第18話 着替えがない!


「ううん」と俺は大きく伸びをする。


「おはよう御座いましゅマヒト様。御疲れだったのでしょう。よく御眠りで御座いましたよ」


ドア以外に窓ひとつ無いこの部屋では、今が果たして朝なのか、まだ夜なのかどうかはわからない。


「おはようシウファ。眠らなかったのかい」


「はい。わたしには睡眠は必要御座いましぇん。書類の整理などをしておりました」


「それはそれはお疲れ様。でもあまり無理はしないようにね」


「はい。ありがとう御座いましゅ。朝食になさいましゅか」


朝食ということは今は朝なのだろう。


「大丈夫。遠慮しておくよ。その代わりお茶を淹れてくれないかい」


「畏まりました。でも朝食は要らないとは、何処か具合でも悪いのでしゅか」


「以外と体調は良いよ。でも基本的に朝食は食べない主義なんだ」


シウファはそうですかと言って、温かいお茶を淹れてくれた。


それを飲みながらリラックスしていると、俺はある事に気づいて独りごちる。


「そういや俺、着替え持ってないや」


そんなに大きな声で言ったわけではないのに、シウファには聞こえたらしく。


「クローゼットの中に、御着替えを御用意しておりましゅ。御好きなモノに御着替え下しゃい」


「それはありがたい」


俺はクローゼットを開けた。


そして、俺は絶句する。


中世ヨーロッパの貴族が着るような服が並んでいる。


そう言えばクサールやキシヤナ。そして、あの巨漢のザロスでさえも王族に相応しい華美は衣装を纏っていた。


あの兄姉達はいい、顔立ちは俺の住む世界でいうところの西洋風。


それでいてイケメンと絶世の美女だ。


俺は高校の入学式の日に、見知らぬ女生徒に「中の上」と言われる程度であり、父親の顔は知らないが、どっから見ても西洋風ではなく、和風な顔立ちをしている。


こんな服が似合う訳がない。


「あのう。シウファさん」


「はい。何で御座いましゅか」


シウファは不思議そうに顔を傾ける。


「服はこれだけしかないのでしょうか?」


「何か御気に召されましぇんか」


「これらは流石に俺には似合わないと思うんだけど」


俺は適当に一着手に取り、体の前で合わせてみせた。


「決してそんはことは御座いましぇん。きっと御似合いになられましゅよ」


「ありがとう。でも・・・・・・」


トントントントンとドアを四回ノックする音がし、シウファが「どうじょ」と応えると、アルトスが部屋に入ってきた。


アルトスは俺達を見て、「何をなさっていらっしゃるのですか」と、冷静に聞いてくる。


俺はここにある服に対して不満をアルトスにぶつける。


「そういうことで御座いますか」


「他に何かないかな」


アルトスはアゴに手をやり少し考える。


「そういえは、魔王リザマール様があちらの世界から持ち帰った服が何点か残っていると思われます」


「それだ!」

俺は思わず声を上げる。


「それではこれからリザマール様の御部屋に行ってみましょうか」


「やった。たのむよ」


俺は手にしていた中世ヨーロッパ風の衣装をクローゼットの中にしまう。


それを見てシウファは、「御似合いでしたのに、残念でしゅ」とほっぺたを膨らませた。


「それでは参りましょう」


「「了解」」と、俺のシウファはアルトスに敬礼をした。


「何ですか二人して・・・・・・」


アルトスを先頭に、父親といわれている魔王リザマールの部屋に向かった。

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