第20話 転機4

 それらは突如、森から躍り出てきた。

 まっすぐにそれらは、突進してきた。

 害獣。

 そう呼ばれている者たちだ、人でない、動物でもない、ましてや家畜のそれでもない、猛獣でもない、人ならざる獣。

 咆哮しながら、森から湧き出てきた。

 死。

 そう直感した。


 刹那。


 ハープの音と、透き通り、それでいて、重厚な、聖なる歌声が響き渡った。


 歌声は天地に響き渡った。


 すると害獣たちはその動きを、一斉にそこに留め、時間がその物たちに進むのを拒否させたかのように、動かなくなった。


 同時に一陣の、爆炎が、爆雷撃が辺り一面、その害獣たちを薙ぎ払った。


 振り向くと、少し離れたところにハープを持った、小さい姉が。


 そしてその隣には、大きく手を広げた従妹が立っていて、今しがた爆雷撃と爆炎を放った後であろう。

 空間が灼熱で歪んでいた。


 燃え盛る爆炎の中、数匹が動きを再開し、自分に向かって突進してきた。


 あと数歩の間合いとなった時。


 一陣の風が、いや、何かの黒い物体が、近づいてきた害獣の二、三匹を突き潰した。

 同時に害獣は、その物体の激突と衝撃波と轟音と共に無数の肉片に変えた。


 突き潰した黒い物体。それは息を切らし方で息をする、母だった。

 母は息を切らしながら、微笑み、黙って行ったらダメでしょと、相変わらず、少女のような無邪気な表情で、間に合ってよかった、と。

 だが激突の衝撃、体当たりの肉弾攻撃の衝撃で着ていた物はズタズタになっていて、ほぼ全裸に近いものだった。


 僕は慌てて、散乱していた、まだ無傷の荷物の中から、その裸体を隠すための布を探そうと迂闊にも、不用意に周りを警戒せずに探し出した。


 その時。


 まだ燃え盛る、爆炎の中から、生き残っていた害獣が。

 その仲間の屍の中から躍り出てきた。


 あ。


 と声を出した瞬間、僕の襟首を掴み後ろに引き倒し、その害獣の首を一閃、叩き落とした。


 一瞬の出来事だった。

 首根っこを持って引き倒したのは、僕の傍に手に鉈を持った大きな姉だった。。

 鉈には、その害獣の首を落とした時の体液が、したたり落ちていた。

 振り返り、油断しないでね、あなたは希望なのだから。


 と、探していた、母を包むための布を、自分が羽織っていたマントを、僕に手渡しながら言った。

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