追放された最強バーサーカーの返報狂騒曲(リベンジカプリチオ)
カガリ〇
第Ⅰ章 Promenade
第0話 大虐殺
ここはグレイテストランド西端にある古城。
元の所有者は遠い昔にこの世を去っており、現在は盗賊団によって占拠されている。
彼らはまさに悪逆非道の限りを尽くしてきた。
近隣の村々から食料や金品を根こそぎ奪い盗り、たとえ相手が女子供でも容赦なく殺す。
豪胆で有名な地元の領主でさえもこの盗賊団に恐れおののき、今ではこの城に近づく者は一人もいない。
──はずだった。
月がとても強い輝きを放っていた真夜中。その男は現れた。
塔の上で見張りをしていた下っ端の盗賊は、ふとアジトの前に立つ不審な人影に気づく。
漆黒のフルプレートアーマーを身に纏った戦士である。そして背中には、派手な装飾が目立つが武器としては使いものにならなさそうな馬鹿デカい剣。
周りに仲間は居ないようで、どうやら無謀にも、たった一人でこの古城に乗り込んできたらしい。
「アホな間抜けめ。ここがどこだか知らねぇのか?」
するとその見張り役は、フルプレートの戦士に気づかれないように、仲間たちにこっそりと伝令を回していった……。
「へっへっへ。観念しな!」
「オラッ、てめぇはここで死ぬんだよッ!!!」
盗賊たちは戦士を完全に取り囲んだ。
200人の大盗賊団だ。文字通り蟻一匹逃げる隙がない。
戦士は古城の中庭に追い込まれてから、身動き一つしていなかった。
その様子を見た盗賊団のお
「なあ教えてくれよ。その剣と鎧はパパから買ってもらったのか?お前みたいなお坊ちゃんが何しに来た?この城じゃあもう、舞踏会はやってませんぜ?」
「「ギャハハハ!!!」」
お頭の言葉を聞くと、子分たちは下品に大笑いした。
しかし、フルプレートの戦士はいたって真面目にこう答えた。
「お前たちを殲滅しに来たのだ」
「テメェ…… 調子にのってんじゃねぇぞッ」
盗賊団のお頭は戦士の胸倉に勢いよく掴みかかった。
だがすぐに何かを思い出すと、彼はその手をパッと放す。
「まあいい、どうせお前はこれから死ぬんだ。子分たちによって惨たらしく殺されるのだ。わざわざオレ様が手を下す必要もないだろう。そうだッ、冥途の土産にいいものを見せてやろう」
するとお頭は服の中から、金色に輝く不思議な機械を取り出してみせた。
それはオーパーツという価値のある魔道具の一種だった。
「コイツは王都に行くキャラバンから奪った超レアアイテムだ。オレ様の勘だと、3000万ゴールドの値はつくはずだぜ」
「「おおぉぉぉッ!!!」」
金色の機械が天高くかかげられると、彼の子分たちは大袈裟に歓声を上げた。
それを聞いて、お頭はにやりと笑みを浮かべる。
(フフ……コイツを餌に豪商にでも取り入って、いつか貴族になりあがってやるぜ)
──ザシュッ
「は?」
急激な重さの消失による違和感を感じ、おそるおそる視線を落とす。
すると、自分の手首から先が消えてなくなっていることに気が付いた。
あまりに鋭い切り口のせいで、斬られたと分かってから痛みを感じたのは、だいぶ後のことだった。
そして消えた手首の先は、戦士の手元にあった。
「ぐぁぁッツ!!! テ…テメェ、なにしやがる!!!」
「なんだ、この程度か……。 無駄足でしたね」
鑑定魔法の結果に満足がいかなかった戦士は、持っていた手首とオーパーツを地面の上に投げ捨てた。
それを見た盗賊頭は激怒する。
「クソッ 野郎ども、ヤっちまえ!!!!」
だがしかし、ボスが命令したにもかかわらず、その場から動き出す子分は誰一人と居なかった。
いや、誰も動けなかったのだ。
そのとき既に戦士は、極大剣を鞘から完全に引き抜いた後だった。
「……
漆黒の剣からは、周囲の敵を強制的に恐怖状態へとさせる魔力波が発生した。
オーラの影響を受けた200人の盗賊たちは一斉に怯え、泣き叫び、われ先にその場から逃げ出そうとする。
「逃げろぉ!奴が、奴が来る!!」
「早くしろよッ ここから出るんだ……!」
だがしかし、盗賊たちには最初から逃げ場などなかった。
城の中庭から出ようとした時、扉が外側から固く施錠されている事に気づいたのだ。
「オイッ 嘘だろ」
「ふざけんな! 出せ!」
戦士には隠密活動が得意なサナという仲間がいた。これは彼女の仕業だった。
狂気と混乱に侵される盗賊たちを見て、戦士は満足感を得た。
──ガラガラッ ガラガラッ
地面を引きずる極大剣の金属音が、月夜の古城に不気味に響く。
阿鼻叫喚の眺望。それは、この先に起きる惨たらしい殺戮劇の序章ですらない。
そして、頭が自らの死を悟った時、ようやく彼は漆黒の戦士の正体を知り得た。
奴の名は、狂戦士クライシス。
自分たちが相手にしていたのは、死神すら恐れる本物の暴力なのだと。
「さあ、蹂躙をはじめよう」
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