第13話 エリーゼ、ファッションショーの主役になる

◆ファクトリーパレード!恋とドレスと、きらきら大行進◆

 


「ねぇウイリアム、これって本当にやるの?」


エリーゼは、パレットを手にしたまま困ったように笑った。


「やるさ。むしろ君にこそステージに立ってほしいと思ってる」


「ひ、人前でウォーキングなんて……っ!」


公爵家のファクトリーがドレスショーを主催する――王都じゅうを騒がせたその一大企画は、じつはこのふたりの会話から始まったのだった。


 


■1 その名も、「きらきらファクトリーパレード!」


ファクトリー製のドレスが王都でブームになってからというもの、少女たちは毎日てんやわんや。


「王都の令嬢から花嫁衣装の相談だって!」


「きらり事件のドレスみたいにしてってオーダーも来た!」


そんな中、ウイリアムがぽつりと言った。


「ドレスって、誰かの夢を形にするものだろ? なら、作った私たち自身が“夢のステージ”を作ろうよ」


つまり、自分たちでドレスショーを開いて、製糸工場の力と乙女のセンスを世に見せつけようって作戦。


「……エリーゼも歩くんだよ」


「……そこよ、問題は!」


でも、少女たちの「やろうよ!」「絶対楽しいよ!」の押しに負けて、エリーゼもついに覚悟を決めた。


 


■2 ドレスも少女も準備万端!


「ミナ、ラインストーンの位置ズレてる!」


「わーごめん! カティア姐さん、急ぎアイロン!」


ファクトリーの作業場は、すっかりステージ裏の控室と化していた。


特に、エリーゼのドレスは特別。


白地に薄いラベンダー色を重ねた生地。胸元には星のようなビジュー、腰にはシルクの大きなリボン。まるで夜空に咲く一輪の花。


「エリーゼさま、ほんとに王子さまのお隣が似合う!」


「だ、だから緊張するってばぁ!」


みんなの視線に頬を赤くしながらも、エリーゼは鏡の中の自分をまっすぐ見た。


(……大丈夫。これは、私たちみんなの夢)


 


■3 ついにショー当日!


「さあ、皆さまご注目ください! ファクトリー発、ドレスの新風をお届けします!」


王都中央広場には、貴族令嬢から町の女の子まで、ずらりと観客が並んでいた。


ステージに最初に現れたのは、ミナ。


水色のドレスをふわりと揺らして、華やかにターン。


「わぁ、綺麗!」


「ほんとに、あの工場で作ってるの!?」


続いて、ルネ、サラ、カティア……個性あふれるドレスたちが、まるで物語のページのように登場した。


 


■4 エリーゼ、きらきら登場!


「続いて──ファクトリーの看板モデルにして、わが公爵家のご令嬢! エリーゼ・バンダーム=グランフォード様!」


スポットライトが集まり、観客が一斉に息をのんだ。


エリーゼがゆっくりとステージを歩き出す。その足取りは緊張でややぎこちない。でも、笑顔はまっすぐだった。


ひらり、ひらり──


ラベンダー色のドレスが風に舞うたび、会場から「わあっ」と声が漏れる。


すると……


「エリーゼ、手を」


「ウイリアムっ……!」


舞台袖から現れたウイリアムが、スッと彼女の手を取った。


「ふたりで、主役を演じよう」


そのままステージ中央へ。観客たちはもう、目がハートになっていた。


 


■5 恋とドレスの魔法


ふたりが踊るようにステージを回ると、観客から歓声がわき起こった。


「まるで、おとぎ話みたい!」


「ふたりのドレス、リンクしてるの素敵すぎる!」


ラストは、ウイリアムがそっとエリーゼの頬にキス。


「な、なにするのよ!」


「舞踏会でも、きらり事件でも……全部、君がいたからなんだ。君の笑顔が、一番の宝物だよ」


「……うぅ、言い方がずるいわよぉ……」


だけどその照れ顔すら、きらきらドレスに負けないほど、輝いていた。


 


■6 そして、未来へ


ショーの後日。


「もう、注文が止まりません! 王都の舞踏会用から、地方の学校の制服用まで!」


「ステージ用ドレス、再販希望だって!」


ファクトリーはますます大忙し。だけど少女たちの顔は、みんな誇らしげだった。


そしてその中心には、今日も手を取り合って笑うふたりの姿。


「ねぇ、ウイリアム。次のショーは?」


「世界展開を目指そうか。王都だけじゃ、もったいないからね。君とこの夢は──」


「まだまだ、これからだもんね!」


春風にふわりと舞う、ラベンダーのドレス。


それはきっと、未来の夢へのパレードの始まり。


 


──ドレスと恋は、世界をきらきらにする。

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