第30話 シウファの村
「ここがこの村のメインストリートです」
もしこの世界に車があれば二台が十分すれ違えるほどの幅があり、両側に様々な商店や酒場、宿屋、病院などが並んでいた。
人通りも多く賑わっている。
元いた世界の科学と、こちらの世界の魔術との進化の違い。それに人間と魔族、種属としての大差はあれど、日常生活の営みについてはあまり差がないように感じがした。
畑を耕す者。家畜を育てる者。物を作る者。商品を運ぶ者。それらを売る者。物ではなくサービスを提供する者。そして、それらを消費する者。
決して魔族は普段から闘いばかりする荒々しい者達ではなく、共に強力し合いながら生きている。
シウファを昔から知る者は久々の再会を喜び、初めて会う俺にも気さくで、何故か俺達が婚約しているとの噂が広がっていて、会う者達が干し肉やパン、酒に、野菜や花などを「祝いだ持ってけ」と言って持たされた。
贈り物で両手いっぱいになった俺達は、村内の散策をそこそこに帰宅を余儀なくされた。
「お母さんただいま」
「ただいま戻りました」
「あらあら。お帰りなさい。それにしても二人とも凄い荷物ね」
テーブルの上に戦利品?を並べる。
「あらあら。こんなに買ってきてどうしたの」
「買ったんじゃないの。村の皆んなが私が婚約者を連れて帰ってきたと思い込んで、違うって言っても『祝いだ持ってけ』ってきかないのよ」
「あらあら。大変。それなら皆さんに何かお返ししなきゃね」
「いやいや。私達婚約してないし・・・・・・」
シウファは複雑な数式を解く時のように眉間に皺を寄せる。
ヴェリダだは「そうだわ」っとパンッと手を叩き、「お留守番お願いね」と言って出ていってしまった。
「も、申し訳御座いましぇん。マヒトしゃま」
緊張の糸が切れたのか、シウファは何度も何度も頭を下げ続ける。
「シウファ。落ち着いて。こんなところ誰かに見られたらどうするの」
それでも頭を下げ続けるシウファを落ち着かせようと、俺はシウファの背中をさすった。
「大丈夫だよ。落ち着いて。皆んな楽しそうな顔をしてたじゃないか」
「・・・・・・」
「シウファが気に病むことはないよ」
今度は頭を撫でる。
「・・・・・・」
「大きな戦争の後、魔王がいなくなっても生活を続けて行かなければならない。下を向いてばかりじゃいられない。だから皆んな上を向くきっかけが欲しいんだ。そこにシウファが帰って来た。皆んなそれだけで嬉しいんだと思うよ」
「で、でも、婚約なんて・・・・・・」
「大丈夫。明日にでも二人で誤解を解きに行こう。ちゃんと話せば皆んなわかってくれるって」
シウファはコクンと小さく頷いた。
その頭を優しくポンポンと叩いた。
「「こら!マヒト!」」
「姉ちゃんを」
「姉様を」
「「イジメるな!」」
俺の背中に衝撃が走り、つんのめって床に倒れ伏しる。
顔を上げるとノクスとネクタがシウファを守るように両手を広げながら、俺を睨みつけている。
「こら!二人とも何してるの!」
「マヒトが姉ちゃんを叩いてたから、俺達がやっつけたんだ」ノクスが答える。
「違うの。マヒトはお姉ちゃんをなぐさめてくれていたのよ」
「本当に」ネクタが心配そうにシウファに聞く。
「本当よ。だから二人ともマヒトにちゃんと謝りなさい」
二人は「「ごめんなさい」」とちょこんと頭を下げた。
「お姉ちゃんを守ろうとしたんだもんな」
俺は二人の頭をシウファの時と同じように、ポンポンと優しく叩いた。
「それは素晴らしいことだ。でも、これからはもう少しまわりを見てから行動しような。感情のままに行動するとケガするぞ」
「「わかった」」
「じゃあ。蹴られたお返しとして、この荷物を片付けるのを手伝ってもらおうかな」
俺達は大量のお祝いの品を片付けた。
「「こんなに買ってきてどうするの。何かのお祝い」」ノクスとネクタが不思議そうに聞いてくる。
「「さぁ知らない」」と俺とシウファは答えた。
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