アプリ

皆さん、変なアプリを使ったことはありますか?根拠のないような相性診断、自分の死ぬ時期を当てる占い、ただボタンを押すだけのもの。いろいろありますよね。

こんなに沢山あるんですから、一つくらいは、本物が混じっていても不思議ではないですよね?

今回は、そんなアプリについてのお話をひとつ。


「ねぇ、哲学的ゾンビの噂って知ってる?」

「しらなーい。哲学…ゾンビ?なにそれ?」

「えっとね、本人と全く同じ反応とか行動なんだけど、実は意思とかは無い人間?がいるんだって。」

「へー。なんか、高性能なAIみたいだね。」

私は携帯電話で検索をかける。するとすぐに情報を見つける。

「哲学的ゾンビって噂っていうか、思考実験のやつじゃん。」

「違うの。本当にいるんだって。」

「なにが?」

「哲学的ゾンビが。」

「は?」

「だから、本当にいるの!」

「なわけないでしょ。それにこれ、本当の人とどうやって判断するの?受け答えとか見た目とか、一切変わらないんでしょ?」

「それがね、判別できるアプリがあるんだって!そのアプリを使ってその人の写真を撮って、あなたはあなたですか?って聞くの。それで、哲学的ゾンビだって判定された人がいるんだって!ね、やってみようよ!」

 面倒臭い。変なアプリってウイルスとか怖いし、個人情報抜き取るやつなんじゃ無い?そんな押し問答をしつつ、勢いに負けてアプリをインストールした。写真を撮って、お互いに質問をする。少し間をおいて、ピロン、と音がする。結果は二人とも、『哲学的ゾンビではありません。』なーんだ。そんな結果に落胆した後、私達は解散した。

 家に帰るとお母さんが出迎えてくれる。几帳面で、綺麗好きで、毎日同じ時間に起こしてくれるお母さん。ふと、さっきの話題が脳裏に浮かび、話のネタになるかと思い立つ。例のアプリを立ち上げ、お母さんの写真を撮る。照れたような顔でピースをする姿は微笑ましい。そして質問する。

「お母さんは、お母さんだよね?」

お母さんは一瞬真顔になり、不思議そうな顔をする。

「今度はなんの遊び?もうご飯できるわよ。はやく準備してらっしゃい。」

「はーい。」

私はアプリの結果を見る前に、洗面所へ向かった。

ピロン。


こういうアプリの結果って、何を根拠に判定するんでしょうね?

あなたの身近な人も、もしかして。

はは、これは冗談ですよ。冗談、下手ですかね?

でももし哲学的ゾンビがいるとしたら、はたして何人いるんでしょうね?

もしかして、あなた以外全員、なんて。

ははは。これも、冗談ですよ。

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