第5話「都市戦・共闘」
「第41戦域、都市部制圧作戦──惑星カルディア第三都市域」
補充兵を含む再編成が行われ、ソーマは新設の機動小隊〈ティアル中隊〉に配属された。
その中には、一つの名前があった。
レオニス・ヴァルグレイド。
士官候補生でありながら、現場指揮評価のため副長として参加。
無言のまま割り当てられたその名に、ソーマの胸に小さな波紋が走った。
──戦場で初めて交錯した、あの目。
自分を見透かしているようで、どこか“割り切れていない”冷たさ。
ブリーフィング室。
レオニスは戦術マップの前で言い放った。
「今回の作戦は、“情報不足の危険任務”。
地形は複雑で、敵の伏兵が潜むには理想的だ」
淡々と事実を並べるその声に、数名の兵士が顔をしかめた。
「だが、命令は命令だ。
……命を賭けるなら、“選ぶ意志”を持て」
その言葉が、ソーマの心に引っかかった。
まるで“選ばなかった自分”を、どこかで批判されているように感じた。
降下。
カルディアの旧市街は瓦礫に埋もれ、地下鉄の残骸が迷路のように広がっていた。
進軍中、第3部隊が奇襲を受ける。
地中から現れたのは、旧世代帝国製を改造した重装機──反乱軍のカスタムモデルだ。
分厚い装甲、ステルス用の光学迷彩、そして市民施設を盾にした位置取り。
「……あれ、市民施設の残骸に立てこもってる?」
スコープ越しに見た敵機の周囲には、避難用の標識と、壊れた医療装置。
「無人とは限らん。……撃ちたくねえな」
混乱の中、ソーマとレオニスは孤立。
庁舎跡で敵に包囲される。
「どうする?」
「……君が足を引っ張らなければ、道はある」
皮肉とも本気とも取れる声に、ソーマは一瞬、口を閉ざした。
──この男、どこまで本心で話している?
敵4機。
うち1機は狙撃支援型、もう1機はステルス系の奇襲仕様。
ソーマが右から回り込み、目立つ動きで注意を引く。
光学迷彩機が動いた瞬間、レオニスのビームがピンポイントでそれを撃ち抜いた。
「ナイス」
「感謝はしないよ」
その返しが、なぜか少し可笑しくて──だが、次の敵を前に思考は切り替わる。
上から降下、背後から回り込み、二人の動きはまるで“呼吸のように”噛み合っていた。
最後の敵機が自爆機能を起動。
爆風の中、ソーマはレオニスをかばうように盾を展開。二人ともギリギリで脱出に成功する。
帰還後、作戦結果は「限定的成功」と記録された。
だが、戦術報告書に“二名の共闘”は一行も記されていなかった。
その夜。
艦内のバーに、レオニスが姿を見せた。
「乾杯。生き残った者たちに」
グラスを軽くぶつける。
ソーマも無言で応じた。
しばらくの沈黙のあと、レオニスが言った。
「君は、戦場に向いていない。だが──だからこそ、生き残ってほしいと思った」
「それは……褒め言葉か?」
「さあね。ただ一つ言えるのは……今日までの話だ」
グラスを置き、彼は立ち去った。
ソーマは残った酒を口に含み、ほんの少しだけ笑った。
“この男の本心は、どこまでが演技で、どこまでが本物か”
だがそれ以上に、
“この一瞬だけは──心が重ならなかったとは言わせない”
そう思わせる、確かな“共闘の手応え”が、確かにそこにはあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます