第3話 二日目の朝

テントが二つ。

女子と男子に分けてあり、皆それぞれテントの中、寝袋に包まっていた。

昨日のキャンプ初日、疲れ切った皆はご飯を食べた後そのまま寝てしまっていたのだ。

今はその一日後の朝、キャンプ二日目に当たる。

陽射しがテントの薄い生地から透き通る。

鳥の囁き声と蝉の鳴き声が耳を通り、僕はその自然に起こされる。

起き上がり、寝袋から出る。

他の人はまだ寝ているようだ。

そっと起こさないように外に出ると、焚き火の前で椅子に座る小柄な背丈を見た。

僕は自分のスマホをポケットに入れて、その方へ近づく。

「おはよう、花奈はな

「あ、海。おはよう」

優しく微笑む花奈。

ほのかな可愛らしい雰囲気を放つ彼女に僕の胸がどきりと高鳴る。

「海? 顔赤いけど大丈夫?」

「あ、いや、な、なんでもない」

嘘だ。

僕は花奈の事が大好きなんだ。

花奈は保育園の頃からの幼馴染で、同時に僕がずっと恋心を抱いている相手。

小柄で細身で、夏用の白いワンピースに麦わら帽子。

まるで絵に描いたような夏の少女。

明るいその態度には優しさがあって、少し鈍感で、少しドジで。

でも可愛らしく、小動物のように愛おしい。

本当なら今にでも告白したい、でもなかなかタイミングが見つからない。

好きの一言も言えない僕は、少し情けないのかもしれない。

「とりあえず顔洗ってきなよ。奥のほうに水道あるからさ」

「うん、ありがとう」

ジャリジャリと石が散らばる道を歩いていく。

蛇口を捻ると出てくる冷え切った水。

体の色んな場所が蒸れるほど暑い日だからちょうどいい。

それを手に掬って顔にかける。

さっきまでぼんやりとした顔と視界はスッキリとクリアになって、顔を拭ってため息を付いた。

どうしたら花奈にアプローチできるんだろう。

もっと彼女に異性として見てもらいたい。

幼馴染じゃない、一人の異性として。

そうすれば振り向いてもらえるかもしれないと思いながら、僕は焚き火の方へ寄る。

キャンピングチェアに座って、花奈と話した。

「今日も暑いなぁ……」

「ね、ほんと。あ、そう言えばさ。海はキャンプ行く前に親に話した?」

「まぁいちよう、念の為話したけど……」

「そっかぁ。うちはばあちゃんが畑仕事手伝えってうるさくて。せっかくの夏休みがそれで潰れるのもやだからキャンプに参加した」

「えっ? それって大丈夫?」

「大丈夫、許可はママからもらってる。ばあちゃんにはうちの口では知らせてないけど」

そうやっていたずらっぽく笑う彼女に僕の胸が苦しくなる。

可愛い、守りたくなるような笑顔。

息ができないほど、締め付けられる。

ただ好きだという思いが。

僕の頭から湯気のように熱が出る。

「ちょっと、大丈夫!?」

「し、心配ない」

そう答えるも、僕の視線は彼女の方を向かない。

ゆでられたような熱をこもらせ、伝わる胸の鼓動を感じ、僕の中で緊張が一層増す。

後ろで物音がして、振り向くと遊人がテントからひょこりと顔を出していた。

ニヤニヤと笑みを浮かべ、遊人は暖かい目をこちらへ向ける。

「ふふふふふふふふふ」

「なんだ遊人、気持ち悪い表情して」

「いやぁ〜〜、青春ですなぁ〜〜」

「なんのことだ」

「いえ僕はなんともぉ?」

わざとらしく遊人が仕草をとって、僕の顔に熱が登る。

花奈にバレないよう、必死に胸の高鳴りを抑えながら。

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