第十三章:静かな暮らしと小さな疑念

翌朝、ヘンゼルとグレーテルは

またまた美味しそうな匂いにつられ目覚めました。


二人はしばらくの間、ここはどこだっけ?と、きょろきょろしていましたが、

やがて、ああ、あの“魔女の家”にたどり着いたんだ、と思い出しました。


しかし、暖かな寝床や穏やかな室内、

昨夜のシィラから受けたもてなしを思い出し、戸惑っていました。




「二人とも目が覚めたのね。朝ごはんが出来たわ。

 さぁ、温かいうちにお食べなさいな。」


シィラは、二人にテーブルに着くよう促し、

温かい野菜のスープと、ふわふわのパンを差し出しました。


「いただきます…」

口に入れると、やさしい味がふたりの身体にじんわり染みわたり、

ヘンゼルもグレーテルも思わず顔を見合わせました。


「お味はどうかしら?このスープは体を元気にする草が沢山入っているのよ。

 このスープ、体にはとってもいいけど……

 ちょっと、眠くなっちゃうかも。ふふ。」

と、シィラはいたずらっぽく笑いながら話しました。


「二人とも食べ終わったら、またベッドで体を休めて、早く元気になってね」


にこやかに話すシィラに、ヘンゼルとグレーテルは

「はい・・・」

と返しながら、

シィラが何故こんなに良くしてくれるのか?と困惑していました。


朝食が終わり、

シィラに促されて並んでベッドに横になったヘンゼルとグレーテルは

小声で話し合いました。


「ねぇ、お兄ちゃん、あの人が悪い魔女なの?」

「・・・分からない…」

「でも…なんで、こんなに親切にしてくれるの?

 さっきのスープ、美味しかったなぁ…」

「それは…もしかして、僕たちを太らせて…食べるつもりだから…かも…」

「えっ!!」

グレーテルは小さな悲鳴を上げました。

「で、でも!あの人、そんな悪い人に思えないよ!」


ヘンゼルは少しの間黙っていましたが

「僕には…分からない…

 もし魔女だったとしても、今の僕たちじゃ敵わない。

 だったら……今は食べて、体力をつけておこう。

 その方が、いざというときに逃げやすいよ。

 それまで、しばらくの間、様子を見よう…」

「分かった」

不安と安心のはざまで揺れながら、二人はそっと目を閉じるのでした。




二人が眠った後、シィラは静かにベッドのそばに腰を下ろし、

二人の寝顔を見つめながら、ぽつりとつぶやきました。


「あのスープ……飲んだあとに、しっかり眠ることで、

 傷んだ体も心も、少しずつ整っていくのよね。

 眠ってくれて、本当によかったわ」


微笑みながら、シィラはそっと二人の額に手をかざしました。

その手からは穏やかな光が広がり、二人の生きる力を静かに満たして行くのでした。





続く~第十四章へ~





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