第16話 鎖された記憶:音響の残響、交錯する陰謀
新たな島に到着した「みらい」と遼は、そこで、これまでとは異なる状況に直面した。海岸線には、頑丈な石造りの砦が築かれ、武装した人々が見張りを立てている。彼らの表情は険しく、友好的な接触を試みようとする遼たちに、警戒の視線を向けている。
「艦長。この島の住民は、非常に警戒心が強いようです。友好的な意図を伝えても、なかなか受け入れてもらえません」
ユイの報告通り、島の人々は、見慣れない「みらい」と、そこから降り立った遼たちを、敵意を持って見ているようだ。彼らは、これまでに何度も魔獣に襲われてきたのだろうか。その警戒心の強さが、彼らの苦難の歴史を物語っている。
辛抱強く対話を試みる遼に対し、砦の中から、一人の威圧的な男が現れた。屈強な体格で、全身を革鎧で覆い、手には巨大な戦斧を持っている。
「貴様らは何者だ! この島に何の用がある!」
男の声は、低く、警戒心に満ちている。
遼は、これまでの経緯、魔獣と戦っていること、そして、女神の願いを伝えることを説明したが、男は容易には信じようとしなかった。
「女神だと? 貴様のような異邦人が、女神の名を騙るとは許せん! 我々は、自分たちの力でこの島を守ってきたのだ!」
男の言葉には、強い自負と、異邦人への不信感が滲み出ている。この島では、女神への信仰とは異なる、独自の価値観や歴史を持っているのかもしれない。
交渉は難航し、遼は、この島の人々との協力関係を築くには、時間が必要だと悟った。
その間、ユイは、この島の周辺海域を詳細に探査していた。そして、驚くべき事実を発見する。
「艦長。この島の地下深くに、巨大な空洞が存在することを確認しました。そして…その空洞の中心部から、極めて強力な魔力反応が感知されました。深海で遭遇した不定形の巨影に匹敵するほどの、強大なエネルギーです」
ユイの報告に、遼は警戒心を máxima に高めた。この島には、魔獣の巣窟どころではない、巨大な脅威が潜んでいるのかもしれない。
さらに、ユイは、その強力な魔力反応の周辺で、微弱ながらも、以前深海で感知した、地球の音響信号に酷似したパターンを、再び検出したという。
「艦長。今回の信号は、前回よりも僅かに強く、断続的ではありますが、より明確なパターンを認識できます。まるで…何かの記憶が、断片的に再生されているような…」
ユイの分析に、遼は背筋が凍るような感覚を覚えた。地球の音響信号。巨大な魔力。この二つの要素が、この島で交錯している意味とは?
その時、砦の中から、悲鳴のような叫び声が聞こえた。遼たちが駆けつけると、数人の島民が、地面に倒れ、苦悶の表情を浮かべている。彼らの体からは、黒い瘴気のようなものが立ち上っている。
「これは…!?」
「艦長! 周辺の魔力エネルギーが急激に不安定化しています! 地下空洞の巨大な魔力が、地上に漏れ出し始めたようです!」
ユイの警告と同時に、地面が激しく揺れ始めた。砦の一部が崩落し、島全体が不気味な魔力に包まれていく。
「ぐっ…! これは、ただの魔力漏出ではない…まるで、何かの意思を感じる…!」
遼は、身を蝕むような、強烈な悪意のようなものを感じた。
砦の奥から、先ほどの威圧的な男が、狂気に染まったような表情で現れた。彼の体からも、黒い瘴気が噴き出している。
「あ…あ…女神…女神は我らを見捨てた…! あの深淵の…悪夢が…!」
男は、意味不明な言葉を叫びながら、巨大な戦斧を振り上げた。その目は、完全に濁りきっている。
「艦長! 男は、強大な魔力に侵されています! 正気を失っているようです!」
ユイの分析通り、男は、地下空洞から漏れ出した強大な魔力に操られているようだ。
やむを得ず、遼は男を制圧し、他の苦しむ島民たちと共に、安全な場所へと避難させた。しかし、島全体を覆う不気味な魔力は、増していくばかりだ。
「艦長。このままでは、島全体が崩壊する危険性があります! 地下空洞の巨大な魔力を、何とかしなければ!」
ユイの焦った声が響く。
遼は、地下空洞の存在、強力な魔力、そして、地球の音響信号の残響。これらの要素が、一つの大きな謎として、彼の心の中で渦巻いていた。
その時、ユイが、再分析していた音響信号について、新たな発見を報告した。
「艦長! 音響信号のパターンを詳細に解析した結果、それは単なるランダムなノイズではありません! 断片的ではありますが…人間の声のような音が含まれています! そして…特定の単語が、繰り返し再生されているのです…『封印』…『記憶』…『鎖』…」
「封印…記憶…鎖…?」
遼は、そのキーワードに、強い衝撃を受けた。まるで、何かの重要な情報が、断片的に伝えようとしているようだ。
そして、その時、彼の脳裏に、深海で女神から送られた、断片的な映像が蘇ってきた。暗闇の中で、何かが鎖で繋がれ、苦悶しているような…そして、その周囲には、無数の光の粒子が漂っているような…
「まさか…あの深海の巨影は…何かに封印されている…? そして、その記憶が、この音響信号として、断片的に漏れ出ているのか…?」
遼の推測に、ユイも息を呑んだ。
「ありえます、艦長。そして、この島の地下空洞の巨大な魔力は…その封印を弱体化させようとしているのかもしれません!」
事態は、単なる魔獣との戦いというレベルを超え、この世界の根源に関わる、より深く、より危険な陰謀が潜んでいる可能性を示唆していた。
「艦長。島全体の魔力不安定化が進行しています! 時間がありません! 地下空洞の魔力の源を断つ必要があります!」
ユイの警告を受け、遼は決断した。この警戒心の強い島の人々との協力は難しいかもしれない。だが、このままでは、島全体が破滅してしまう。
「ユイ。地下空洞への侵入経路を探せ! 俺一人で、魔力の源を断ちに行く!」
「艦長! 単独行動は危険すぎます!」
「それでも、やらなければならない。このままでは、誰も助からない。そして…あの音響信号が示す『封印』と『記憶』の鎖を解き明かす手がかりが、そこにあるかもしれない」
遼は、決然とした表情で、地下空洞への侵入を決意した。彼の胸には、新たな謎と、それを解き明かさなければならないという強い使命感が燃え上がっていた。そして、その先に待ち受けるであろう、更なる巨大な脅威に、彼は一人、立ち向かおうとしていた。
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