無心になれるんや言うてた」
「今どこに?」
「遠く」
「遠く……?」
「そや。彼女もたこ焼き焼くのつまらん言いながら働いてた。気づいたら焼きすぎててな。晩ごはんに冷えたたこ焼きなんてたまらんで。二人して晩ごはんのたこ焼きがアイツにストレス与えたんかな言うて笑うてたんや。忘れたらあかん思うてな」
高野は左の耳たぶに触れた。駅前に迎えに車が増えてきて、しばらくして電車が着いた。何人かがおりてきて、迎えの車に乗ったらしく、未来も高野も彼らがいなくなるまで黙ってドアの閉まる音が聞いた。
「その子はどうしたの?」
「まだ五年生やろ。里親は責任取るいうて育てることにしたらしい。実親のところには戻せんしな。そうなればもう俺は邪魔になるやん」
追い出されたの?と聞いた。
「そんな人やない。俺は古株やし。俺を養子にするようなこと言うてくれたけど、ちょっと今回はひとまず遠くへ行きたい言うたんや。里子はピンキリでな。人どついて少年院行く奴もおれば、ドラッグや売春してた奴もおる。俺みたいなマジメな奴は珍しいんや」
未来は頷くと、今のところは笑うところだと言われたが、笑えないと真剣に返した。高野は本当にマジメでやさしくて、キズついている。触れようとすると、キズつけられない術を知っていて、スッと逃げてしまうところがある。そんな彼が未来のために、つらいことを話してくれたのに、こんなことになるなんて情けなくて、また涙が溢れてきた。
「いちいち泣くなよ」
「ごめんね」
「話したくて話したんや。謝られると困るんや。自販機なんてほんまにどうでもええことや。でもどうでもええことに必死になれるのは、悪いことやないと思うねん」
「うん」
「俺、勉強もつまらんと思うてるねん。でもがんばるのはつまらんことやない。釣り部なんてのもそうやん。何考えてるねんと。コイツら揃いも揃ってアホやな思うてな」
「アホ……」
「褒め言葉や。俺は世の中斜めに構えて生きていこうとしてた。どこかしらおまえらに俺のことわかるか思うてたんよ。知ってもらいたい思うてたくせに。俺は広い太平洋の隅っこしか見てなかったんやな。そやから俺はここに来てよかったわ」
高野はクリアピアスを外すと、手の平の上で少し見つめた後、ギュッと握り締めた。未来は彼の拳を両手で包んだ。言葉で何と答えればいいのかわからず、衝動的に高野の頬に猫が鼻を合わせるようなキスをしてうつむいた。高野もうつむいた。
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