ガソリンスタンドでの激戦


 裏手でこっそりと手榴弾を取り出す。後はこれを使い地面にある石油を爆発することでこいつを殺す。

 その為には爆発が一番強くなる地点に誘導しなければならない。


「………ふぅ」


 ここで俺が命に変えてもこいつを誘導する。アメリカのクソデカトラックも楽々入れる大規模な駐車場。ここなら爆発も相当なものになるはずだ。


「来いよクソ野郎!!!!」


「aaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」


 この馬鹿は馬鹿正直に突っ込んでくる。かつて大量の銃弾が襲いかかる中、ただひたすら突っ込んでいった馬鹿にそっくりだ…。

 こいつとはあまり戦いたくない。一挙一動が昔の仲間と同じだから昔を思い出してしまう…。


 近くにある車を壊しドアを投げつける。しかし奴はドアを片手でキャッチし、投げ返してきた。

 ギリギリしゃがんで何とか躱す。そして投げられたドアは近くにあるタンクに直撃し中のオイルが漏れ出る。



 よし! よし!! これでいい!!!


 ショットガンを何発か撃つ。通常の銃はまるで効いていなかったがこれは違う。

 少しだが怯み隙が生まれる。奴もその事は理解しているのだろう。飛んで来た弾丸を素手で受け流してきた。


 そしてその弾丸は奴の横にあるタンクに穴を開ける。

 ここまでは調整済み。確かにゾンビの中にあるヘレティックのデータは厄介。だが俺は知っている。

 全員の癖を。戦い方を。ならばどのように動くかの推測は容易い。



 ……それはつまり奴の動きを操作しやすいということになる。


 あえて牽制の銃弾を外し、後ろにある車を破壊する事でガソリンを漏らす。

 少しづつ。だが確実に辺りをガソリンで覆っていく。

 後少し…。後少しでこのガソリンスタンドが完全に崩壊する大爆発を起こすことができる。早く中央まで行かなければ!!!


「aaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」


「っ…。耳が……痛え」


 ずっとこいつが咆哮をするせいで鼓膜が痛い。更に鼓膜を通じて脳みそが痛くなる。

 黙らせようと喉元に攻撃してもまるで効かない。このままじゃ音圧で頭がやられちまう…。



 だが目的地はもう目と鼻の先。後少し走れば着く距離だ。

 奴の攻撃をしのぎつつ確実にガソリンスタンドの中心部へと移動する。


 後少しだ…。俺は手榴弾を投げ込む準備をしていた。




 ……その時、突然奴は自分の顔を押さえ出した。


「? 何をする気だ?」


 嫌な予感がする。銃を構え、奴が止まった隙に少し距離を取る。

 俺の耳には奴が自身の顔を引っ張り、肉を抉り取る音が聞こえてきた。


「クソが!!」


「aaaaaaaaaaaaa!!!!!」


 ヤバイと思い即座にショットガンを頭にぶち当てる。

 だが怯まない。こちらを嘲笑うような咆哮をした後、肉が取れた汚らしい顔をこちらに見せてきた。



「………………は?」


 知っている顔だった。顔はボロボロに崩れていたが微かに見覚えがあった。



『君の才能。多くの人を助ける為に使ってほしいんだ』


「隊長……?」


 ヘレティックの隊長。リーグ・ブラック


 俺をヘレティックに誘ってくれた恩人であり、そして俺が……自らの手で殺したはずの男がそこに居た。



「aaaaaaaaaaaaaa!!!!!」


「しまった!!!」


 衝撃で少し固まっていた。そしてその隙を奴は見逃さなかった。

 銃弾が俺の眼前へと迫ってくる。避ける事はできない。ならば!


「ビリヤード!!!」


 弾丸に弾丸を当てることで攻撃を逸らす。

 俺の得意技だ。そして俺は早撃ちも得意技。

 目にも止まらぬ早さで放たれた弾丸が奴の弾丸にぶつかり、火花を散らし逸れていく。


 同時に遅れて銃声。三発の銃声が聞こえてくる。




 ……そう。三発だ。二発ではない。三発。


「!?」


 奴の弾丸の後ろにもう一つ。完全に影に隠れた弾丸が現れてきたのだ。

 突然の事で身体が追いつかない。気づくべきだった。二重撃ちは隊長の得意技。ゾンビになっても体に経験は染み付いている。

 

「うがあぁ!!!!」


「aaaaaaaaaaaa!!!!!」


 肩を弾丸が貫かれた。熱い。痛い。泣き言が出そうになるのを必死に堪える。

 隊長は…奴はニヤリと笑っているように感じた。

 ああそうだな。確かにこの肩じゃまともに戦えない。勝ちを確信するのも当然のこと。



 だけどもう遅い。この勝負。俺の勝ちだ。


 近くにあるタンクに手榴弾を投げ込む。既にこの場所は爆発の中心地。逃げることはもうできない。

 終わりだ。俺は隊長に笑みを返す。俺を動揺させる作戦だったようだが…俺には効かなかったようだな。


 ……いやまあ効きはした。でも勝ったならいいんだ。勝ったなら。




 ごめんなさい隊長。人類の為に尽くした貴方の死体を……こんなふうに使われてしまうなんて…。

 そして貴方の最後の言葉を思い出す事なく、こうして死ぬことを赦してください。



 もう……考える事に疲れたんです。





 その場に俺はへたり込む。爆発まで後数秒。もう誰にも止められない。

 隊長ゾンビは全力で走って逃げている。ゾンビなのに命は惜しいんだな。ははは…?


 いやまて?! 隊長ゾンビ。逃げていない? トラックの大群の所に向かっている?


「チィ!」


 この距離ならナイフの方が良い! 俺は投げナイフを奴の後頭部目掛けて全力で投げる。

 だがそれを飛んできた鳥のゾンビが拒む!

 俺の手を奴らの鋭い爪やくちばしが襲いかかり、投げナイフはあらぬ方向へと飛んでいった。


「aaaaaaaaaaaaa!!!!!」


「「「ア〜〜〜〜〜〜〜」」」


「「「キー!! キー!!」」」


「「「ギャー!!!!」」」


 トラックの中からゾンビ達が現れる。しかも人間だけではない。

 ネズミやアライグマやリスと言った小動物達もだ。恐らく伏兵としてトラックの中に隠しておいたのだろう。

 そしてゾンビ達は隊長ゾンビを囲んでいく。スズメバチを熱で殺さんとするミツバチのように。


「肉壁か!?」


 その真意に気づいた時にはもう遅かった。


 ガソリンスタンドだけでなくその周辺一帯を吹き飛ばす威力の爆発が俺を襲った。






 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る