第27話 俺は桜井春に告白される
桜井春は俺に何を言いたいのだろう?
※※※
ガチャン。屋上の扉が開いた。もあっとするような空気が立ち上がりむしむしとしていた。空を見ればさんさんと照りつける太陽があって緑色のコンクリートの床に立つと足がじんじんとしてくるようだった。時々チチチと鳥が鳴いていた。俺と桜井は日陰となるところを探した。
辺りを見渡すと給水タンクの傍に影が出来ていたからそこで話をすることにした。俺と桜井は地面に腰掛けタンクに寄っかかった。
俺の心臓がドクンドクンと跳ねる。緊張感が高まっていた。
「急にごめんね」
桜井が言った。俺に相談があるというからだった。
「いや、大事なことだったら話してくれた方が良いよ。その方が安心するし、俺も前に桜井さんを怒らせたからこちらこそ、ごめん」
「ううん、その件は忘れて。もうなんとも無いから」
桜井はそう言った。気を遣うわけじゃくて本心のようだった。
「それで、話って何かな?」
俺が彼女の方を向いて聞いた。
「えっと、ね・・・・・・」
桜井は急に恥ずかしがるようだった。もじもじとしている。髪の毛先をいじりだした。
一体何だろう? と俺は気になった。さっきまで元気な様子を見せていた彼女が急にしぼんでしまうようだった。
「青山君は、私のこと好き?」
「え!」
それは突然の告白に思えた。だってここまで呼び出して話すことなのだからだ。俺は慎重に言葉を選ぼうとして答えようとした。
「4月のオリエンテーションの時に仲良くなれたと思って好意を寄せたことはあるよ。だから桜井さんのことを追っていたんだよね。でももうそういう気持ちは無いよ」
「そう、か」
「え? 良くなかった?」
「ううん、違うの。そうじゃないの」
「?」
俺は桜井春の本心が分からなかった。
「桜井さん、好きな人がいるの?」
「!」
桜井は顔を合わせた。図星のようだった。
「どうして、分かるの?」
桜井が目を丸くしているようだ。
「そりゃあ分かるよ。男子の話をするとしたらそうだろうなと思った」
俺は自分で言うのも恥ずかしかったけど、桜井には恋の話を正直に言ってほしいなと思ったのだ。
でもそうか。好きな男子がいるんだな。
「ずっと言えてないの。自分の気持ちを」
桜井は迷っているのだ。だから俺に話した。
「そうかぁ。どうしたらいいんだろう? 俺はぼっちだから友達がいないし、協力してくれそうな人がいれば良いけど」
「それでなんだけどね。青山君に協力してほしいの」
えええ! 俺に何が出来るのだろう? でも桜井の頼みだしなぁ。
「えっと、相手が誰か教えてくれたら出来るかどうか分かると思うなぁ。それで良い?」
俺は桜井に条件を言って相手によっては断ろうと思った。特にケンカがつよそうな男子とかだったらそうだ。
「うん・・・・・・いいよ。実は・・・・・・同じクラスなの」
ふうん、一体誰だろう?
俺は桜井が好きそうな男子を考えていた。
しかし、桜井は俺の予想と違っていた。。
「咲・・・・・・なの」
ドクン。俺の心臓が強く跳ねた。鼓動がさっきとは違うリズムになっている。
桜井の口から出たその一言が俺の脳裏から離れない。
彼女は真剣なんだ。俺は桜井とは友達でいたい。せっかく頼ってきているのに断ることが出来そうにない。だからなのか俺の胸の奥でギシッと軋むような音がしていた。
どうしよう?
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