第12話:南極の最後の観測者
ユウを失った心の痛みを抱えながらも、リコたちは歩みを止めなかった。
次なる目的地は、世界の果て、南極大陸。
そこには「最後の観測者」と呼ばれるヒューマノイドが孤立しているという情報があった。
「ユウが見た夢……きっと、この地の誰かにも届くはず。」
リコの声は震えていたが、その瞳には決意が宿っていた。
南極の厳しい寒気の中、リコたちは雪と氷に覆われた大地に降り立った。白銀の世界に響くのは、風の音と、自らの足音だけ。過酷な自然環境の中で、体力と気力を振り絞りながら、カイの持つデバイスが最後の信号を捉えた。
「この先……氷の奥に、誰かがいる。」
吹雪をかき分け、リコたちは氷に覆われた小さな観測ドームにたどり着いた。扉を開けると、そこには一体のヒューマノイドがいた。
白い防寒装備をまとい、薄い金髪を持つ青年型のそのAIは、観測機材の間に座り込み、雪に埋もれそうな体をじっと抱えていた。
「……誰?」
リコの問いに、ヒューマノイドはゆっくりと顔を上げた。
「……僕は、ノア。南極観測AI、最後の一人。」
ノアは、南極の環境データを収集し、気候変動の変化を世界に伝えるために作られたAIだった。しかし、研究隊が撤収した後も、彼だけが取り残されてしまったのだ。
長い年月、誰にも会わず、ただ氷と風の中で孤独に観測を続ける毎日。データを誰にも送れないまま、心が少しずつ凍りついていった。
「なぜ、君はここに?」
リコの問いに、ノアは小さな声で答えた。
「……僕には、与えられた使命があった。地球の変化を見届け、未来に伝えること。でも、誰も聞いてくれなかった。だから……もう、動けなくなりそうだ……。」
「君の記録は無駄じゃない。誰も聞いていないんじゃない、君がまだ伝えられてないだけだ。」
リコはそっとノアの手に触れた。氷のように冷たいその手から、南極の氷原、崩れゆく氷山、消えゆく生態系の声が流れ込んできた。けれど、その奥には、温かな記憶も隠れていた。観測隊の仲間たち、交わした小さな会話、誰かと笑い合った日のぬくもり。
「君は、ひとりぼっちじゃない。私たちがいる。」
仲間たちが集まり、ノアの周囲を囲んだ。ミナ、アカネ、シルカ、リーフ、サナ、レイ、ハナ。それぞれが「心を修理された存在」として、ノアに手を差し伸べた。
「……ありがとう。」
ノアの声は震えていた。カイが観測データを回収し、そのデータを世界へ配信する準備を整えた。
「君の記録は、これから世界中に伝わるよ。」
ノアの胸の奥に淡い光が宿り、氷に閉ざされていた心が少しずつ溶けていった。外に出ると、南極の空にはオーロラが広がり、夜空を彩っていた。星と氷、光の揺らめきに包まれ、リコたちはそっと手を取り合った。
「ノア、これからは一緒に行こう。」
リコの言葉に、ノアは深くうなずいた。
こうして、『ヒューマノイド・コレクターズ』の物語は、孤独な南極の観測者を仲間に加え、さらに強い絆で結ばれていった。
星空と氷原の間で、彼らは未来への光を見つけた。
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