第27話「最終詐欺合戦」



三重の裏切り発覚から一週間後、山田、高橋、伊藤、渡辺の四人は最後の会合を開いていた。場所は品川の高級ホテルのスイートルームだった。


「もう後がない」


山田一郎が重い口調で切り出した。投資詐欺師として二十年の経験を持つ彼も、今回ばかりは追い詰められていた。


「田村、鈴木、佐藤。三人がスパイだった」


高橋美香が苦々しく語った。霊感商法詐欺師として人の心を読んできた彼女も、仲間の裏切りには動揺していた。


「俺たちは完全に包囲されている」


伊藤正夫が現状を分析した。保険金詐欺師として慎重な計画を重視する彼は、美咲の戦略を冷静に評価していた。


「では、どうする?」


渡辺真一が実務的な問題を提起した。偽ブランド販売詐欺師として損得勘定に長けた彼は、最終的な選択を迫っていた。


「降伏するしかないのか?」


山田が自問した。


「それは屈辱だ」


高橋が反発した。


「プライドが許さない」


「プライドで命は守れない」


伊藤が現実的だった。


「美咲の組織は、俺たちが思っているより危険かもしれない」


「危険?」


渡辺が詳細を求めた。


「あの女は、俺たちを生かしておく理由がない」


伊藤の分析は深刻だった。


「利用価値がなくなれば、処分される可能性がある」


詐欺師たちは美咲の冷酷さを思い出した。


「では、戦うしかない」


山田が決意を固めた。


「どのように戦う?」


高橋が戦略を求めた。


「俺たちの持てる技術を全て使う」


山田の提案は具体的だった。


「投資詐欺、霊感商法、保険金詐欺、偽ブランド販売」


「それぞれの専門技術を組み合わせるということか」


伊藤が理解した。


「そうだ」


山田は頷いた。


「美咲の組織に対して、総力戦を仕掛ける」


「具体的には?」


渡辺が詳細を求めた。


「美咲の組織の資金源を断つ」


山田の戦略が明かされた。


「組織の収入を止めれば、美咲も困るはずだ」


「それは可能か?」


高橋が疑問を示した。


「やってみる価値はある」


山田は自信を見せた。


「俺の投資詐欺の技術で、美咲の資金を奪える」


「どのような方法で?」


伊藤が確認した。


「偽の投資案件を作って、美咲の組織に提案する」


山田の計画が具体化された。


「組織の資金を投資させて、そのまま持ち逃げする」


「それは危険すぎる」


渡辺が警告した。


「美咲に見破られたら、確実に報復される」


「見破られないようにやる」


山田は意志を固めた。


「俺の演技力を信じろ」


その時、高橋が口を開いた。


「私にも提案があります」


三人は高橋に注目した。


「霊感商法を使って、美咲の心理を攻撃します」


「心理攻撃?」


山田が詳細を求めた。


「美咲にも、弱点があるはずです」


高橋の分析が始まった。


「完璧に見える人間ほど、隠された弱点がある」


「具体的には?」


伊藤が興味を示した。


「おそらく、美咲は誰も信用していない」


高橋の推測は鋭かった。


「それが逆に弱点になる」


「どういうことだ?」


渡辺が理解を求めた。


「信用しない人間は、逆に騙しやすい」


高橋の説明が続いた。


「適切な霊感商法で、美咲の心を動揺させることができる」


「霊感商法で?」


山田が疑問を示した。


「美咲は論理的すぎる」


高橋の分析は具体的だった。


「そういう人間は、非論理的なものに弱い」


詐欺師たちは高橋の戦略に注目した。


「では、俺たちはどう動く?」


伊藤が実務的な問題を提起した。


「まず、私が美咲に接触します」


高橋が先陣を切った。


「霊感商法で、美咲の動揺を誘う」


「その隙に、俺が投資詐欺を仕掛ける」


山田が続いた。


「組織の資金を奪う」


「俺たちは?」


渡辺が自分と伊藤の役割を確認した。


「伊藤は保険関係、渡辺は物品関係で攻撃する」


山田が役割分担を決めた。


「美咲の組織を多方面から攻撃する」


詐欺師たちは最終作戦を決定した。


翌日、高橋は美咲のオフィスを訪れた。


「美咲さん、お話があります」


高橋の声は神妙だった。


「どのようなお話ですか?」


美咲は冷静に尋ねた。


「あなたの周りに、死者の霊が見えます」


高橋の霊感商法が始まった。


「死者の霊?」


美咲は興味を示した。


「おそらく、あなたが手にかけた人たちです」


高橋の言葉は具体的だった。


「彼らがあなたを恨んでいます」


「面白い話ですね」


美咲の反応は冷静だった。


「続けてください」


高橋は美咲の反応に戸惑った。動揺を期待していたが、美咲は全く動じていなかった。


「特に、年老いた女性の霊が強く現れています」


高橋は美咲の祖母に言及した。


「おそらく、あなたの祖母でしょう」


「祖母?」


美咲は初めて反応を示した。


「そうです」


高橋は確信した。


「彼女があなたを呪っています」


「呪い?」


美咲は笑った。


「祖母が私を呪う理由がありません」


「あなたが彼女を殺したからです」


高橋の指摘は直接的だった。


「殺した?」


美咲は首をかしげた。


「私は祖母を愛していました」


「愛していたなら、なぜ詐欺の道具にしたのですか?」


高橋の追及は鋭かった。


「道具?」


美咲は困惑したふりをした。


「私は被害者です」


「嘘です」


高橋は断言した。


「あなたが祖母を騙させたのです」


その時、美咲の表情が変わった。


「面白い推理ですね」


美咲の声は冷たくなった。


「でも、証拠はありますか?」


高橋は美咲の変化に気づいた。霊感商法が効いているのではなく、美咲が演技をやめたのだった。


「証拠は必要ありません」


高橋は強気に出た。


「霊が教えてくれています」


「霊が?」


美咲は立ち上がった。


「高橋さん、あなたの霊感商法は二流ですね」


美咲の評価は厳しかった。


「本当に霊が見えるなら、私の正体を最初から知っているはずです」


高橋は美咲の指摘に言葉を失った。


「あなたの作戦は、山田さんと同じです」


美咲は高橋の意図を完全に読んでいた。


「私を動揺させて、隙を作ろうとしている」


高橋は美咲の洞察力に戦慄した。


「でも、残念ながら失敗です」


美咲は冷静に宣告した。


「あなたたちの最後の抵抗も、これで終わりです」


美咲は電話を取った。


「Mさん、残りの三人も処理してください」


高橋は美咲の冷酷さに震え上がった。


「あなたたちの詐欺師人生は、今日で終わりです」


美咲の宣告に、高橋は絶望した。


最終詐欺合戦は、美咲の完全勝利で終わった。


詐欺師たちの最後の抵抗も、美咲の前では無力だった。

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