『この漫才が世界を救う』

星野 暁

第1話 転生してもお前と漫才できるなんて天性の転生


(舞台)


ハル

「ふとんがふっとんだらと思うと怖くて夜しか眠れんかって。」


シュン

「充分寝たやないか!もうええわ。どうもありがとうございました。」


(軽い笑いが起きるも、どこか寂しい空気の中、二人は舞台袖へはける)


(舞台袖の楽屋。照明は薄暗く、二人は疲れた表情で椅子に腰掛けている)


ハル

「客、前より減ってるな…俺ら、もうアカンのかもしれんな。」


シュン

「せやな。ウケへんし、生活も苦しい。これ以上続けるのは無理やろ。」


ハル

「解散…か。」


シュン

「お互い別々の道を歩むしかないな。」


(静かな沈黙が流れる)


ハル

「でも、最後の舞台だけは笑わせよう。せめて悔いなく。」


シュン

「それだけは約束や。」


(二人は大きくため息をつく)


その瞬間、楽屋は眩い光に包まれた。


(光に包まれ、意識を失う。次に目を覚ますと、そこは見知らぬ荒野の真ん中)


シュン

「…ここ、どこや?」


ハル

「異世界転生した!」


シュン

「即答!?順応早すぎやろ。もう少し考えようや!」


ハル

「異世界かー。いい世界やといいなー。」


シュン

「呑気か!遠くで戦争してるような音してるやん。あんまり、いい世界やなさそうやで。」


ハル

「でもまあ、転生もコンビ2人でしたんなら、あながち漫才師も“天性”の仕事かもしれんなー。」


シュン

「だから呑気か!」


(風が吹き、荒野に砂ぼこりが舞う)


シュン

「…ていうか服装なんやこれ。鎧でもスーツでもない、変なローブやぞ?」


ハル

「これはアレや、転生したての服装やろ。チュートリアル感あるもん。」


シュン

「ゲームちゃうねんから!」


ハル

「でもほら、見てみ。向こうから村っぽいの見えへん?」


シュン(目を細めて)

「…あれ、村か?近代的なもんは見当たらへん。完全に中世やな。」


ハル(にっこりして)

「口は恥ずいから、ほっぺな。」


(ほっぺにキス)


シュン

「きもっ!なにすんねん!」


ハル

「シュンが突然“チューせい”って言うから。」


シュン

「“中世”や!」


ハル

「まあでも、この世界でも漫才して生きていこっか。」


シュン

「無理やろ普通!誰が漫才わかるねん!」


ハル

「戦争してる世界やろ?そんな世界に足りてないんは、武器やなくて…笑いや。

兵器なんかなくても、平気にならなあかんねん。」


シュン

「上手いこと言うけどな、ハルは説得力ゼロやねん!」


(ナレーション)


――かくして、売れない漫才師ふたりは、“笑いの力で争いの絶えぬ異世界”を変える旅に出た。

笑いの種ひとつで、世界を救えると信じて。

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