メイとレイの幽霊限定お悩み相談
七月七日
第1話 おばあちゃんと手紙①
「ただいま〜」
玄関ドアの開く音と同時に聞こえてきた声。ドタドタという
「お帰り、うがいと手洗いね」
「アッチ〜!」
母親のいつもの台詞を聞き流し、床の上に学校指定のリュックを投げ捨てて、レイは冷蔵庫を開けた。一.五リットル入りの麦茶のペットボトルを取り出してラッパ飲みする。
「口つけて飲んじゃダメっていつも言ってるでしょぉ。冷蔵庫も開けたらすぐ閉めるの!」
冷蔵庫の扉を開けたまま麦茶をラッパ飲みする息子の服を引っ張って、母親は冷蔵庫の前から
「プハァー、生き返った!いいじゃん、家族なんだし」
半分くらい飲み干した麦茶をまた冷蔵庫に戻し、レイは口を尖らした。
「そんな問題じゃないの!口つけて飲んだら、口の中の雑菌が入って繁殖して腐っちゃうのよ」
「分かったよ、これは俺が責任持って飲み干すよ。ご飯まで宿題すっから二階にいる」
そのまま二階に行こうとするレイ。
「その前にうがいと手洗い!もう先に麦茶飲んだから、遅いけどね!」
鍋の中のほうれん草を菜箸で動かしながら、母親はもう一度言った。
「分かった、分かった」
渋々、洗面所に向かい、レイはガラガラ〜っとわざと大きな声をあげてうがいをする。
三十分後、再び玄関ドアが開き、先程よりも軽やかな足音の後、リビングのドアが開いた。
「ただいま〜」
そう言いながら、こちらもまたすぐに冷蔵庫を開けて、さっきの麦茶を取り出した。
「それ、さっきレイがラッパ飲みしてたわよ」
「うそ、マジ⁈ きったねー。ねぇママ、なんか飲む物ないの?」
メイはすぐに麦茶を元に戻し、リュックを肩から外してダイニング・テーブルの椅子の上に置いた。
「パントリーに買い置きがあるかも。なければ水ね」
「水道水はやだ。あ、コーラがあった。なんで冷やしてないの?」
「入らなかったのよ。コップに氷を入れて飲みなさい」
食器棚からコップを取り出し、冷蔵庫の氷と常温のコーラを入れると、泡が吹き出した。
「おっとっと」
メイはそう言いながら、口をコップの方に持って行き、吹きこぼれそうになったコーラを飲んだ。
「ぬる〜い、レイの奴め。そうだ、間違って飲まないように名前書いといてやろ。ママ、マジックある?」
「そこの引き出しにあるわよ」
メイは、冷蔵庫の中から麦茶のペットボトルを取り出して、マジックの太い方でラベルに何か書いた。
「あ、メイだけコーラ飲んでる!ズルい!」
レイが二階から降りて来て、メイの飲んでいるコーラに手を伸ばした。制服からTシャツ短パンに着替えている。
「ダメ、あんたはこっち!」
コーラを死守したメイは、たった今、レイの名前を書いた麦茶を差し出した。ラベルには、“霊”という漢字が一文字、デカデカと書かれてあった。
「何だよ!霊って!メイの馬鹿!」
「メイって呼ぶな!お姉ちゃんって呼べ!」
「同い年なんだからいいじゃん!母ちゃん、メイがこんな事した〜」
レイは、ペットボトルを見せながら母親に告げ口をした。
「母ちゃんじゃなくてママって呼びなさい」
母親は、ペットボトルには目もくれずにそう言った。
「何だよ、俺もう中二だよ!ママなんて呼んでたらイジメに遭うよぉ。可愛い息子がイジメに遭ってもいいの?」
「可愛い息子なんて自分で言うか?この馬鹿息子!」これはメイの台詞。
「ふんだ、中二を舐めんなよ。グレてやる!」
「そんな勇気もない癖に、やれるもんならやんなさいよ!」
「母ちゃん、メイが虐める〜」
「お姉ちゃんって呼べ!」
「ああ、もううるさい!ご飯できるまでレイは二階!メイはお風呂に入りなさい、これは命令よ!」
腰に手を当ててそういう母親は、言葉の割に二人を見つめる眼差しが優しい。
「出た〜、 “これは命令よ”、頂きました!」
「それを言いたいから、俺たちの名前つけたんだもんな!」
そう、姉の名前は『
ごくありふれた普通の家庭の日常風景のようだが、この二人のきょうだいには特殊な能力が備わっている。
姉のメイは、霊の声が聞こえ、弟のレイは、霊が
これから始まる物語は、そんな二人の能力を使った、幽霊退散の物語である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます