第9話 シーソーゲーム(改稿)

ショッピングモール内を回っていると大きな本屋を見つけた。

俺は書籍を見る為に店内に入る。

それから俺は何故か福祉関係の児童相談所。

つまりそういう関連の仕事のコーナーに足を運んでいた。

なにをしているのか。


「しがないサラリーマンだったのにこんなものを読むとはな」


そんな事を呟きながら書籍を見る。

そこにあった児童相談所についての書籍を見てみた。

内容は複雑だ。

家庭裁判所、警察、医師、職員。

開いたページにはそんな感じの連携プレーの事について記載があった。

それらを読みながら居ると母さんが「なにしているのかしら」と聞いてきた。


「ああ。いや。児童相談所ってどんな所かなって思って。それから...その。福祉ってなんだろうって」

「そうなのね」

「母さん。俺は前世ではしがないサラリーマンだった。なんかさ。俺は...」

「貴方の目指したいものを目指しなさい」

「...!」

「母親はどんだけあってもお腹を痛めて産んだ子を見捨てたりはしない。貴方がどんな職業に進もうと止めたりしないわ。まあ犯罪は嫌だけど。貴方がやりたい様にやりなさい」


「その道が良いならそうしなさい」と言う母さん。

俺はその言葉に目の前の本棚を見る。

前世では目標を見失ったサラリーマンだった。

だけど今回も同じ人生を歩む気はない。

さらさらない。

だからこそ俺は。


「...」


沢山の人に支えられて俺は幸せ者だな。

そう考えながら俺は書籍を置く。

それから俺は顔を上げた。

そして俺は目を閉じてから開く。


「...」


確かに俺は由紀を恨んでいる。

だけど恨んでも彼女はこの世界の。

そう考えながら「なにかが違うんだよな」と呟いて俺は書籍にもう一度手を伸ばした。

それから書籍を見てみる。

そして俺は「...」となりながら文章を読んだ。



由紀の事は散々恨んではいる。

何故なら由紀は悪夢を生み出した本人。

張本人だ。

だから俺は恨みを絶対に忘れない。

だがこの世界で彼女は記憶を失っている。

ならば俺はあくまで彼女を恨みっぱなしでは良くない気がする。


「珍しいわね。書籍...大学の心理学の参考書を買うなんて」

「なにかが知りたいんだと思う。そのなにが知りたいのかは分からないけど」

「...そうね」


母さんは「お父さんと出逢ったのどんな風だったか知ってる?」と聞いてくる。

俺は母さんを見る。

それから「前世でも聞いた事はないな」と話してから前を向く。

すると「貴方みたいな一丁前の男の人だから私は結婚したんだけど...私達が出逢ったのは学生時代だったわ」とクスクスと言う。


「私ね。転校生だった。それで彼と出逢ったんだけど彼はモテモテだったわ」

「母さんはどんなアピールをしたんだ?」

「してないわよ。あの人は私を助けてくれた。それで恋に落ちたのよ」

「...助けた?」

「私が母親に虐待されていたのよ」


まさかの答えに俺は愕然とした。

それから母さんを見る。

「母さん...それって」と言う。

そして母さんは寂しそうな感じで「ネグレクトとか世間一般では言われているわね」と返事をする。


「放置されてたわ。他の男と遊ぶ母親でね。私は...捨てられたのよ」

「...」

「学校の納付金も生活費も全部バイトで稼いだお金よね。母親は一切家事も何もしなかったし」

「それで父さんが助けたのか」

「お互いに好き同士じゃなかったんだけど。「あ、この人なら」って思って。アピールし始めたわ」

「...そうだったんだな。だから母さんは過去の話をしなかったんだな」

「そう。だから私は...彼女だって救えるって思うわ」


母さんはそう言いながら「...今がきっと正念場よ。戦わないといけないかもだけど。きっと将来は明るいわ。必ず夜明けはくる」と言う。


俺は仕事一心でそういう事は聞いた事は。

いや。

聞く暇がなかった。

母さんは...そんな過去があったんだな。


「浮気?それぐらい吹き飛ばせば良いのよ。初めから改革してね。だから大丈夫。今度は彼女を幸せにしてあげましょう」

「...母さんっぽい答えだな」

「あら。私は大真面目に答えているわよ?」

「...母さん。ありがとう」


そう答える。

ビニール袋に入っている書籍をチラ見し。

俺はビニール袋を握りしめた。


今度は。

この人生を全うしよう。

捨てないで人生ゲームを終わらせる。

そう考えながら決意を新たにした。

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