嫁が寝取られてしまったので自殺したのだがそのせいなのか高校時代にタイムリープした挙句、高校時代の嫁にまた関わってしまったのだが
楽(がく)
運命の歯車が廻り出すとき
貴方という存在は
第1話 自殺の先に
結婚3年目にして妻に浮気された。
まさか俺が愛していた女性に浮気されるとは思わなかった。
それも結婚して3年目。
新婚で...ショッキングなその事に絶望した俺は死ぬ事を決めた。
「...クソ嫁め」
見知らぬ男とキスしてイチャイチャして身体を触らせる現場を目撃した。
クソッタレのクソ嫁が。
そんな事を呟きながら俺は近所の山奥にやって来た。
ここで俺は首吊りをしようと思っている。
クソ嫁に迷惑をかけて死のうと思ったがその場合両親にもそうだが発見が遅れた場合、特殊清掃費用とか迷惑がかかるだろう。
それは死んでもごめんだと思う。
両親に迷惑はかけられない。
「...」
自然に帰る様に死んだほうがマシと思った。
その為に山奥に来たのだ。
この場所なら死んでしまえば熊とかイノシシに俺の遺体が食われて自然に還るだろうと思った。
樹木葬とかあるし良いよな?
そう思いながら俺は木に括りつけた縄に手をかけた。
嫁に迷惑をかけれないのは心底残念だ。
「あばよ現世」
そして俺は思いっきり高い場所から飛んで首を吊った。
筈だったのだが。
☆
「おーい。幸助君や」
そんな女の声がした。
俺は「?」を浮かべてからゆっくり瞼を開ける。
そして日の光...その現実味を帯びた世界。
驚愕した。
死んだ筈の人間なのに何故こんな。
「何してるの?瞑想?」
そんな事を言っていた声の主は...梓だった。
高校の制服を着ている柊梓(ひいらぎあずさ)。
俺の友人だった人物。
え?え?なんで制服なんか来ている。
卒業して10何年も...え?
「えっと。どうしたの?」
「...待て。梓。お前なんでこの場所に居る...んだ」
「え?どうしてってそりゃこの場所は私のクラスだしねぇ」
愕然としながらガバッと立ち上がる。
それから周りを見渡してみる。
確かに教室の様な場所に俺は居た。
クラスメイトが「?」を浮かべて大きな音で椅子を蹴飛ばし立ち上がった俺を集中的に見ている。
あの日、10年前の高校の教室である。
いや待てそんな馬鹿な事ってあるか?
ここは天国か?
いやだが...。
「何やっているの?ビックリしたじゃん幸助。もしかして寝ぼけてる?アハハ」
「...いや。すまない...すまん」
俺は間違いなく自殺した。
その筈だった。
だってあんなに首の骨がズレる感触もあった。
苦しみもあった。
なのに何故...こんな事に。
10年前の景色が。
「ああそうそう幸助。もし良かったら宿題見せて。その用事だったの」
「あ、ああ」
「今日の午後に小テストがあるでしょ?ね?」
俺は動揺しながらノートを座って探す。
それから俺は数学の宿題を記載しているであろうノートを梓に渡す。
梓は「ありがとー」と言いながら笑顔になって受け取った。
状況は飲み込め始めた。
だがこんな馬鹿な事があるもんなんだな。
タイムリープってやつだろうけど...映画でしか観た事が無いんだ。
これは現実だ。
「ねえ。幸助くんや」
「な、なんだ。どうしたんだ、梓」
「様子がおかしいよ?汗かいてるし」
「...そうか?す、すまん」
「もう。しっかりして。まだまだ授業は続くんだから。明日も宿題も見せてもらわないといけないし」
コイツという。
いやまあそんな事はどうでも良い。
俺は首を振ってからチャイムの音を聴く。
動揺が取れない。
正直...今日1日ぐらいはこの状態だろう。
☆
放課後になってから俺は帰る為に教科書を鞄に詰め込んだ。
小テストも0点に終わり。
成績優秀な俺だったから教師に「?」を浮かべられた。
変な感じで見られてしまった。
少し恥ずかしかった。
一緒にいつも帰っていた梓には断りを入れて今日は1人で帰る事にした。
本当に何も集中出来なかったぞ。
実感が湧かない中で校門に向かって歩く。
そして顔を上げてまた激しく動揺した。
そこに居たのは。
「..,お前...は」
「あ。佐元くんじゃん」
そこで運動着を着て清掃をしていたのは。
新島由紀(にいじまゆき)だった。
俺と結婚して婚約生活を送って自殺の原因になったあのクソ嫁だった。
箒と塵取りを持って笑みを浮かべている。
黒の長髪。
それから小顔で目がクリッとしている顔立ち。
ヒマワリの髪留めを結婚する前まで着けていたのだが...間違いない。
コイツは新島由紀だ。
いやまあ確認する必要もないけど...現実逃避ってやつだろうな。
そう考えて硬直していると新島が寄って来た。
「どうしたの?なんか...緊張してない?」
「...いや。何でもない...」
この当時はまだ結婚する関係ですらない。
挨拶し合う仲だっただけだ。
プリントを運んでいたコイツに声をかけて手伝っただけ。
それから発展はしていった。
今の段階がどの辺りかは知らないが俺は...。
「...すまないな。邪魔して」
それから俺はそそくさと帰ろうとする。
ただ今は関わりたくない。
そう思って目の前に歩き出すと新島が「待って。佐元くん」と声をかけてきた。
俺は「?」を浮かべてゆっくり背後を見る。
新島が笑みを浮かべていた。
「この前...風で散らかったプリントを拾ってくれてありがとうね」
「...いや。ただ飛んで行ったものを拾っただけだしな。問題ないんだが」
ああ成程。
その段階なんだな。
思いつつ居ると新島はまた笑みを浮かべた。
まあ...こんな笑みを浮かべられてもな。
俺達の関係はこの辺りで終了する。
何故なら俺が終わらせる。
このページを捲った先の結末が悲しいものになるからな。
思いながら俺は「...」となって顔を上げた。
「じゃあ」
「うん」
何も言えなかった。
そして俺はゆっくり歩いて帰宅する。
それから自宅に帰ると外の物干し竿付近で洗濯物を干している若い頃の母親が居た。
エプロンをした母さん。
まあそれはそうではある。
10年前の世界だしなここは。
社畜だった俺は...いやまあ社畜だったのでこんな朗らかな感じの母さんを見るのは久々だった。
実家に忙しくて帰れなかった懐かしい記憶が巡る。
母さんが俺に気が付いて笑みを浮かべた。
「あら。お帰りなさい。幸助」
「ただいま。母さん」
「早かったわねぇ」
「...まあな」
俺は少しだけ控えめの笑みを浮かべながら玄関から家の中に入る。
階段を上ってから俺の部屋に入った。
10年前の俺の部屋。
そして10年前の家具とかの配置。
変わらない。
絶望の景色だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます