異世界英雄伝記~君の世界は何色なんだい?~

猫目

プロローグ

 ピッー、ピーー、ピ―――



 ――ロッカールーム――


「――後半、何で! 作戦通り動かなかったんだよ?!」


 俺はチームメイト全員に怒鳴どなった。


「はぁ? 動いた結果が前半の三点差だろうがよ?」


 なに言ってるんだ、お前たちは俺のこまだろ?


「それでも俺が考えた戦術が一番勝率が高いはずだろが、俺に従う契約のはずだったよな?」


 そう、全て俺に任せておけばよかったんだ。戦略も情報収集もコーチングも。

 それなのに、勝手に動いたから勝てなかったんだ。


「――契約? あのクソみたいな脅しのことか? 別におれたちはな! 勝てるから従ってやってただけなんだよ! 自分が操ってたつもりか?」


 何言ってんだこいつ、あれ? こいつなんて名前だっけ?


「お前の戦術やりかたじゃあな! この程度が限界だった! それだけのことだろうがよ」


 俺のやり方が間違ってた? あれ、ここ最近は上手くいってたはず……

 何が上手くいってたんだっけ?


「別に好きにしろよ! おれたちの情報でもなんでも流せよ! もうおれたちの三年間は終わったんだ」


 そうだ、情報を隣国に流して反乱を起こさせないと――


「個人技術を三年間もっとみがいていれば勝てたかもしれない…… あなたの戦術に費やす時間は無駄でした! 返してくださいよ! 僕たちの三年間!」


 なんだこんなに自己主張できるやつだったのか、こいつ。

 

 ……ん? こいつも誰だっけ?


 いや、思い出している暇なんてない。明日からは魔王領に――



 ――学校の廊下――


「ねえ、ほらきたよ。あいつ」


「え? ああ、なんかサッカー部の部員をおどしてたんでしょ?」


「まじ!? キモすぎなんですけど」


「キモいは言いすぎだよ、でもそこまでして県大会にも行けないって笑えるけど」


 こいつらも何言ってんだ? 県大会? 俺は魔王を倒しに――



 バッ!


 また同じ夢……

 

 定期的に繰り返されるこの悪夢あくむからは、異世界にきても逃げることができなかった。



 この世界に召喚されてから半年。明日からは魔王領へと入る。

 そんなときに、あの失敗の記憶を見せてくる。


 

 この世界にきて色々な困難こんなんを与え続けられ、乗り越え続けてきた。

 それでも、あの記憶は俺を許してくれないみたいだ。



 俺は外の空気を吸いたくなり、拠点からでた。

 外はまだ暗い。


 外に出るとミトハとユフィナが夜空を見上げていた。



「ついに、本格的に始まるのね。魔王軍との戦闘が……」


 ミトハは俺に気が付くと、そんなことを言った。


「ここまで色々あったな」


 俺は普段、過去の話などしないのだが……

 気付いたら、そんなことを言ってしまった。


 あの夢を見たせいだろうか。



「召喚された日に処刑宣告されたり、魔王軍幹部の右腕と戦ったり、初日からほんとうに大変だったわ!」


 ほんとうはその夜に暗殺者の襲撃もあったんだがな……

 まあ、この二人は知る必要のないことだ。



「それにしても、髪伸びたな。邪魔にならないか?」


 俺は前から気になっていたことを聞いた。


「髪は切らないって決めたのよ。それに大丈夫、戦いになったらソウマにもらったリボンでまとめるから」


 ミトハはそういうと、黒い紐を取り出す。

 そういえば、あげたんだったな。夢のせいで記憶があいまい――



「あの、こんなときにイチャイチャするのやめてもらえませんか?」


 ユフィナがジト目でこちらを見てくる。


「普通の会話だろ? 明日から大変だろうから、これまでの冒険を振り返ってるんじゃないか」


「それなら私が仲間になってからの話にしてくださいよ! 初日ってまだ出会ってもないじゃないですか?」


 ――たしかに、それもそうだな。


「悪かったよ、じゃあ魔女の家に行ったときからの話しな?」


 俺がそういうと――


「いえ、明日は朝早く出発でしょう? 今日はもう寝ましょう、おやすみなさい――」


 えー……





 ――二人が寝静まった深夜――


 俺は拠点から抜け出した。

 

 けして、夢の続きが怖くて眠れないというわけではない。



「エルナ、状況はどうだ?」


 俺がそういうと、クロ――近接戦闘部隊の五人が俺の前にあらわれる。


「問題ありません。すべて予定通りです。この国は明日にでも戦争状態となるでしょう」


 今やクロナミ隊の人数は49人となっている。情報操作によって、この国は思うがままに動かせる。



「俺たち勇者一行は明日から魔王領へと入る」


 俺がそういうとエルナは部隊の現状を正確に記した書を渡してくれる。

 これから言いたいことが分かっているようだ。


「お前たち五人とサク――遠距離戦闘部隊の十人は連れていく」


「それから、他の部隊からも数名連れていきたい。とくにハク――医療部隊の隊員はかならず連れていきたい」



 俺がそういうと、彼女たちはそれぞれの考えを話す。


 会議は3時間ほどかかってしまった。

 しかし、これで全ての準備はととのった。



 ――拠点の自室――


 俺はいまだに逃げたくなるときがある。


 魔王を倒しても、王を倒しても人生は続く。

 この国も世界も続いていく。


 自分を選ぶのか?世界を選ぶのか?それは今の俺にはわからない。


 でも、どちらを選んだとしてもあの夢のような結果だけにはしない!


 その気持ちだけが俺を動かす。



 


 



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