第3話 異世界へ1

 熱を出した時に見る夢が、共通してこういったものだろう。


 大きな熱い何かに締め付けられる夢。

 頭の後ろから、圧迫されるような、自分の体が不条理にも似た、訳の分からない何かに包まれる。

 そして、頭が大きくなるような、そんな不思議な感覚、目が覚めると、視界の全てが膨張していて、焦点が合っていない自分の存在する世界でなく、全く別の世界の住人になったような。

 熱い湯の中に、お風呂のそれではなくましてや、サウナのそれでなく、茹でられたら、きっとこんな感じなんだろうな、と、寝返りを打つと、氷枕、、冷却材が頭の下に枕の代わりに敷いていると、水分を吸った、濡れたタオルが、水が打ち合う音によく似た、水のこすれ合う音。

 水分を含みすぎて、ほとんど、濡れタオル状態となった、タオル同士が、こすれ合う、水際で、水が跳ねる音が耳元で、ずっと聞こえていて、その音が、夢現のあいだを行ったり来たりしている。

 音が 遠く、また、近くに聞こえ、寝汗で、体中が、溶けたように、布団もまた、水分で、心なしか重く、湿気を含み布団に覆いかぶさられている感覚が、余計に体を重くさせている。

 悪寒と体の熱さが交互に襲ってきて、その戦いの最中、冷たい手が、そっと、自分の周りを。汗を拭い去ってくれた。

 汗で、 重たくなった、着ているもの、布団のシーツを、手際よく変えてくれた。

 その間、自分の体は、いいように転がされ、気が付けば、新しい下着や、布団シーツに包まれまれていた。

 その時の視界に映っていたのは。優しい手の甲、顎から首筋、そして、胸元、かた、肩越しから背中の。

 そして、首筋からうなじにかけ、目をつぶり、そして目を開けたごと、静止画のようにその記憶の片隅に織り込まれている。

 そして、それは母の香りと共に記憶の澱のようにずっと奥底に存在している。

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