第11話「共闘と裂け目」


──警報が鳴ったのは、明け方だった。


「敵影接近! 近距離ステルス跳躍──帝国機、10機以上!」


赤色灯が基地内を染める。


雑魚寝のベッドから跳ね起きたノアが、声を弾ませた。


「よっしゃ! 俺の番だ!」


整備区画で補助任務をしていたソーマにも、臨時出動指令が届く。


「臨戦態勢にある者すべて、迎撃補助に参加せよ。未登録者も行動許可範囲で動け」


──出撃準備区画。


ノアが前線用の軽量機に飛び乗りながら、ソーマに目を向けず叫ぶ。


「なあ、死ぬなよ。死なれると……怒れねぇからな!」


ソーマは短く頷く。


(なんだよ俺、何マジになってんだよ……くそ)


ノアはコクピットの奥で、ひとり呟いた。


ソーマは旧式スナイパー機に搭乗。帝国製だが、皮肉にも最も身体に馴染む操縦系だった。


──交戦開始。


基地周囲を囲む金属粒子の嵐の中、帝国の機動兵が斜めの軌道で滑るように侵入。

反乱軍の火線は追いつかず、混戦となる。


ソーマは高所から的確に狙撃支援を開始。


「左翼、加速異常──あれ、囮だ。別方向に本命がいる」


その情報に即応した軽量機が、回避機動を取る。


ノアの機体だった。


「お前……やるじゃねぇか!」


──直後、情報班棟が被弾。


「──情報区画、直撃! 消火反応出ず!」


スコープを向けると、そこには──資料倉庫。

そして──リディアの気配。


ソーマは指令系統を切り、自機を反転。


「俺は資料棟に向かう。ノア、後方排除任せる」


「はぁ!? お前、今どこに──ッ……」


ノアは歯を食いしばり、コクピットを叩いた。


「……ったく、死んだら許さねぇぞ!」


──資料棟、炎上区域。


コクピットを離れ、消火装置を背負いながらソーマは突入する。

崩れた本棚、溶けた端末、漂う煙。


その奥で、リディアがうずくまっていた。


「リディア!」


彼女の腕には、燃えかけた帳簿が抱きかかえられていた。


「……これだけは……焼いちゃダメ……

これが……彼らの、生きた証だから……」


ソーマは黙って彼女を担ぎ、出口へと走る。


上空。ノアの機体が敵兵を正確に撃ち抜く。


「来い! そっち、生きてんだろ!!」


──戦闘終了。敵撤退。


施設は損傷を負い、負傷者も出たが、拠点は守り抜かれた。


その夜、簡易医療室で眠るリディアの傍に、帳簿をそっと置いたソーマは呟く。


「……これが、歴史になるのか」


静かに燃え残る紙の匂いが、戦火の後に漂っていた。


通路の向こう側で、ノアが小声で整備兵に漏らした。


「……なんか、あいつ……前より“人間”になったな」


整備兵はふっと笑って、こう返した。


「人間が人間を助ける。それだけで、たまには勝てるってこったな」


その言葉は、誰にも届いていないようでいて──

この拠点の空気に、確かに残っていた。

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