番外編:北海道旅行3 スキーとスノボー

新千歳空港に到着した俺たちは、そのまま予約していたホテルへ向かった。まずは荷物を置いて準備を整えるためだ。


フロントで受付を済ませ、確認されたのは「3部屋」の予約。


「じゃあ、部屋割り決めようか」


という話になったとき――


「私は、花月さんと一緒の部屋がいいです」


と、夏美が即答した。


その一言に場が少し静まり返る。俺はすぐに察した。


(……そうか)


夏美が性同一性障害だということを、知っているのはこの中で俺だけ。そして――俺自身も元男。


だからこそ、夏美は気兼ねなく一緒にいられる相手として、俺を選んだのだ。


「いいよ、俺もそれで」


俺が受け入れると、他のメンバーも特に異論なく、


・花月&夏美

・詩織&流麗

・勇斗&琉生


という部屋割りが決まった。


部屋に入ると――


「……なんか、特別感すごいな」


木の温もりある内装、広々としたスペース、そして窓の外には雪景色が広がる。まるで高級ロッジのようだった。


少し荷物を整えた後、詩織たちと合流してスキー用品のレンタル店へ。


スキーやウェア、小物まで一式揃っている店で、それぞれ装備を選ぶ。


初心者の夏美、琉生、流麗は店員から丁寧な説明を受けていたが、経験者の俺、詩織、勇斗は説明をスキップ。


「花月ちゃんって、スノボーなんだね?」


勇斗がそう言った。


「スキーやるとさ、雪玉状態になるんだよ。坂で転んで、そのまま止まれずに転がりながら下って」


そう返しながら、俺はいつものように少し大きめのスノボーを手に取る。


「……ちょっと大きくない?」


勇斗の指摘に、俺ははっとした。


(……あ、これ“前の身長”基準で選んでた)


急いでサイズを調整し、今の自分に合うボードを選び直す。


(……こんなに楽しみにしてたんだな、今日)


そのことに、今さらながら自分でも気づいた。


ウェアも借りて、いよいよスキー場へ移動するバスに乗り込む。


バスの中で――


「花月ちゃん、スノボーなんだね〜」


詩織が嬉しそうに話しかけてくる。


「うん、昔スノボーやってたからね。スキーだと……雪玉になるんだよ、マジで」


俺の一言に、詩織は爆笑していた。


---


スキー場に到着すると、詩織が元気よく言った。


「着いたーっ!!」


早速、各自の道具を準備する。


俺、詩織、勇斗は慣れた手つきで支度を済ませた。運動神経抜群の夏美も、初めてとは思えないほどスムーズに装着を完了。


……が、琉生と流麗は大苦戦していた。


「これ、どこに足入れるの!?」「こっちが前!?後ろ!?」


慌てる二人に、詩織と勇斗が手際よく手伝っていた。


リフトで登り、山の中腹に到着。


「うわ、こんなに急なのね……」


流麗が青ざめる。


「これでも初心者向けですよ?」


詩織がさらっと返し、軽く滑り出す。


それぞれペアで滑り方を教えることに。


・流麗 → 詩織

・琉生 → 勇斗

・夏美 → 俺(花月)


「えっとね、まず足の向きをハの字して……」


教えていると、夏美がじっとこちらを見てきた。少しだけ緊張の混じった目。


「コツ掴んだかも。……一人で滑ってみたい」


「いいよ。ただ、ちょっと離れたところから見てるから、困ったら手を挙げて」


そう言って見守っていると――案の定、スピードが出すぎて止まれなくなる夏美。


「ストップー!曲がって!……ダメか!」


すぐに俺が追いかけて滑り出し、近づきながら止まり方を指導。


なんとか止まった夏美は、驚いた顔でこちらを見た。


(追いついてきた……!?)


「助かった……ありがとう」


その後、夏美も流麗も琉生もゲレンデのカフェへ休憩に入った。


そして残った俺、詩織、勇斗は――


「競争しようよ!!」


詩織の提案で、山の頂上からのスノーレースが始まった。


勇斗は内心燃えていた。


(これで1位になって……花月にいいところ見せるんだ!)


スタート!


――が、スタートダッシュは決まったものの、花月が速すぎる。


「えっ……!? 花月ちゃん……早っ!」


一方、詩織も花月に釘付けだった。


「……あれ、心配いらなさそう? てか、速っ!?」


思わず油断して抜かれたが――


「ふふっ、楽しくなってきた!」


詩織は全力を出し、本気で追い抜きにかかる。


直線でしゃがみ、空気抵抗を極限まで減らしてスピードを出すと


(これなら詩織も追いつけ…って抜かされた!?)


花月を抜かした


しかし、花月も抜かされっぱなしではなかった


詩織がカーブの手前にさしかかるとそこで減速した瞬間に――


「追いついた!」


花月がほとんど減速せずにカーブを曲がり、抜き返す。


白銀の中で、二人のスピードとテクニックに、周囲のスキーヤーたちが思わず立ち止まり、見惚れていた。


そしてゴールライン――


同時に駆け抜け、結果は引き分け。


「やっぱり、速いね」


「いや、花月ちゃんもすごいよ!」


笑顔でハイタッチを交わす二人。


雪の中、二人の友情が輝いていた。

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