恐るべき存在
「グロリアが敵の拠点…。」
「ということは市長も黒の可能性があるわね」
「市長が? 何故そう思うんだ?」
「現市長は元々この都市の成長を支え、グロリアを作ったとある医者の家系の人間なの。グロリアは今彼が所有しているはずよ」
ヘンリーが一枚の写真を見せてくる。恐らく彼が市長なのだろう。
恰幅のある豊かな人物だがその顔は聡明さを保っている。優しい雰囲気が出ていて人気がありそうな人物だ。
「ああ。俺もそう睨んでる。ただ市長とルミナスの決定的な繋がりは見つけられなかった」
「じゃあまだ白の可能性があるのか。白黒両方の線から捜査に当たらないとな」
「取り敢えず明日…。再び会議をしよう。色々考えて疲れた」
「そうね…おやすみ」
そうしてこの場は解散となる。これで少しは前進することができた。
重要な情報に物資。そして新たな仲間。
これにより今日よりも遠くの場所だって探索することができるはず。
警察署の防衛を固め、安全な基盤を作っておかなければ。
……グロリアには何かがある。
今度の探索で調査をしてみなければ。あの場所が今回のゴール。俺の勘がそう告げている。
民間人の休憩スペースへ向かう為に登る階段。そこにある窓からグロリアが見える。
「デカいな」
詳しいことは覚えていないが日本にある東京スカイツリーと同じぐらいの大きさがあるらしい。
鳥対策で貼られたバリケードの隙間からグロリアを睨みつける。
「俺が必ず……全員死なせず外に連れて行く」
あの日…俺は皆の犠牲を胸に世界を救った。だが悲劇はそれで終わらなかった。
生き残った者達はその大半の心が壊れ、世界の敵となり……俺が自らの手で地獄へとぶち込んだ。
壊れなかった者も戦争による病気や怪我でそのまま病院へと担ぎ込まれ……帰ってくる者は居なかった。
俺の手は仲間の血で汚れてしまった。仲間を囮にし生き残り…挙げ句仲間をこの手で殺した。
心が冷え、何もかもにやる気を失い、そして……今に至る。
偶然下の階に居たリラさんが目に映る。
頭の中に彼女の言葉が呼び起こされた。
『私は諦めたくない…。だから貴方は生きて』
リラさんは彼女に本当に似ている。人を助ける為に自らの命を捧げた彼女に…。
今度こそ俺が皆を助ける。その為ならば…。
こんなゴミ野郎の命なんて捨てたっていい。
二階ではもう全員が眠りについていた。耳を澄ますと、端っこで寝ているマジシャンとミュージシャンが寝言でケンカしているのが聞こえてくる。
「疲れた…」
今から寝ると考えたら急に体がぐらつき始めた。
眠気と疲れで頭が回らない。肉体的な疲れはそこまでだが精神的な疲れがかなりのものとなっている。
「おやすみ……なさい」
汚れが目立つ体をウェットシートで拭いていく。水は希少。そうポンポンと使うわけには行かない。
新しい服は警察署にあった緊急用の備品を使わせてもらっている。
俺は疲れを癒すため、深く眠りの世界へと潜っていった。
その様子を隣にいたスコッチさんが悲しそうな表情で眺めていることに…俺は気づいては居なかった。
「ああクソ!! まさかあんな怪物が都市内部にいたなんて!!!」
「任務達成確率は35%まで低下しています。このままでは我々ルミナスの目標に大きく遅れを出してしまうでしょう」
「うるさい!!! そんな事は分かっている!!! …………本来の計画からはズレてしまうがしょうがない。一段階計画を早めることにしよう」
「かしこまりました。明日の昼頃にはゾンビに新たな進化が可能となります」
「それでも昼までかかるのか…。いやしょうがない。今はあの怪物を確実に殺せるようにしなければ。進化可能になった個体から進化を行っていけ」
「壁外に保管している例のゾンビはどうしましょうか?」
「アレは秘中の秘。顧客共に見せる最高の秘密兵器だ。まだ見せるわけにはいかない。だがいつでも動かせるようにしておけ。…そういえば顧客共はどんな様子だ?」
「皆、我々の兵器に興奮しております。現地の人間。その大半を殺害し兵器に変える。この恐ろしさを良く理解しているのでしょう」
「それならいい。早速作業に取りかかってくれ」
「かしこまりました。では失礼します」
「これでいい…。計画に多少のズレは生じたがその程度で我々は負けない。……覚悟しろ。傭兵風情が」
とある倉庫。そこは厳重な封印がされ、決して何者も開けることが出来ないようにされている。
そこにあるのは一つの巨大なカプセル。ポコポコと中にある空気が上へと上がる。
紫の液体に浸されたナニカは人の形をとっていた。
だが人の形をしたそのナニカは……とても人とは思えない巨大な怪人の姿をしていた。
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