第8話 終戦

 戦場で人は死ぬ。

 当たり前のことだ。

 だが、俺とあいつだけは例外だと——いつからか、思い込んでいた。

「……さま……グレンさま!」

 ティミ―の大声で、グレンは我に返った。

「う、うしろの丘からっ……!」

 敵の重騎馬が丘を降りてくる。

「やっと出たか……」

つぶやき、黒馬の手綱を軽く引く。丘までたどり着くにはそれだけで十分だった。

「敵軍の横腹に突撃し続け、呼吸口を開け続けよ。ここは任せたぞ!」

「「「はっ」」」

 下士官がそろって頷いた。これからグレンがすることは、すでに伝えてある。切り札を丘まで届けるのは、同じく毒への耐性が高いグレンしかできない。

 これは賭けだった。

 グレンは領主と、あの少年の粘りに全てを賭けたのだ。

矢のように駆ける馬の背で、グレンは改めて、ティミ―に預けている風向計を見た。鉄製の持ち手に、木製の回転する先端部分が付いている。

「敵は主力の重騎馬を隠し、決定打として使ってきます。その場所は、戦場に最も近い丘裏です。私が敵ならそうします」

「必ず風向きを確認してください」

 グラスの言葉が頭に響いた。

 丘のふもとにたどり着く。

 彼の読み通り——風は丘上に向かって吹いている。ひとまずグレンは胸をなでおろした。

 ザレラの風は規則的だ。

これで、少なくとも味方ごと毒殺する危険はほとんど無くなった。

「グレンさま」

 ティミ―に渡されたのは〝例の物〟——禍々しい紫の液体が詰まった毒瓶だ。

「あ、危ないですから、割らないように気をつけてくださいね……」

「ああ、任せてくれ」

 グレンは黒馬の腹を軽く蹴る。敵軍はまだ丘の中腹にいた。

 重量がある分、馬速が無いのだ。

 しかし、その分破壊力は絶大。まともに衝突されれば、チェリオ軍は即座に大破する。

「まだ……まだだ……まだ投げるな……」

 瓶を握り、丘を駆けあがりつつ、グレンは敵騎馬との間合いをはかった。

 残り二百M……

 そのとき、抑えていたグレンの後悔が溢れだした。

「俺たちがどっちも紫将になったら、そん時は一緒に、最高の戦をしような!」

「バカか。紫将は各領地に均等に配置されるものだ。共に戦う機会などあるわけがないだろう」

 下っ端の黒将になったばかりのころ。グレンもセリウスも若く、傲慢で、世界が自らの手のなかにあるような気がしていた。

 残り百M……

「うるせぇ! 分かったなセリウス。約束だぞ!」

「フン。お前が紫将になれるとは到底思えんがな」

 その後グレンは破竹の勢いで昇進し、セリウスは領主のもとで生きることを選んだ。

 そしてセリウスは死んだ。

 敵兵の輝く銀の甲冑、その尖った胸部に描かれた、三点の星を象った模様が見える。

——俺が紫将でさえなければ、あの時、お前を助けに行けた。戦に負けても、領地を失ったとしても、お前だけは喪わずに済んだ。

 そう思って、ハッとする。

 そう伝えれば、おそらく奴はこう答える。

「勝ちを諦めるお前……か。それはもはや別人だな」

 勝利への執念。それがグレンの誇りだった。

 残り五十M……

「今」

 グレンはスナップを利かせて毒瓶を投げ、同時に黒馬を方向転換させ、一息に丘を下った。

 後ろでは、敵兵が耐えがたい苦痛に苛まれながら、凄惨な最期を迎えているだろう。

 今後百年、毒に侵されたこの丘は、一切の生命が生きられぬ場所となるだろう。

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

 ティミ―が震えながら小さく呟いている。

 しかしグレンは省みず、黒馬にさらなる加速を促した。

 大勢の命を握り潰し、勝利というただ唯一の目的を達さんとする救いのない営み。

 それが戦争なのだ。

 一度ティミ―を戦場から離れた木の繁みに隠し、彼は本陣に戻って指揮を再開した。




 十分に防御設備が整っているとはいえない山城で、ダッチャとダイルは互いを守りつつ、登り来る幽鬼のようなギギルル兵と交戦していた。

ダッチャは弓を構えるが、矢を射る直前になって、身体の芯が震え——だらりと腕の力を抜いてしまう。

それが何度も続いた。焦るが、どうしても矢を放てない。

「だめだべ……」

 ダッチャは涙声だ。彼もまた、戦場に覚悟を試されていた。

「しっかりしやがれ!」

 下から迫る矢と槍を大盾で防ぎつつ、ダイルが喝を飛ばした。

「とりあえず射っとけ。当たらなくていいからよ!」

 それでもダッチャの矢は、震えるばかりで飛び立とうとしない。

 ——射れば必ず当たる。だからこそ怖い……。

 自分の矢が心臓に突き刺さり、苦悶の表情で胸を掻きむしる敵兵を見たい人などいるのだろうか?

 しかし山城の高台で、横一列に並んだ射手達は、むしろ進んでその作業をこなしているように見えた。

「見ていろ」

 不意に、動き回るダイルの盾の影から、弓兵が現れた。

 初日に弓を作っていた、寡黙な先輩射手だった。

 彼がひょいと放った矢は、あやまたず、山城を征服しようと岩肌を掴んだ敵兵の、まさにその手の甲を穿った。その兵が悲鳴ごと転がり落ちたので、下にいた敵兵が巻き添えをくらった。

その敵兵は落下による重大な怪我を負ったようだが、死んではいない。そう、死んではいなかった。

 ダッチャは先輩をちらと見た。

「命を奪うだけが、我々の役割ではない」

 その横顔はそう言っている。

「やってやる……。やってやるだ!」

 ダッチャは満杯の矢筒から、素早く矢をぬきとり、弓につがえた。もう震えなかった。

「もう少し休んでても良かったんだぜ?」

 ダイルが嬉しそうに言ったが、実のところ軽口をたたく余裕はなかった。

 押しとどめきれない敵が高台に充満し、居並ぶ弓兵を脅かし始めたのだ。

「チィッ!」

 ダイルら歩兵が応戦するも、弓兵の牽制が弱まったことで、登ってくる敵がどんどん増えてゆく。

 山城が敵に制圧されるのは時間の問題だと思われた。




 山城の奥の暗がりで、レジーナ隊はグラスの出撃命令を今か今かと待っていた。

 一人で飛び出そうとして暴れるアウロラを、レジーナが羽交い絞めにして押さえつけている。

「待機だと言っているだろう!」

 レジーナが叱っても、アウロラは子供のように暴れるのをやめない。

「あたしは……強いからいいの。でも……あいつらは、弱いから……。あたしがいなきゃだめなの……!」

 かつてないほど激したアウロラの瞳に、レジーナは心打たれた。

 ——気持ちは分かる。痛いほどに。

 今も、仲間たちが敵兵の波に囲まれて戦い、傷ついている。

 ——しかし、それでも。

 レジーナは拘束をゆるめ、アウロラの肩を掴んで言った。

「辛いのがお前だけだと思うな」

「!」

 アウロラはびくりとして、周りを見回した。

 レジーナ隊の兵士は、皆一様に苦悶の表情を浮かべている。

 アウロラはぎりぎりと歯を食いしばり、ぺたんと座り込んだ。

 レジーナはため息をつき、この戦場で最も死んでほしくない人のことを思った。




「ぁぁぁ……」

 五年前、ザレラ北部のひどい戦場で、バラバラになった隊を集めるべく、敵に荒らされた集落群を駆けまわっていたとき。

 グラスは声をきいた。女の声だ。

 壊れた民家、そのボロボロの戸口から、かすれた慟哭の声が……。

 グラスは家に近付いた。

「ああああああぁぁぁぁァァァ……」

 むせかえる血の匂い、腐乱した死体が三つ。

 そのうちの二つ——ひどく損傷し、体の起伏からかろうじて男女と分かる——の頭をかき抱いて、美しい長髪の女性が泣いていた。彼女の手は赤く染まっている。

 壁にもたれて、腹部から血を流したもう一つの死体。彼は星の模様が入った甲冑を着ていた。

 何度直面しても見慣れない、ありふれた不幸。

 ——あの男女(おそらく彼女の肉親)は……ギギルル兵の襲撃から逃げ遅れたのでしょう。驚くべきは——ろくに訓練も受けていないであろう彼女が、ギギルル兵を返り討ちにしたこと。もし、彼女が正規の訓練をうければ……。

「誰だッ!」

 グラスの足音を聞きつけたのか、女性が叫んで調理用のナイフを持って、死体を守るように立ちあがり、彼に襲いかかった。

 グラスはその突きをいなして、武器を奪い、戸外に放り投げ、両手を広げて害意が無いとアピールした。

「私はグラス。ザレラ領守護〝グレン隊〟の将校です。あなたの敵ではありません」

「……」

 うろんな目で、女性はグラスを見たが、もう暴れなかった。

 死体を庭に埋めた。女性はレジーナと名乗った。生きる目的が無いと言う彼女に、グラスは入隊を勧めた。

「グレン隊は良いところです。あなたの心の傷が、隊員としての日々の中で癒えることを願っています」




 グラスは弓兵が並ぶ高台の、さらに一段高い場所にいた。そこからでも問題なく彼の矢は敵に届いた。そして、そこは戦場の様子がよく見えた。

 高台に敵が氾濫し、山城の際に少数の味方が押し込められている。

 十分ですね、とグラスは思った。狩場は完成して、後は狩人を放つだけだった。彼は側の岩に置いていた、赤い旗を軽く振った。

 とたんに山城の奥から、レジーナと彼女の直下兵が現れた。開戦前、グラスはレジーナに、〝効率的に討つため敵を高台にためる〟策を提案した。彼女はしぶしぶ納得したが、押しに押される味方を見殺しにするのは、さぞストレスがたまったことだろう。

「覚悟しろ、貴様ら」

 レジーナの長槍をくらったギギルル兵が、二十Ⅿは吹っ飛んで高台から落ちていった。

「ダグ、ザン、ライ、クロ。それぞれ二百を率いて扇状展開。敵兵を一匹残らず蹂躙せよ」

「「「「イエス、クイーン!!」」」」

 レジーナの暴威で前線があがる。敵は恐怖におののく。女王の長槍を恐れて、自分から飛び降りる者までいた。

 ——もういいでしょう。恐怖は植え付けました。

 グラスは青の旗をあげた。すると眼下のレジーナがぴたりと止まり、グラスを恨めしげに仰ぎ見て、山城の奥の暗がりへと退却した。

 ——狩人にも休息が必要です。

 戦力のとぼしい守城戦で、こちらから積極的に敵を削れるのは大きい。故に、レジーナの率いる精鋭部隊を温存し、効果的に使う必要があった。

 ——でなければ半刻も持ちません。

グラスが再び矢をつがえたとき、彼の頬を鋭い矢がかすめた。彼の目はすぐに脅威の元を捉えた。

 無精ひげにまみれた、長髪長躯の仙人然とした武将が、すでに次の矢をつがえてこちらを狙っている。甲冑を着ていないのは、その必要がないからだ。

 ——出ましたね。〝天弓〟バベル。

 バベルはベガの副官であり、ギギルル軍の最高級弓兵でもある難敵だ。

 敵陣最後尾、四百Ⅿは離れた遥か下。味方の精鋭弓兵の矢すら届かない場所から、彼は悠々とグラスの命を狙っている。

「まったく……。ヒリついてきましたね」

 グラスは口の端をつり上げた。

 生命を弓に捧げてきた一対の達人。彼らが同時に放った矢は、空中で衝突して眼下の戦場に落ちた。

 二人は直感した。

 敵は寸分違わず、互いの急所を撃ち抜く腕を持っている、と。

——まさか〝速さ〟の勝負になるとは!

 精度を損なわないギリギリの速さで、矢をつがえ、放つ。

遠く離れた両将の動きは、鏡写しのようにぴたりと一致した。

 何本もの矢が空中で衝突して、落ちた。得も言われぬ高揚感がグラスを満たした。おそらくバベルも、同じ感覚を味わっていると彼は確信した。

 先に矢が尽きたのはバベルだった。矢筒に手を伸ばした仙人は、その瞬間に死を悟ったが、グラスは矢を放たず、尽きかけていた矢を補充した。

 ——我々は軍人である前に、求道者でしょう?

 バベルは驚いたように目を見開き、矢を補充した。

「感謝する」

 口の動きを見ずとも、彼がそう言ったのが分かった。

「私の誇りを守っただけですよ」

 衝突の頻度がさらに増した。

 徐々に衝突地点が下がっていった。

 バベルは最期まで精度を落とさなかった。

 矢が胸に突き立ったその瞬間さえ、彼の指先は肉が食い込むほど強く矢筈をつまんでいた。

バベルが斃れると同時に、眼下の兵が歓声をあげた。砲戦じみた両将の矢戦を、兵たちは固唾を飲んで見守っていたのだった。

「レジーナ!」

 グラスが合図を送るより早く、レジーナの部隊が現れ、一気呵成に敵を蹂躙した。両軍の士気の差が開いたこの瞬間を、レジーナが見逃すはずはなかった。

 レジーナ隊はそのままの勢いで高台から飛び出し、急斜面を駆け降り、将のいなくなった敵本陣を急襲した。

 指揮系統が麻痺した軍隊ほど脆いものはない。一兵、また一兵と敵が逃げ出し、ついに巨大な濁流となって敗走を始めた。

「こちらはなんとかなりそうですよ」

 グラスは額の汗をぬぐい、今も死線にいるであろう紫将に向けてつぶやいた。

 



「全騎兵ついて来い。領主を救出する」

 本陣に戻ったグレンは、この戦争における最後の突撃を敢行した。

「グレンが来るぞ! ゼリを出せ! 前線を固めろッ!」 

 ビゴットとラボールを相手取りながら、ベガは唾を飛ばして指示を出した。

 しかしゼリ隊がグレンの足止めをしようとした瞬間、グレンのすぐ後ろにいた下士官がいくらかの兵を率いて本流から分離し、真っ向から衝突したので、彼らは本来の目的を果たせなかった。

「数は減ったぞ。——盾兵! 中で圧殺しろ!」

 ベガがビゴットの杖を薙ぎ払いつつ叫んだ。

 しかし隊の連携が弱い〝継ぎ目〟を縫って、グレンは矢のように進軍してくる。

「遅い」

 防壁が決壊した。グレンの姿が、ベガの目にもはっきりと見えるほど迫ってくる。

「集まれ、ギギルル兵! こいつさえ殺せばッ……!」

 焦ったベガの大振りを、ラボールが何とか受け止めた。しかし度重なる衝撃に耐えかねて、槍が根元から折れてしまう。先刻からビゴットは肩で息をしている。近づいたとはいえ、まだグレンは来ない。もう何撃か、折れた槍でベガの攻撃をしのがなければならない。

 ベガがにやりと笑った。血も凍る笑みだった。

 ラボールがビゴットの前に身を投げ出した。

 二人の胴をまとめて両断するべく、ベガは大矛を振り下ろした——。

 グレンは無造作に矛を投げた。

 それは音を置き去りにして、ベガの眉間へ一瞬で到達した。

「グゥッッ……!」

 とっさに防ぐも勢いを殺しきれず、ベガの巨体が二三歩後退した。黒馬が跳躍し、落ちてきた矛は持ち主の手に戻った。

「隊長……」

 ラボールは泣きそうな声で言った。グレンはただ一言、

「よく耐えた」と言った。

 ビゴットが杖を支えにしてよろよろとグレンに近付いた。

「グレン。すまぬ……儂のせいで……セリウスは」

 一瞬、グレンの目はセリウスの亡骸に注がれた。そして紫将は首を横にふった。

「あなたは生きている」

 グレンは黒馬を駆って前へ進み出た。

 ベガも新しい馬を持って来させて騎乗した。

「後はお任せを」

 瞬く間に両軍の兵は陣形を変え、両者を囲む円陣を組んだ。

 ベガの瞳は獣。激しい怒りに燃えていた。

 グレンの瞳は凪。ただ己の責務を見つめていた。

「ベガ!」

「グレェエエエエエエン!!!!」

 矛同士が衝突し、そこに乗った万感が、衝撃波となって戦場に散った。四方の兵士は、自軍の将の名を力の限り叫び続けている。

 ベガが一見力任せに、その実細かなフェイントを混ぜて矛を五度振った。

グレンは堂々とそれを受け止め、逆に強烈な横薙ぎをベガの横腹に見舞った。

ベガの大馬が「ビヒィ!」とたたらを踏み、受けた矛ごとベガの上体がのけ反った。

「おお……!」

ラボールは感嘆した。

領主と二人がかりでも手に負えなかったベガの猛攻を、紫将は涼しい顔でいなしている。

 両者の疲労度の差を抜きにしても、武力においてグレンが勝っている、とラボールは確信した。

 再び矛が交錯し、ベガが一方的に傷を負う。

「貴ッ様ァァ……!」

血走った目で敵を睨みつつ、ベガは矛を握りしめる。

——もはやビゴットは討てぬ。……目前の仇敵を討たぬ限りは……。

息を吸う間もない剣戟の狭間で、ベガの脳裏をある光景がかすめた。




「はい。あなたの分よ」

 ギギルルの冬は、心まで凍るほど寒い。

 先代星将カリネは戦の度に、僅かな兵站と乏しい木材をかき集め、大釜で作った雪イモのスープを手ずから振舞ってくれた。

 

 矛が幾度となくぶつかった。

 防御の柄がいちいち弾き飛ばされ、傷が増える。

 

「……ッス」

 受け取ったスープはひどく薄味だった。

 それでもなぜか、ベガはその味を忘れられないでいる。

 長い黒髪に柔和な瞳。「ウマかった」と伝えると、カリネは笑みをたたえた唇を指で押さえて「隠し味は真心よ」と言った。

 

 


「ガああああァァァァァ!!!」

 渾身の一撃が、初めてグレンの体勢を崩した。ベガは間髪入れず矛を回転させ、仇敵の全身に確かな怒りを刻んでゆく。

「ブルルッ」

 黒馬が苦々しげに唸った。

 ひときわ大きく振りかぶり、ベガは上段から、全体重を乗せて打ちおろした——。

「隊長!!!」

 ラボールが叫んだ。

 グレンはベガより一瞬遅れて、下段から矛を振り上げた。

 彼は敵を見ていなかった。

 奪ってきた命と、奪われてきた命。戦場で散った全てを、無心で感じていた。

何万と繰り返した一刀。

神速の斬り上げが、星将の胴を斜めに両断した。

ベガの上体が地に落ち、黒馬が静かに歩みを止めた。ラボールも周りの兵士も、氷像のように動きを止めた。

グレンがビゴットを見て、お互いに頷いた。

「勝鬨じゃ!!!」

 ビゴットの号令に、全兵が地鳴りじみた歓声をあげた。同時に、敵兵のほとんどが武器を落とした。

 領主や紫将が降伏を促すまでもなく、彼らに継戦の意思はなかった。ギギルル兵の誰もが、荒々しい星将の死を悼んでいた。

 数多の犠牲を出した第五次ギギルル侵攻は、こうしてチェリオ軍の勝利で終わった。

 

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