第1章ー魔少女の咆哮ーその5

その5

麻衣




「麻衣、よくわかんないよ。第一、相和会の名刺って持ってるの?それとも偽造して印刷するの?」


「違うよ、久美。要は連中の虎の威を借りるだけで、紙の名刺を使うわけじゃないんだって」


「ああ、そういうことか…」


あらら…


サチコは準ミス止まりで、久美よりはバカ学校に近くないらしいや(苦笑)


...



「でさ…、麻衣。わからないんだけど、いつどこのタイミングでスケベ親父からいくら受け取るのよ?」


「サチコ、私が察するには、まずホテルは有人の前払いシステムを選び、入る前に預かる。まあ万札片手くらいかな。ホテルに着いて、窓口で部屋の指定と支払い済ます直前、もう一人の少女が飛び込んでくる。”大変だー!警察にばれた。すぐ逃げないと!”って感じで…」


馬美の滑舌滑らかな説明に、サチコと久美はフンフンと頷いてる(苦笑)


「…そこで、”尻尾を掴まれなきゃ、あとは相和会がうまく対処してくれるから。”保全金”の中で…”とかって、お相手に聞き取れるように怒鳴る。私の見立てじゃあ、そんなとこだけど、どうだい、麻衣?」


「うん、まあ全体のアウトラインはそんなとこだよ」


「ならさ、そこの局面で不自然さを極力削げば、相手の後ろめたさに付け込めるってことか。”おじさん、このお金いい?”とか、猫だね声で囁きゃさ、そのターゲットはパニくって動揺してるだろうからさ、”いいか、この際”ってことになり得るか…。ふふ、まあ、半券(5千円札)くらいは事前に用意して気持ちで返してやれば、お相手のスケベオヤジからはかえって感謝されるかもね。…でもさ、どこで見つけるんだよ、そんな格好のターゲットをさ…」


ハハハ…


馬美、では麻衣アンサーだ


...



「あのさ、私は今回の計画には並々ならぬ決意で臨んでるんだ。まずは、それを承知してもらいたい。物事を成し遂げようとする人間はさ、ごく限られた恵まれた境遇の人間を除いては、何らかのリスクを抱えなければさ、そもそも第一歩を踏み出せないって!まずは、決断する勇気と覚悟が必須だってことだよ」


私は本日の勝負に出た


畳み込んでやるさ!


「…その後は、絶対に前に進めるという確信に値する勝算の手ごたえを得る戦略と戦術を立案し、実行できるかさ。で、馬美の問いに答えよう。任せとけ。この一言だよ」


「…」


さあ、3人の反応はどうだ…


私の提示したハードルは決して低くないぞ



...



「よし!私は麻衣のプランに乗る。おもしろいじゃん、ヤクザというライオンを向こうに回して、計算されつくした女ジャッカルの群れがその餌をさらう…。リスクは人間が生き抜いていく上で究極の”天敵”ではあるんだろうが、己を成長させる栄養にもなり得る。…違うか、麻衣?」


「いや、すべて同感だよ、馬美。二人でもやり遂げようぜ!リスクという栄養で目標ゲットを目指してさ」


「ああ…」


私は半腰しまで立ち上がり、一番端に座っていた高滝馬美とがっちり右手を握り合った


真ん中に座る久美とサチコの体越しで…


...



「わかった!麻衣、私も乗るよ。バカ学校入ってまで一生懸命教科書とにらめっこの毎日はご免だしさ。かといって、中途半端に部活で汗ながして自己満足の日々もノーサンキューだって。この際、イカす気の合う仲間とスリリングなチャレンジにかけるよ、私は。リスクは正直恐い。でも仲間と一緒ならって気持ちは持ってる。恐れない。やるよ、私も!」


次に馬美の隣だったサチコが決断してくれた


3人は立ち上がり、改めて互いの手を取り合ったよ


で…、残ったのは私の隣の久美だけだが…


...



私はその久美に視線を投げかけた


すると…


「私は…、ちょっと考えさせてもらってもいいかな…」


アハハハ…、久美、いいって


お前がこんなステキなメンツ集めてきてくれたんだからさ


それだけでも感謝してるって


じっくりと熟慮してさ、ムリならそれでいいよ


...



「ああ、久美、強制はしないよ。ゆっくり考えて、もし、よかったら一緒にやろう。でも、他言は絶対無用だからね。いいな…」


「わかった…」


よし、今日はこんなとこでいいや


はは、収穫だったな、とにかく


高滝馬美か…!


いいや、コイツ


私の”相棒”にできる器だ…


私はその時、そう直感したよ






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