第7章:残された光

 カグヤが去った後――

 タケノリとサトは、深い悲しみに暮れた。

 スメラギ議長もまた、得難い知との交流を失ったことに、胸を痛めていた。


 だが、カグヤは去り際に、タケノリに小さな結晶体を残していた。

 それは、地球の科学では解明できない、

 生命活動を恒久的に維持する可能性を秘めたサンプル――

 いわば、現代版の「不老不死の薬」であった。


 スメラギ議長は、この結晶体が安易に利用されることを強く危惧した。

 同時に、カグヤとの思い出を、そっと封印するかのように決意する。


 そして、日本で最も高く、かつてカグヤが「不二の山」と呼んだ場所――

 すなわち、現代の富士山にある研究施設の最深部にて、

 その結晶体を厳重に封印することを決めた。


 やがて、その出来事は人々の間で伝説となり、

 富士の山にまつわる不可思議な現象の原因として語り継がれていった。


 物語は静かに幕を閉じる。


 この世のものはすべて移ろいゆく――

 そんな無常観と、

 異界との邂逅が人々に深い影響を残すことへの示唆を残して。


 カグヤが残した「光」は、

 果たして人類に未来への希望をもたらすのか。

 あるいは、新たな災厄の種となるのか。


 それは、残された者たちが、

 これからどう生きるかに委ねられているのだった。



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