第14話「訓練と傷跡」


──反乱軍第2支隊・戦術演習施設。


無機質なコンクリートに囲まれた訓練ブロック。都市型シミュレーションエリアには、A小隊の6人が立っていた。


「目標地点:C6ビル屋上。制圧にかかる時間と被発見率、連携を評価する。

戦術補佐はソーマ、作戦立案を」


セルジュ中尉の声は落ち着いていたが、その視線は鋭かった。


「君たちはまだ“部隊”ではない。ただの寄せ集めだ。……それを忘れるな」


──訓練開始。


「マクシム、遮蔽を頼む。ノア、囮役で陽動。ヴィオラ、高所偵察。ユーリは狙撃支援」


「ラジャー。ちょっくら目立ってくるわ!」

ノアが跳び出しながら笑う。


「遮蔽準備、10秒くれ」

マクシムの声は低くて重い。


だが、タイミングがずれた。


爆破が遅れ、ノアのルートが丸見えになり、ヴィオラの偵察角度は予定より甘くなった。


「遅いっつってんだろ、マクシム!」

「爆破タイミングは、合図がねぇと意味がねえんだよ!」


「南西の屋上、敵センサー確認。ルート選定が不適切」

ヴィオラが淡々と指摘する。


「そこまで高精度の配置は……」

「“勘”に依存した戦術は、運用とは言えません」


──訓練終了。全滅判定、遅延5分。


セルジュ中尉が一言だけ残して去る。


「次は“隊として”動け」


──その夜、補給庫裏のベンチ。


ソーマはデータパッドを眺めていた。

足音。ノアが手に飲料をぶら下げてくる。


「補佐さんよぉ、今日は完全に撃沈だな」


「……予想より、連携が脆かった」


「違うな。“隊”になってねぇのさ、まだ。

俺たちは“上手く戦う”前に、“信じ合う”ことを知らなきゃいけねぇ」


ノアはスポーツドリンクを机に置く。


「なあ、もう一回やり直そうぜ。“作戦”じゃなくて、“信じる順番”からさ」


──訓練棟の観測席。


リディアが帳簿を広げながら、静かに言う。


「隊がうまく動かない時、記録も歪むの。

“誰が言ったか”“誰が見ていたか”が、あとで全部ズレていく」


「正しさは視点で変わるからだろうな」


「でも私はね、“誰が誰を見ていたか”を残したいと思ってる」


ソーマはその言葉を聞きながら、帳簿に視線を落とす。


「……じゃあ、次は“全員が同じ方を向いてた”記録にしてくれ」


そしてそっとつぶやく。


「その記録に、自分の名前があることを──少しだけ、誇れるようにしたい」


──訓練記録・備考欄(記録者:L.G)


初動不調、連携不完全。

ただし、補佐役による再調整の予兆あり。

“隊になる前の痛み”を、この日、彼らは初めて共有した。

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