「ヒロインレーサー」~若手声優たちの複雑な共同生活~
アリミナ
1章「騒がしい共同生活始めました!」
1話 退屈な日常
「は〜い。今日の講義はここまで」
5月12日の昼下がり。
俺ーー
何の価値があるかも分からない講義をぼんやりと聞き終えて帰り支度をしていると、突然声をかけられる。
「ふぅ・・・。やっと終わったな
声をかけてきた金髪のチャラそうなこいつは
この大学ーー
「何がやっとだよ。お前ずっと寝てたじゃないか」
講義中に隣で小さくいびきをかきながら、居眠りをしている
「へへ!バレてたなら話が早いな。ノート借してくれ」
調子良さそうにそう言ってくる
「飯を奢る」など言っているが全部こいつの自業自得だ。俺の知ったことじゃない。
「じゃあな
そう言い残して
ドォン!!と大きな音を立ててながら開いた扉の先には、茶髪でショートカットの少女が一人立っていた。
見慣れた顔だ・・・。
「お疲れ様です!!
こいつは
「何してるんですか!!早くしないと撮影始まっちゃいますよ!!」
「大きな声だすな
撮影…そう俺は声優をしている。
数年前子役時代にお世話になっていた人から誘われる形で俺は声優業界に入っていった。特に興味があったわけではなく暇つぶし程度の気持ちだった。
だが『アナライズ・スター』通称『アナスタ』の主人公を演じて以降、ありがたいことに仕事を沢山貰うことが出来ている。
だがあまり大きな声で言わないで欲しいものだ。顔バレは既にしているとはいえあまり騒ぎにはしたくない。
「おいおい!置いていくなよ
そんなことを考えていると
「ちょっとそこのチャラい人!!
「少しくらいいいじゃねえかよ
「覚える価値もありません」と言い放つ
「どこに行くつもりですか!!私からは逃れられないですからね!!」
それも虚しく入口を包囲される。周りが騒がしくなる。
もう放っておいてくれ・・・マジで。
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「
肩までかかる黒髪にピシッとしたスーツを着た女性。
この人は
「すみません。少しトラブルがあったもので」
主に貴方の姪っ子と俺の友人のせいで・・・。
「そうまあいいわ。まあ今日は仕事のだけ話じゃないんだけどね」
は??確か今日は新しい撮影のはずだったが・・・。
「もちろん撮影はあるわよ。でもその前に少し面倒な案件を片付けないといけないのよ。」
「面倒な案件ですか?」
何のことだと首を傾げる
この様子じゃこいつも知らない感じか。まあそれだけ重要なことなんだろう。
それより嫌な予感がするのは気のせいだろうか。
そんな不安な気持ちもありながらも車に乗り込み事務所へと向かうことした。
**************************************
大学を出発してから30分。
都心の中心地近くの場所にある事務所に到着する。
いつものソファーに腰を掛けると
俺は何かやってしまったのだろうかと、そんな不安を抱えながら
「
「とある仕事ですか?」
「ええ」と返事を返しコーヒーを口にする
「貴方この子達のこと知っているわよね」
そう言って数枚の写真を見せられる。そこには見慣れた顔の人物が何人かいた。
そして・・・。
「
「気持ちは分かるけど仕事だから。それで本題に入るけど・・・。」
ああ。もう嫌な予感しかしない。
これから何を言われるのか想像しただけで寒気がする。
「貴方には来週からこの子たちと共同生活をしてもらうわ!」
はぁ~。最悪だ。
色々文句や聞きたいことは沢山あるが、今は最悪な気持ちでいっぱいだった。
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