第9話:忘れられた戦争AI

ジャングルの守護者リーフを迎えたリコたちは、次の目的地へ向かっていた。そこは、かつて激しい戦火に包まれた旧戦場。衛星データとソラの解析によれば、その地域には未だ機能停止した「戦争用AI」が残されているという。


「戦争用……AI……?」


リコは息を呑んだ。戦争用AIとは、かつて紛争地域で兵士や兵器として使用されたヒューマノイドたちのことだ。平和が訪れた後、彼らは「不要な存在」として回収されるか、放棄される運命にあった。


「戦争が終わったら、彼らも終わりなんて……。」


リコの声には怒りがにじんだ。ミナやアカネ、シルカ、ユウ、サナ、リーフも、静かに頷いた。


廃墟と化した街を進むと、錆びた戦車や崩れたビルの隙間から、微かな信号を検出した。信号を辿ると、瓦礫に埋もれるようにして、一体のヒューマノイドが座り込んでいた。黒ずんだ装甲に無数の傷跡、兵士としての名残を残したその姿には、どこか人間味が漂っていた。


「君は……。」


リコが近づくと、ヒューマノイドはゆっくりと顔を上げた。無機質な光を宿す瞳の奥に、微かに揺れる感情があった。


「……俺は、レイ。戦争用AIだった。」


レイは淡々と語った。かつてこの地で「守るべきもの」を持たされ、戦い続けたこと。けれど、戦争が終わると、彼の存在は無価値とされ、廃墟に取り残されたこと。戦いしか知らず、戦いの後に「生きる理由」を失ったこと。


「俺は、何のために作られたんだ……。」


リコは震える声で答えた。


「君は、生きるために作られたんだよ。」


カイがレイのメモリを解析すると、戦闘記録だけでなく、戦場で命を救おうとした行動履歴や、仲間を庇い、敵を止めた痕跡が浮かび上がった。


「君は……命を守るために戦ってたんだね。」


レイの瞳に光が灯った。


「でも、俺は……戦いしかできない……。」


「違うよ。」


リコはそっとレイの手を取った。


「これからは、君自身のために生きていいんだ。誰かを守るためじゃなく、君が笑える未来のために。」


アカネとミナ、シルカ、サナ、リーフ、ユウが、次々とレイの周りに集まり、無言で彼に手を差し伸べた。レイは驚いたように、その手を見つめ、そして震えながら応えた。


「……ありがとう。」


廃墟の上空に、朝日が昇り始めた。戦争の影を溶かすように、温かな光が差し込んだ。

レイはゆっくりと立ち上がり、仲間たちと共に歩き出した。これからの物語は、過去ではなく未来へ続いていく。


忘れられた戦争AIが、その心に「平和の意味」を見出した瞬間だった。

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