第5話 エリーゼ、発明品コンテストにチャレンジする

◆冷却装置改良と発明品コンテスト編!◆

【エリーゼ視点】


「発明品コンテスト、ですって!?」


その言葉を聞いた瞬間、私は工具箱をひっくり返しそうになった。


坑道アイスの冷却装置──“アイス・マイスター・プロトタイプ零式(仮)”を改良していた真っ最中だった私たちのもとに、王都から一通の招待状が届いたのだ。


『王都工業ギルド主催・若き技術者の祭典! 第十回 発明品コンテスト 開催決定!』


「なんかすごいじゃん、これ」

「え、全国から集まるってこと? プロも来るんじゃ……」

「というか俺たちまだ素人みたいなもんだけど……」


ローレンスとルナとガスパルが、ちょっと緊張した顔で肩を寄せ合ってる。


でも──私は、にっこり笑った。


「よし、出ましょう! この坑道アイス装置を、王都に見せてあげましょう!」


「ええぇぇっ!?」

「ちょ、心の準備が……!」

「そんな元気な声で言うことか!?」


「こういうのは勢いですっ!」


私はテーブルの上の図面をぺちんと叩いた。


「冷却装置はもう完成してる。あとは見た目をちょっと良くして、持ち運びしやすくして、ネーミングもかっこよくすれば完璧です!」


「そこが一番ハードル高くない!?」

「いやまあ……やるならやるか」

「せっかくだし、アイス配ったら人気出そう」


やった、乗ってきた!


◆ ◆ ◆


「ここが、会場かあ……」


王都中央広場にある特設ステージ。その周りにはすでにたくさんの出展ブースが立ち並び、煙や蒸気、キラキラ光る魔道具があちこちでうなっている。


「やば、なんか……ガチ勢だ……」

「うわ、あのブース、空飛んでる」

「隣の人、指先から火出してるよ!?」


技術オタクの祭典とは聞いてたけど、ここまでとは……。


でも、私たちは胸を張って歩いた。自作の冷却装置を大事に抱えながら。


「ほら、エリーゼ。新しい名前、ちゃんと発表しないと」


「任せてください!」


私は、完成した装置の前で、マイクを握った。


「皆さま! 本日お届けするのは、鉱山労働者のために開発された、携帯式アイス製造装置──その名も!」


深呼吸。


「“清涼機(クールフロー)・Type-E”!!」


「普通になったー!!」

「いや逆に良い!!」

「エリーゼの“E”入ってるの地味にアピール上手いよね」


冷却装置は、魔石プレートを内蔵した金属筒に、天然冷気を模した風路を通し、熱伝導率の高い銅板で急冷するという仕組み。組立式でリュックにも入るサイズに改良済み!


「……って、これほんとに動くのか?」


ルナが心配そうに言うけど──


「もちろん! さあ、試運転いくよっ!」


私はスイッチを入れ、材料を入れたカップをセット。カチッという音とともに──冷気がしゅぅぅっと走った。


「……わ、ちゃんと冷えてる!」

「凍ってきた! これ、すごいぞ!」


観客たちもざわざわと集まり出す。


「何あれ、スイーツ作ってるの?」

「アイス!? こんな場で!?」

「鉱山って言ってたぞ。……鉱山のアイス!? 新しすぎる!!」


「できましたーっ!」


私は手袋をはずして、ひとつめのカップを高く掲げた。


「名物“ミントチョコ・エリーゼ”、試食どうぞっ!」


「いただきまーす!」


ひとりの子どもがぱくりと食べて──ぱっと目を輝かせた。


「……おいしっ!!」


それが合図だったように、あっという間に人だかりができて、冷却装置のまわりには行列ができてしまった!


「……やばい、製品よりアイスのほうが人気だ」

「でもこれ、立派な“成果”だよね」


みんな、口々に言ってくれる。


そう、私たちが作ったのは、ただの冷却装置じゃない──“働く人の笑顔を冷やしてくれる魔法の箱”なんだ。


◆ ◆ ◆


発表後、審査員がゆっくりと装置を覗き込んだ。


「……なるほど。技術的にはシンプルだが、組み立てやすさ、応用性、そして……何より“人のためにある”という点で、非常に高く評価できる」


「ありがとうございますっ!」


「この冷却装置、“現場に必要とされる発明品”というコンセプトにぴったりだ。君たちには──」


審査員が、封筒を手渡した。


「特別賞、“希望の芽賞”を贈る!」


「やったーー!!」


ガッツポーズを決めるローレンス、涙ぐむルナ、目を輝かせて握手を求めるガスパル。


そして私は、みんなの真ん中で大きく手を振った。


「これが……みんなで作った、私たちのはじまりだね!」


きっとこれからも、いろんなことに挑戦していくと思う。でも──今日のこの笑顔と、ひんやり甘いアイスの味は、ずっとずっと忘れない。


◆受賞作品紹介

名称:清涼機(クールフロー)・Type-E

用途:携帯式冷却装置(食品冷却、医療資材保存など)

応用:坑道アイス製造、小規模屋台、野外作業支援など

評価:「シンプルかつ人間味のある発明」として高評価

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る