第71話 王都とお披露目の誘い

《王都の屋敷にて》


 王都に到着したシリウスたちは、まずギルベルトの王都用の屋敷に向かう。


「おお、ここが王都でのお家なんだね!」とシリウスは感嘆の声を上げた。「でも、お迎えみたいなのがあるかと思ってドキドキしてたけど、ないんだね」


「ああ、やるべき時はあるが、今回はクラリスとお前だけだからな」とギルベルトが答える。


 クラリスはクスクスと笑いながら「いちいち対応させるのは無駄だって普段から言ってるものね」


「まあ実際、無駄としか思わんしな。だが初めての王都だ。いろいろクラリスに教えてもらうといい」


「任せてね、シリウス」とクラリスは笑顔で言う。


 屋敷に入りながら、ギルベルトの顔が真剣になる。


「シリウス、お前にもいくつか参加してもらうことになるだろう。もしかしたら嫌なこともあるかもしれんが……」


「大丈夫だよ。余程のことがない限りは」


「その余程のことが起きた時が心配なんだがな……」と苦笑するギルベルト。


「何があるかわからん。気をつけるんだぞ」


「うん!」と力強く返事をするシリウスだった。


《翌日・街中》


 翌日、シリウスとクラリスは外出。馬車に乗って街を回る。


「もっと王都ってゴミゴミしてるのかと想像してたよ。でも綺麗なんだね」


「ここは貴族が行き交うところだからね。清掃は行き届いているのよ。平民たちが行き交う場所は、うちの領と比べても……それなりかしらね」


「行かないほうがいい?」


「行かないわ。危ないしね」


「わかった」


「最初は服からかしらね? 少し滞在するし追加が必要でしょう」


「えっ? もしかして行く場所は決まってる?」


「当たり前よ。だってあなた、何があるかも知らないでしょ?」


「確かに! よろしくお願いします!」


「初めての王都での買い物ね。頑張るわよ!」


「ほどほどに……ね?」


 服屋、魔道具屋、本屋を回り、途中で食事をとりながら、一日中街を楽しむ二人。


 クラリスが見せる優雅な立ち振る舞いに、シリウスは「やっぱり母さんは王都でも様になってるな」と内心で感心していた。


 本屋では貴族子弟向けの礼儀作法や宮廷文化に関する書籍が多く、クラリスはその一冊を手に取りながら言う。


「こういうのも予習になるわよ。シリウスも嫌がらずに読んでおいてね」


「う、うん……努力します」


 ふとした瞬間に通り過ぎる他の貴族の視線に気づくこともあったが、シリウスはそれを気にせず、母と共に楽しむよう努めた。


《夕食・屋敷》


 屋敷に戻り、三人で食卓を囲む。シリウスが買い物の話を楽しそうに語る中、ギルベルトの表情が申し訳なさそうに曇る。


「シリウス、すまん。明日の夜、早速パーティーに呼ばれている」


「大丈夫だけど、何かあるの?」


「王家主催なんだ」


「そうなんだ。断れないってことなんだね」


「そういうことだ」


「そして、たぶん辛いことがありそうってことなんだね?」


「そうだ。まだお前には話していないが、10歳から王都にある学園に通うことが決定している」


「通わなければいけない理由があるの?」


「第二王子がお前と同じ年だ。だから側近候補として名は挙がっていた。お披露目に連れて行く予定だったが……」


「何かあったの?」


「第二王子の母親が魔力至上主義な方でな」


「ああ……魔力無しだから、呼ばれないどころか“来るな”的な感じ?」


「言葉を飾らずに言うと、そういうことだ」


「でも今回はどうして呼ばれることに? また“来るな”って言われそうだけど……」


「さすがに呼ばん訳にはいかん。王家が表立って公爵家を差別するのは問題だからな」


「以前も同じだと思うんだけど……今回は何かが違うの?」


「実は、前回は全部王妃様の独断で断っていた。流石に王もそれを看過できなかったらしい。詫びを、という話もあったが、特に要求はせず、“シリウスに干渉しない”ということで手打ちとなった」


「すごいね。でも、明日は魔力測定でもやるの?」


「流石にそこまで露骨なことはせんだろう。されたとて魔力はあるから、恥をかくのはあちらだが……」


「そっか、そういうことなら我慢するよ。反論して面倒になると大変だからね」


「遠慮しなくていいと言いたいが……すまんな」


「うん。大丈夫」


《その夜・シリウスの独白》


(絶対に嫌がらせされるやつじゃん。キレないでいられるかな? 家族がバカにされたら自信ないけど、魔力があるのがバレたらそれはそれで面倒そうだ……家族の事でもキレてしまえば、結局父さんに迷惑かけそう……よほどの事じゃない限り、我慢できるように覚悟を決めておこう)


《翌朝・準備》


 クラリスがシリウスを呼び止める。


「今日のパーティーの準備だから、その辺りの話をしておこうかしら。お出かけは無しね」


「はい」


「と言っても、特別にやることはないわ。挨拶だけしたら終わりでしょう。向こうも話したくないだろうし。だから、挨拶が終わったら知り合いに挨拶をしていく感じになると思うわ。……嫌がらせはないと思うけど、嫌味くらいはあるかもしれない」


「でもまあ、こうなったのは僕自身のせいだし……気にしないで」


「そうは言っても、あの時反対すればよかったと思う自分もいるのよ」


「ありがとう、母さん。父さんや母さんがいるから、たぶん大丈夫だよ」


「そう?」


「うん。だから今日は頑張る!」




----あとがき----


いつも読んでいただきありがとうございます。

少しプライベートが忙しくなってきたため、しばらくの間、更新が不定期になるかもしれません。

楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが、無理なく続けていくための調整とご理解いただければ幸いです。


これからもマイペースではありますが、しっかりと物語は進めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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