悪役令嬢インストールおっさんの事件帳~処刑《デスマーチ》待ったなしのグラマー悪役令嬢に憑依したプログラマーおっさんはヘルプに入る~
喰寝丸太
第1話 憑依
わたくしはツンデレーヌ。
ああ、愛しのヒューリー王子。
王子様のお顔を思い浮かべると胸が張り裂けそうですわ。
悔しいですわ。
なぜ、わたくしが民衆の前で悪女として、火あぶりにされなくてはいけないの。
何もしておりませんのに。
誰も話を聞いて頂けない現状が悔しくて悔して、たまりませんわ。
ある貴族令嬢から譲り受けられた毒の小瓶を握り締めます。
眠ったまま安らかに死ねるとおっしゃってましたわね。
その令嬢は恋敵を殺したいと言ったら、変な商人がこれを差し出したと。
恐ろしくって、悩み抜いて、処分もできなくて。
ツンデレーヌなら、気軽に使えるでしょって、売りつけられましたわ。
わたくし、そんな女ではございませんことよ。
でも、金に困ってそうだったので、買い取ってあげましたわ。
偽物かも知れませんわね。
わたくしが10日後に、処刑ですって!
死の足音が聞こえてきます。
こうなったら、眠って死ぬと説明された毒を飲んであげるわ。
わたくし、処刑などされなくてよ。
ざまぁですわ。
ごめん遊ばせ。
毒は味がしませんわね。
ただの水かしら?
ふわぁ、眠い……。
音楽と死神の足音が聞こえる。
デスマーチかしら。
毒は本物みたいですわね。
嫌だ、死にたくない!
誰かデスマーチからわたくしを救い出して、お願い……。
「デスマーチのヘルプならおっさんに任せろ。若くないから、プログラマーとしてはもう戦力外だが、経験だけはある」
ええと、この中年の男性は誰?
死神?
それにしては人が良さそうですわ。
「デスマーチは辛いよな。俺が仕事を代わりにやるから、仮眠を少し取れよ。1時間も寝れば、またバリバリできるさ。目のクマさんがクマクマだぞ。いいから、いいから、おっさんに任せろ」
処刑を言い渡されてから、ほとんど寝てませんわね。
眠い……。
任せてみようかしら。
「はい、お任せいたします。わたくしは少し休みますわ……」
俺は起きた。
寝てたようだ。
「あれっ、ここはどこだ? えっと、会社じゃない。うおっ、胸がある! 体が女?」
現状の記憶がある。
殺人未遂の冤罪で処刑まで10日ぁ!
温情で、牢に収監ではなくて、実家の自室で謹慎。
この体の持ち主から、仕事を受けたのは覚えてる。
「いいぜ、やってやるぜ。
俺はたぶん過労死したプログラマーおっさんだ。
主にヘルプを担当してた。
まずは状況。
この体の持ち主はツンデレーヌ、貴族令嬢。
鏡で顔を見たが、悪女面だ。
釣り目にきつい目つき。
グラマーな体型。
美人ではある。
周りの評判はすこぶる悪い。
短気なんだよ。
癇癪持ちって奴だ。
罵倒が凄い。
物に当たる当たる。
でも、人を怪我させたのは一度だけ。
それもわざとじゃない。
手が滑って、投げた水差しが、メイドの顔に当たった。
謝れば良かったが、逆に悪態をついた。
万事がこう。
素直になれない性格だよな。
本心を知ってる俺としては、誰かフォロー役がいれば良かったのにと思う。
殺人未遂の事件だな。
被害者は、ヒューリー王子の婚約者のロザンナ。
ツンデレーヌはヒューリー王子が好きなので、ふだん何かがあるとロザンナに酷いことを言ってた。
ツンデレーヌには動機がある。
ロザンナの性格は良い。
ツンデレーヌ以外に、憎んでた人物はいない。
動機から考えるに、ツンデレーヌが犯人とするのは、理に適ってる。
暗殺未遂事件だが、殺し屋がロザンナを襲った。
殺し屋は死んで、黒幕の証拠は何もなし。
王子が激怒して、裁判の結果こうなった。
証拠がないのにと思うのは、俺が日本人だからだ。
この世界は王侯貴族や魔法もある異世界。
日本の常識は通用しない。
だが、逆もしかり。
日本なら異世界の常識は通用しない。
捜査に日本の常識で当たるのだ。
違う結果が出る可能性もある。
そうそう、ツンデレーヌは死んでない。
眠ってるだけだ。
飲んだ毒は眠るだけの効果のようだな。
飲み食いせずに寝てたら、そりゃ死ぬよな。
解毒は俺のやる仕事ではない。
殺人未遂の件が片付いたら、調べるけど。
毒は魂を眠らせるって効果らしいな。
体に魂がふたつあるって感じがする。
ツンデレーヌの魂が寝てて、衰弱するどころか、元気になってる感がある。
毒の件はしばらく大丈夫。
なんで俺の魂が入ったかの理由は分からないが、ツンデレーヌの魂が眠ってて、抜けてるってのと同じことなんだろな。
デスマーチのヘルプ、要するに事件解決を頼まれたのは覚えてる。
ツンデレーヌが俺の魂を呼んだのかも知れない。
魔法がある世界だからな。
裁判で有罪になって、牢ではなくて、処刑まで自室で謹慎となった。
ロザンナが、最期のひと時を家族と過ごさせてあげてと言ったらしい。
証拠がないのを気にしたのかな。
ツンデレーヌは無罪だと言い続けてたからな。
王子はロザンナと相思相愛なので、この提案を受け入れた。
ロザンナは優しいと、評判が良くなるという効果も狙ったのかも知れないがな。
いずれ、ロザンナは王妃になるのだから、評判は大事。
血も涙もないって、噂が立つのは不味いからな。
とくに、ロザンナから見れば、ツンデレーヌは恋敵だ。
ツンデレーヌが横恋慕っていうのはあるが、恋敵を奸計で殺したっていう噂や評判は不味い。
人の行動原理は日本人も異世界人も、そんなに変わらないだろう。
魔法の知識はツンデレーヌが持ってる。
俺はツンデレーヌの知識を自由に引き出せるようだ。
魂が繋がってるのかな。
問題なければ、構わない。
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