第1話 残滓の行き場と、“門”のひらき方
魔力の循環に慣れてきた頃だった。
相変わらず赤ん坊の体は思うようには動かないが、魔力だけはよく言うことを聞いてくれる。
心を静めて流れに集中すれば、温かく、なめらかに、全身を巡っていく。
そして巡るたびに――少しずつ“何か”が残されていく。
それが残滓。
魔力を磨いていく中で、不要になったもの。
悪いものではない。むしろ、あって当然のものだ。
ただ、量が増えてくると、ちょっと気になる。
最初はうっすらと体の外に漂っていたそれが、
最近は常に皮膚の周囲を覆うように滞留していた。
まるで、膜のように。
(……これ、周りに影響出るんじゃないか?)
魔力に敏感な誰かに見られたらバレるかもしれないし、
残滓といえど、魔力の一部だ。
他の何かと反応してしまう可能性だってある。
(処理……しなきゃ、ダメだよな)
ただ、捨てるように排出するのはどこか落ち着かなかった。
それなりの時間をかけて磨いてきた魔力の“副産物”だ。
粗雑に扱えば、魔力そのものにも何らかの影響がある気がした。
そこで俺は、循環の流れの中で残滓が自然に集まるような“経路”を考えた。
そういえば――
チャクラとか、気功とか、そういうのってヘソのあたりに“中心”があるみたいな話をよく見た気がする。
魔力も、そういう“根っこ”があるとしたら……
このあたりに集まるように流せば、うまくいくかもしれない。
意識的に集めようとすると逆に乱れる。
だから、あくまで自然にそこに“行き着くように”導く。
導線を整え、数日かけて微調整を続けた。
その結果、魔力の循環はより滑らかになり、
残滓は意図せず、静かにひとところへ集まりはじめた。
---
ふと気づけば、俺の魔力は以前とは明らかに違っていた。
重くもなく、軽すぎもせず――
ただ、芯のある滑らかさを帯びて、
まるで粘度の高い光のように、体内を静かに巡っていた。
(……質が、変わった?)
魔力の流れにずっと意識を向けていたからこそ、違いがわかる。
長い時間をかけて磨き続けた結果――
魔力そのものが、一段階“純粋”になったように感じた。
そしてその時だった。
体の底、ヘソの下あたり。
魔力の循環の末端として、自然と残滓が集まっていたその場所で――
何かと“繋がった”ような感覚が走った。
音もなければ、光もない。
でも確かに、内側から外へ向かって、何かが“通じた”とわかった。
押し出すわけでも、力を込めたわけでもない。
集まりきった“不要なもの”が、
ただ自然に、穏やかに、どこかへ流れていった。
その先に何があるのかはわからない。
けれど、そこには明らかに“空間の違い”があった。
力まず、逆らわず。
流れが通ったことで、残滓はすっと消えていった。
気づけば、周囲に漂っていた濁りは跡形もなく消えていた。
(……なんだこれ?)
説明できない。けれど確かに“何か”があった。
魔力の質も巡りも乱れていない。むしろ、以前より軽くなっている気さえする。
(……まあ、残滓がなくなったならいいか)
深く考えても仕方がない。
今はまだ言葉も喋れない赤ん坊なのだ。
できることは、今日も静かに、魔力を巡らせるだけ。
呼吸のように、魔力は体内を流れ続けている。
ただその流れのどこかに、“外”へと通じる場所が生まれただけ。
それが何なのかは、まだわからない。
けれど、いつかこの“繋がり”が――
力を解き放つ“門”になるような気がしていた。
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