結局結婚ってお金
志乃原七海
第1話『結局、結婚ってお金なんでしょ?』
小説エピソード案:「愛の値段、現実の天秤 ~神田あやかのシビアな本音トーク~」
ある日の午後、神田あやかの元に、少し疲れた表情のカップルが訪れた。女性は高梨沙織(28歳)、男性は小林健太(30歳)。婚約指輪を探しているが、どこかぎこちない雰囲気が漂っている。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなリングをお探しでしょうか?」
あやかはいつものように笑顔で声をかけるが、二人の間に流れる微妙な空気を感じ取っていた。
いくつかのリングを試着した後、沙織がため息まじりに呟いた。
「素敵だけど…やっぱり、私たちには贅沢かな…」
健太は少しバツが悪そうに黙り込んでいる。
「お客様、もし差し支えなければ、何かご心配なことでも?」
あやかが優しく問いかけると、沙織が堰を切ったように話し始めた。
「実は…彼、最近転職したばかりで、まだお給料もそんなに…それに、結婚式の費用とか、新生活の準備とか、色々考え始めると、指輪にこんなにお金かけていいのかなって…」
健太は「沙織、そんなことここで…」と慌てるが、沙織は続ける。
「でも、一生ものだし、妥協もしたくないし…でも、現実問題として、お金って大事じゃないですか?やっぱり、結婚ってお金なんでしょ?」
また出たわね、そのセリフ。あやかは内心で頷きつつ、表情は崩さない。
「お気持ち、痛いほどよく分かります。ええ、分かりますとも」
あやかは大きく頷き、そして、いつもの「爆笑モード」とは少しトーンを変え、真剣な眼差しで二人を見つめた。
「…お客様、今日は少しだけ、わたくしの『本音』をお話ししてもよろしいかしら?」
二人は少し驚いた顔で、あやかを見つめ返す。
「わたくし、毎日たくさんの幸せそうなカップル様を拝見しております。キラキラした愛の言葉、永遠の誓い…それはそれは素晴らしいものですわ。でもね」
あやかは一呼吸置き、言葉を選びながら続けた。
「『愛だけでお腹は膨れない』。これ、悲しいけれど、紛れもない事実ですの(笑)。 結婚は生活です。お家賃、光熱費、食費…そして、もしかしたら将来のお子様の養育費。考え出すとキリがないくらい、『お金』が必要になってくるのが現実ですわね」
沙織はこくりと頷き、健太も神妙な顔つきになっている。
「ですからね、『結婚ってお金なんでしょ?』というお言葉、わたくし、大・大・大賛成ですわ!(笑) むしろ、そこをちゃんと見据えていらっしゃるお客様は、とっても賢明で、地に足がついている証拠。素晴らしい!」
あやかはパン!と手を叩き、いつもの調子を取り戻したかのように明るく言った。しかし、その目には確かな説得力が宿っている。
「ただね、お客様。ここで一つ、大事なポイントがございますの」
あやかは人差し指を立てる。
「それは、『お金が“全て”ではない』ということ。そして、『何にどれだけお金をかけるか』は、お二人の『価値観』そのものだということですわ」
あやかはショーケースから、価格帯の異なるいくつかのリングを取り出した。一つはゴージャスな大粒ダイヤのリング、もう一つはシンプルで洗練されたデザインのリング、そしてもう一つは比較的手頃な価格帯の、しかし個性的な輝きを持つリング。
「例えば、こちらのリング。確かに高価です。でも、この輝きがお二人の『これからの人生を照らす灯り』になると信じるなら、それは投資ですわ。将来、このリングを見るたびに、『あの時、二人で頑張ってこれを選んで良かったね』って思えるなら、それはプライスレスな価値を生むかもしれません」
「そしてこちら。比較的お求めやすい価格ですが、デザインには妥協がございません。もしお二人が、『指輪はあくまで気持ちの証。それよりも、新婚旅行を豪華にしたい』とか、『将来のために貯蓄を優先したい』とお考えなら、こちらも素晴らしい選択ですわ。浮いたお金で、お二人の『別の夢』を叶えることができるのですから!(笑)」
あやかは、まるで手品師のようにリングを操りながら、熱弁を続ける。
「要するにですね、お客様。結婚における『お金』というのは、お二人の『幸せの形』を測るメジャーみたいなものなんですの(笑)。 どこを長くして、どこを短くするかは、お二人次第。正解なんてございません」
沙織と健太は、あやかの言葉に真剣に耳を傾けている。最初にあった張り詰めた空気は、少し和らいでいるように見えた。
「だからこそ、わたくしどもアドバイザーは、ただ高いものを売ればいいとは思っておりませんのよ。お客様の『価値観』をしっかりお伺いして、お二人が心から納得できる『愛の形』を見つけるお手伝いをさせていただく。それがわたくしたちの使命だと思っております。(…まあ、本音を言えば、高いのが売れた方が嬉しいですけどね!それはそれ、これはこれ!笑)」
最後の小声のツッコミは、二人に聞こえたかどうか。しかし、あやかの真摯な言葉は、確実に二人の心に響いていた。
「一度、お二人でじっくり話し合ってみてはいかがでしょう?『私たちにとって、一番大切なものは何だろう?』って。そして、その答えが出たら、またいらしてください。わたくし、神田あやか、全力で、お二人の『幸せのメジャー』にピッタリのリング探し、お手伝いさせていただきますわ!(笑)」
あやかは、最高の笑顔で二人を見送った。
(ふう…たまには、こういうマジメなセールストークも悪くないわね。でも、やっぱり私の本領は爆笑トークかしら?(笑) まあ、お客様次第ってことね。それにしても、愛だの恋だの語っても、結局最後は電卓叩くのが現実なのよ。全く、世知辛い世の中だわ…って、私が一番よく知ってるんだけどね!笑)
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