境界なき旅人 ―100の異界をめぐる物語―

Algo Lighter アルゴライター

プロローグ

 旅をしている。

 世界のどこかに、まだ誰も知らない場所があるかもしれないと思って。

 季節の輪郭は曖昧で、駅の名前も街の形も、いつの間にか少しずつずれていく。

 この道の果てに何があるのか、誰も知らない。


 相棒のオーリンと歩く道すがら、ふと気づく。

 ここではない、どこかを探しているうちに、

 本当に知りたかった「自分」や「言葉」がぼんやりと遠ざかっていくのだと。


 ぼくらが足を踏み入れるたび、

 世界は静かに、でも決定的に形を変える。

 言葉が意味をなくす町。

 孤独が通貨になる都市。

 未来と過去が入れ替わる星。

 そして、広告だけで会話する都市。


 常識は旅ごとにひっくり返り、

 昨日まで信じていた現実の輪郭が、少しずつぼやけていく。


 なぜ、ぼくらは旅を続けるのか――。

 それはたぶん、答えのない問いを、いつまでも手放せないからだ。

 ぼくらの旅の記録が、

 いつか誰かの「問い」や「違和感」になることを願って。


 さあ、次はどんな世界が待っているのだろう。

 ひとつの物語の終わりが、またひとつの始まりになる。


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