第19話 貴方だけには


母親が娘を探している。

しかしそれは...あくまで自らのものにする気だろう。

そう考えながら俺は翌日を迎える。

俺はベッドからゆっくり起き上がりながら昨日の死神の姿を思い出す。

間違いなく今帰すべきではない。


「...」


俺はゆっくりベッドから降りながらスマホを見てみる。

時刻は7時だ。

なんというかまだ登校時間にはえらく早いんだが。

そう考えつつ準備しながら居るとインターフォンが鳴った。

俺はビクッとする。

まさか、いや。


「はい」

「あ、あの。私だけど。新島由紀...」

「は!?お、お前!?」


どうなっている。

考えながら俺は表に飛び出す様に出る。

するとそこに由紀が確かに居た。

俺を見つつ笑みを浮かべる。

何故居るのかが分からないが...。


「由紀?お前どうしたんだ?こんな朝早くから」

「し、施設の人に極秘裏に」

「いや。怒られるぞお前。全く」


そういう事か。

思いながら俺は由紀を見る。 

「今日だけ、ね」と由紀は俺の家に上がる。

それから由紀は「今日はお母さんは?」と聞いてくる。

俺は「ああ。居ないぞ。朝から仕事だ」と話す。

すると由紀は「それは好都合だね」と言った。


「?!」


由紀が松葉杖を捨ていきなり俺に飛びついて来た。

それどころかキスをしてくる。

しかもこれは!

舌を入れてきやがった!

由紀?!


「お前なにを!」

「えへ、うへへ」


舌を絡めながら俺を赤面で見てくる。

ボヤーッとしている感じだ。

それから由紀は俺から離れてから唾を飲み込む。


「幸助くん。私は...貴方を求めたい。だから...」

「だから?」

「私と性行為してほしい」



いきなりなにを言っている。

そう考えながら俺は絶句する。

由紀は「私は貴方に全てを捧げたい」と言う。

こ、この為にコイツは早めに施設を出たのか?!


「アホ!無理だ!なにを考えてんだ!」

「なんか考えたんだけどやっぱり私は貴方が好きすぎて。負けたくないから...ね」


由紀はその場で四つん這いでゆっくりスカートを下ろした。

下着姿になる。

それから俺を押し倒す。

ば、ちょ。

そう考えつつ俺は「オイ待て」と言う。

由紀はニヤッとしながら俺を見る。

それから見下ろしてくる。


「私さ。...告白してから調子がおかしいんだ」

「告白してから!?」

「うん。なんだか本当におかしいんだ。ドキドキが止まらない」

「...」


俺は由紀を見上げる。

ふむ。

それから「...お前に言うのは避けたかったけど。...話があるんだが聞いてくれるか?」と言う。

由紀は俺の姿に「?」を浮かべて俺を見る。

そして「なに?」と優しく聞いてくる。


「良い機会だから話すんだが。俺はこの世界の記憶を持った人間じゃないんだ」

「え?それはどういう意味?」

「お前に最初、冷たい時がなかったか?」

「言われてみれば確かに...でもあまり仲良い訳じゃなかったし」

「ああ。そう思えるかもしれない。実はな。俺は人生を一度棄てたんだ。それでこの世界に来た。記憶を持ったままな」

「え...」

「それも俺はお前と結婚までしたんだ。だけどお前は前世では裏切り行為をした。...まあ今回は違うけどな。見る限りは」

「どういう裏切り行為を...」

「お前は浮気したんだ。でも」


そう言いながら俺は上着を被せた。

それから「由紀。この世界のお前は前世とは違う。だから泣き崩れたり浮気はしないって信じている」と告げた。

由紀は涙を浮かべてから「それ...そんな事をしたの?」と反応する。


「信じるのか。お前」

「信じるに決まってるよ。幸助くんはいつも悩んでいる感じはしてた。だけどそんな事を...」

「...だけどな。落ち着いて聞いてくれるか。俺はこの世界のお前はどう考えても浮気しないって思ってる」


俺は由紀を真っ直ぐに見つめる。

それから俺は「おまえは真剣に頑張ってる。全てに抗ってるから。だから俺はお前を信じるよ」と笑みを浮かべた。

由紀は「ずっと考えてくれてたんだね」と上着を握ってから俺を見てきた。

俺はその姿に「まあな」と苦笑する。


「...私は愚かだね」

「愚かじゃないさ。そう思えるだけ良かったんじゃないか」

「...そうかな?」

「俺は少なくともそう思うがな」

「君は本当に優しいね。幸助くん」


それから由紀は松葉杖をついでゆっくり立ち上がる。

そしてスカートを履いてから服装を整える。

そうしてから由紀は俺に向いた。


「私、貴方に見合う女性になりたい。だからこの世界では絶対に貴方を裏切らない」

「...由紀...」


由紀は自らの両頬を叩いた。

それから顔を上げてから「やりたい事はまだあったんだ」と言ってくる。

俺は「?」を浮かべて由紀を見る。

由紀は「お弁当を作りたいんだ」と俺を見る。


「直ぐ作るから待っていてくれる?」

「分かった。...だけど俺も手伝うよ。今の状況じゃ厳しいだろ」

「うん。ありがとう」


それから俺は由紀を補助する。

そして俺は由紀と一緒にリビングを抜けた。

台所に伝いながら歩く。

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