第3章:世俗の試練

 カグヤの噂は、ついに現代社会を動かす権力者たちの耳にも届いた。


 シンジ、アキラ、リュウジ、マサヒロ、イサム――

 五人の有力者たちは、それぞれの思惑と手法でカグヤに近づき、求婚を申し出る。


 だが、カグヤは彼らの本質を、瞬時に見抜いた。

 彼らが求めるのは、愛ではなく――

 富、名声、力への飽くなき欲望。


 カグヤは、彼らに「試練」を課す。

 それは、地球の科学では到底なし得ない「難題」であった。


 シンジには、深宇宙からのみ採取可能な希少元素の入手。


 アキラには、量子コンピュータが生み出した、未だ誰も理解できない「究極の芸術」の解読。


 リュウジには、伝説上の巨大生物「龍」の遺伝子サンプルの入手。


 マサヒロには、世界中の指導者を納得させる、完璧な「平和協定」の締結。


 イサムには、ツバメの細胞から抽出される、不老不死の鍵となる物質の特定。


 五人の候補者たちは、それぞれの力や財力、知識を総動員して難題に挑む。

 だが、誰一人として成功には至らなかった。


 偽の情報に踊らされ、危険な目に遭い、己の限界を思い知らされる日々。


 それは、カグヤが突きつけた「警告」だった。

 ――世俗的な欲望や権力が、いかに空しく、愚かしいものであるかを思い知らせるための。



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